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2022/06/18

3207.


「こんにちは~」


「おや、美々香の友達かい? いらっしゃい」


「ようこそ我が家へ。前来た時は社宅だったからこのボロアパートは初めてだな純」


「あの時はいきなり早期退職コクられてビックリしたよ・・・」



3208.


「なんだ? 美々香の友達か? よく来たな」


「あ、パパりん久しぶり! 土曜日におうちにいるなんて凄いじゃん!」


「いつも土曜に仕事をしてると思わないでくれるか? 今週は日曜だ」


「一緒じゃん!!」



3209.


「で、パパりん新しい仕事どうなの? キツくなったりしてない?」


「心配するな。前と比べたら2割ぐらいは楽になった。給料は4割減ったがな」


「うーーん素直に喜べない!」


「どうせなら笑ってやってくれよ、純」



3210.


「純と言ったか・・・遊びに来てくれるのは嬉しいが、涼太の奴にはサバの令嬢がいるから無駄だぞ」


「そんなつもりで来たんじゃナイっぴよ!」


「ついでに言うとサバ令嬢にもそんなつもりはカケラもないからな」


「なに・・・なぜだ・・・?」



3211.


「いや“なぜだ”じゃないだろアイツのどこにモテる要素があるんだよ。みずきで我慢しとけよ」


「ミズりんも普通に考えれば優良物件のハズなんだけどね・・・」


「結婚して義理の妹をイビろうなんて考える奴をどう“普通に考え”ればいいんだよ」


「でもそれも元凶はミミりんだよ」



3212.


「そんなワケでくだらん夢は諦めろ親父。アイツは令嬢と結婚できないし私も石油王と結婚できない」


「甘いぞ美々香。夢というのは諦めたら終わりだ。追い続ければいつか、叶うチャンスは必ず来る」


「早期退職くらっといて何言ってんだよ」


「俺は運がなかった。だがお前たちはまだ若い」



3213.


「どうしたんだよ親父、らしくもない。いつもならそっちが“くだらん夢は諦めろ”って言う方だろ?」


「ホントだよ! いつものあの、世界ってやつを諦めてる風なパパりんはドコ行ったの!?」


「なに、人生とはいつ、チャンスが巡って来るかわからないという話だ」


「いやマジほんとどうしたんだよ親父」



3214.


「ふふ、そうだな・・・気になるなら当ててみたらどうだ。無理だとは思うが」


「この自身・・・まさか新しい会社で昇進したとか!」


「そんな生ぬるいものじゃナイよミミりん! きっとアレだよ! 会社にちょーカワイくて若くてスタイル抜群の女の人が来てイイ感じになってるんだよ!」


「なに・・・何故わかった・・・!?」



3215.


「え゛、マジなのパパりん!?」


「大丈夫か!? 騙されてないか!? 何があっても貢いだりすんなよ?」


「お前なあ・・・人を騙そうなんてやつが自分の誕生日を祝ってもらおうなんて考えると思うか? 明日は休日出勤ながらに充実しそうだ」


「明日かよ!!」



3216.


「へえ・・・アンタ、給料4割減ったってのに随分と楽しそうじゃないかい」


「母さん・・・! 待て! 待ってくれ! 今のは親父の妄想なんだ! あまりに自分の人生が報われず娘やその友達にまで同情されたから見栄を張ろうとしてるんだ!」


「パパりん! 目を覚まして! いざとなったらアタシが誕生日お祝いさせてあげるから! とびっきりのプレゼントを考えてね!」


「純テメェ人んちの家庭壊そうとしてんじゃねえ!」



3217.


「佐藤純と言ったか・・・悪いがそれはできない。既にプレゼントは買ってあり発送の手配まで済ませているからな」


「オイ!!!」


「・・・しばらく、実家に帰らせてもらおうかね」


「ママりん待って! 今日はパパりんの妄想に付き合ってあげて! 実家に帰らずこの場で怒る方向で!」



3218.


ヴ~~ッ、ヴ~~ッ。


「おっと俺のスマホか」


「そうはいかないよ」


「ママりん! その中身を見ちゃダメ・・・!!」



3219.


