2022/02/20
2758.
「よぅみずき兄。ぼっちメシか?」
「ああ。涼太の奴は呼び出し食らったからな」
「別にうちの兄がいなくても他に誰かいるだろ」
「たまには1人で食うメシも悪くない」
2759.
「にしてもみんな慣れてきたみたいだな、学食のある生活に」
「もうオープンから1ヶ月は経つからな。何気に今まで描写されてなかったが」
「“本作品の良心”がメタ発言してんじゃねぇよ」
「おっと失敬。まぁあれだ、1月初めは何かとネタがあったから食堂オープン回ができなかったんだ」
2760.
「しかしせっかく遭遇したのにこっちは3人いるから椅子が足りんな。何で1人で2人掛けテーブルに座ってんだよ?」
「1人だからに決まってるだろうが。4人掛けなんぞ座れるか」
「座れよそこは。待ち合わせしてる風で」
「食い終わるまでにお前らが来る保証もないのにか?」
2761.
「まぁよろしいではありませんか、今から崇さんにも移動してもらえれば」
「いや面倒だから1人でいいんだが」
「何言ってんだよ? 男子1人でのぼっちメシから後輩女子3人とのハーレムに進化だぞ?」
「それが妹とその友達とか余計にみじめだろ。俺の知り合いはみずきの顔知ってる奴多いし」
2762.
「良かったなみずき、有名人らしいぜ。よりどりみどりなんだからウチの兄にご執心するこたねーだろ」
「あなたの兄は1人しかいないのに?」
「そもそも、有名人というのと異性に好意を持たれるというのは別物ではなくて?」
「サバ令嬢が大してモテてないのと一緒でな」
2763.
「わたくしの評判がいまひとつなのは誰のせいだと思ってるんですのよ・・・」
「そりゃネームバリューだろ。世界サバ・フィル・ハーモニーと言えば、“一新食品”や“匙の素”とも肩を並べる超大手。庶民風情が迂闊に近寄るにはチトきつい」
「でも全く羨望の眼差しなどは受けないのですけれど」
「それは私といるからだ。諦めろ」
2764.
「というワケでお前も来いよみずき兄。こんなところでサバ令嬢がワンワン泣き出してもいいのか?」
「泣きませんわよランチのお相手が1人減ったぐらいで。ですがみずきさんが泣き出してしまう恐れがありますから来た方がよろしいですわよ?」
「美々香のお兄さんがいないことでもう泣きそうなんだけど」
「待ってやればいいだろ。そのうどんが伸びきる頃には来るだろ」
2765.
「そういやアイツって何で呼び出し食らってんだ?」
「宿題忘れを妹のせいにしてた。ちゃんとやったけど妹に隠されて持って来れなかったとか、言い訳も苦しい限りだよな」
「まぁそれは事実なんだけどな」
「気の毒に思えてきましたわね・・・」
2766.
「でもそのお陰でみずき兄、お前はハーレムランチを味わえるという訳だ。実の妹に、ほぼギャルとも言える私、そしてご令嬢。地味にジャンルはバラバラだぜ?」
「お姉さん枠が足りない」
「これまで出て来た中で言うと・・・私の母かみずき母か遠藤だな。どうする?」
「やっぱり要らない」
2767.
「なんだよ贅沢言いやがって。しっかし年上の女が親か教師しかいないのは、いささか問題だな」
「男性もそれぞれのお父さまか教師しかおりませんけれどね」
「じゃあ捕まえに行くか、3年か大学生の奴。せっかくいま学食にいるんだから」
「この場で探すとなると必然的に3年生に限られますけれどね・・・」
2768.
「甘いなサバ令嬢。あろうことか我が校の食堂には外部の大学生が紛れ込んでるんだ」
「本当に“あろうことか”なんですけれど」
「いいじゃないか、そのお陰で私らがどっかの大学に乗り込む手間が省けるんだから」
「まぁ、おねずみさんが紛れてるともなれば放置はできませんわね」
2769.
「それで、どうやって探すの? みんな制服着てるからOBかOGでしょ?」
「そうとも限らないさ。現役生徒の兄か姉、あるいはそれらを装った不届き者が制服を直接盗むか特注するかで入手したのかも知れん」
「そんな手の込んだ真似をする人がいるんですの・・・?」
「人間を甘くみちゃあいけない。個体によっては目的のためなら盗みや侵入なんて平然とやるぜ?」
2770.
「平然とお金を借り逃げする美々香が言うと説得力があるわね」
「ンなこと言ってる場合かよ。さっさとメシ食って探しに行かないと逃げられちまうぞ」
「そういえばまだテーブルにも着いてませんでしたわね・・・」
「俺はもう食い終わったから、大学生探し? なら3人でやってくれ」
2771.
「ふぅ、私らも食い終わったぜ」
「あの、わたくし、急ぎすぎて、おなかが・・・」
「サバ令嬢がサバ食って腹痛めるとかあってもいいのか?」
「よくありませんわね。治りましたから、行きましょう」
2772.
「いた。あの2人組、絶対大学生だぞ」
「どうしてわかるの?」
「午後の講義だとかサークルの話してやがる」
「隠すつもり無さ過ぎじゃありませんこと?」
2773.
「よう。そこの大学生2人」
「何? 私?」
「ああ。突然だが、こいつの兄が“お姉さんが欲しい”と言っている。なってやってくれ」
「え・・・でも、そうするには一旦お互いの両親に離婚してもらって、それぞれの片方ずつで再婚してもらう必要があるけど?」
2774.
「そこまで厳密にする必要はない。たまに部室に遊びに来て、からかってやれば喜ぶだろう」
「というか普通に“お姉さんになる手段”を示されて困惑したのですけれど」
「気が合うわねサバ令嬢さん、私もよ」
「何ぶつぶつ言ってんだよお前ら・・・。 ああ、この2人のことなら気にしなくていいぜ、ちょっとズレてるからコイツら」
2775.
「そっかー、現役生の部室に行って見ず知らずの後輩をからかったりできるんだー。それも良いかも」
「ね。新しくできたっていう食堂もちょっと飽きてきたしね」
「もう常習犯じゃないですのこの方々・・・」
「え? ウチらなんてまだ序の口だよー。中には体操服まで準備して体育の授業に混ざる人だっているんだから」
2776.
「で? 2人のそれは自分で着てた制服なのか?」
「私はね。でもこっちは他校だったから、弟の彼女から借りたんだって。玄関先で縛られてたけど、大丈夫かな?」
「そこまでしておいて“序の口”なんですの?」
「そりゃそうだよ。猛者は戸籍ごと奪っちゃうんだから」
2777.
「と、いう訳だみずき兄よ。希望してたお姉さん枠だが、危険人物であることが判明したために断念した」
「そうか、そういうことなら止むを得ないだろう」
「というかそれ以上に色々とまずいことが判明したような気がするのですけれど」
「しょうがないわね。新しく学食を作ったのなら、OBやOGがあの手この手で潜入を図るのは想定して然るべきだったのよ。対策を講じなかった学校側が悪いわ」