「隙あり!」


「ミミりん! ナイス!」


「ちっ・・・まあ美々香でもいいよ。読み上げな」


「それは中身次第だと言わせてもらおう・・・うお・・・これは・・・“満月さんへ(はあと) 明日は誕生日お祝い来てくれるなんてありがと~~(はあと) めちゃくちゃ楽しみ!(すたあ) だったけど、ごめんなさい、もう、会えないの・・・(しょぼん) 理由は、聞かないでね・・・(なみだ) プレゼント、発送したって聞いてたから業者さんに頼んで1日早くもらっちゃった(いえい) すごい! 保証書付きの宝石なんて初めてもらっちゃった!(きらりん) 一生、いっしょ~~~だいじにするね! 今まで、ほんと~にありがとう! 短い間だったけど、満月さんに会えてとっても幸せでした!(はあとうぃずらぶゆー!) いつか私のことが忘れられちゃうのは寂しいけど、もしそうなっても誰かを幸せにしてあげてね! ぜったいだよ! 満月さんならぜったいできるよ!(すたあうぃるしゃいにんぐ!) ”」



3220.


「・・・・・・・・・・・・フーーーッ」


「パパりーーーーーーーーん!! 待って!! まだだよ!! こんなのミミりんがテキトー言っただけだよ!!」


「美々香、よこしな。あたしが読む。・・・・・・。・・・・・・・・・・・・。・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


「ま、ママりん・・・? ほら、笑って? 笑おうよ、ねえ! “美々香、あんな悪い冗談はもう言うんじゃないよ”って! ねえ!!」



3221.


シュッ、ガシャーーーーン!


「パパりんのスマホーーーーーっ!!」


「いやスマホなんて安いもんだろ。どうすんだよこれ。保証書付きの宝石って、サイズによるだろうがいくらだよ」


「そんなことよりミミりん! パパりんの魂が召されたよ! 連れ戻さないと!」



3222.


「親父! 戻って来い! たった1人の女に騙されたからって何だ! お前には母さんがいる! 今日は慰めに愛情カレーを作ってくれるさ!」


「そんなもの作ると本気で思ってるのかい?」


「待て! 落ち着くんだ母さん! 今回のは全面的に親父が悪い! だから許そう!」


「今のどこに許す要素があるってんだい。しばらく実家に帰るから頭を冷やしな」



3223.


「行っちまったよ、母さん」


「えっと・・・」


「純。すまない。君に罪が無いことは百も承知なんだが、どうも純がうちに来ると、不吉なことが起こるらしい」


「うん・・・アタシももう来ない方がいいかもって思ってたところだよ・・・」



3224.


「まぁうちのことは心配するな。どうせ元から貧乏だし、母さんが実家に帰るなんてもう何回目か分からん」


「それは逆に心配なんだケド・・・」


「まぁ今月と、あと来月は雷太きゅんもか。引き続き頼むぜ、親友」


「もちろんだよ! 友達契約の間だけでも全力で満月家をサポートするよ!」



3225.


「・・・・・・。はぁ~~~っ。にしても、アタシがミミりんち行くとトンデモナイことなるってジンクスできちゃった。何なんだろコレ・・・」


ガチャリ。


「ただいま~~~」


「あら純ちゃん。おかえり~~~」



3226.


「って、え!? さつきさん!!? どったの珍しい! オトコにフられて傷を癒しにでも来たの!?」


「さらっと失礼なこと言うね純ちゃん・・・むしろ逆よ。ちょっとオトコを手玉に取って臨時収入が入ったから、久々にイトコの顔を見に来たってワケ。

いや~ほんとバカなオジサンだったな~~。あんな典型的なやり方で引っ掛かる人ホントにいるんだ? 見てよこれ、ダイヤ付きのイヤリング! 保証書まで付いてるのなんて初めて見たよ。質屋に出したら50万だったよ~~? あんな安月給の零細で働きながらどうやって準備したんだか。ま、もう私には関係ない人だけど。・・・って、純ちゃん? どうしたの? 顔色悪いよ?」


「・・・さつきさん!! お願いだから何も言わずにアタシを殴って!!」


「なんで!!?」

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