2022/02/19
2744.
「母よ!」
「なんだい」
「ジャンケンをするぞ!」
「なんでだい」
2745.
「説明しよう! 私は今、モーレツにジャンケンがしたい! 以上だ!」
「何の説明にもなってないよ」
「私たちの間にこれ以上の説明がいるのかい?」
「いるよ」
2746.
「じゃあこうしよう。ユーはミーの母なのだから、娘と遊ぶ家族サービスをする義務がある。違うかい?」
「家族サービスなら父さんに頼むんだね」
「父さんとジャンケンなんかして何が楽しいんだよ」
「それはアタシとやっても同じだろうがい」
2747.
「フッ、わかってないな母は。考えてもみたまえ、最後に私とジャンケンをしたのはいつだ? もう何年も、てか10年は経つだろ? なんなら同じクラスの名も知らない男子の方が私とジャンケンしてるぜ?」
「名前ぐらい覚えてやりなよ同じクラスなら」
「じゃあこうしよう。どうせ次もPTA代表はジャンケンで負けた奴がやることになる。その練習を私でやっては如何かな?」
「アンタのお陰で“満月さんのお母さんは・・・”ってなるから不戦勝だよアタシは」
2748.
「良かったじゃないか。不出来な娘のお陰で面倒ごとが免除されるんだから」
「娘が不出来なせいで意味もなくジャンケンさせられそうになってるけどね」
「別にいいだろンなもん5秒で終わるんだから。PTAより5倍はマシだろ?」
「500倍以上マシだね」
2749.
「んじゃ決まりだな。ジャンケンすっぞ」
「それとこれとは別だよ。何でそんなのやらなきゃいけないんだい」
「おいおい・・・最初から乗ってりゃもう終わってんだぞ。私とジャンケンしたくないがために余計にタイムロスしてるんなら本末転倒だろ?」
「別に時間なんて暇だから構やしないよ。ここでアンタの要求に応じたら腹の虫がおさまらないね」
2750.
「そうかそうか、腹の虫がおさまらないか。じゃあこうしよう。もし私に勝ったら肉まんでも買ってきてやろう」
「・・・ホントに不出来な娘をもったもんだよ」
「半分は母さんの血だがな」
「残りの半分が悪かったのさ。水と毒を半分ずつ混ぜても毒だからね」
2751.
「なおも続く膠着状態。一体、私は母さんにジャンケンを挑むことができるのか? 母さんは逃げおおせることができるか?」
「こういう時には、お約束の流れがあるみたいだね」
「さすがは私の母さん、よく知ってるじゃないか。それじゃあいざ、」
「「バケモンバトル!」」
2752.
「ゆけっ、クレセント! 今こそ修行の成果を見せてやれ!」
「にゃお~~ん!」
「久しぶりだねえ。だけど手加減しないよ! こっちも切り札を用意してあるのさ。出番だよ、父さん!」
「フッ・・・」
2753.
「親父、だと・・・!? バカな、今日は仕事のはず・・・!」
「呼ばれたら飛び出るのが企業戦士だ」
「おのれ、母さんめ。まさか親父を手懐けていたとは・・・こいつァさすがのクレセントも苦しいぞ?」
「にゃおぉ~ん・・・」
2754.
「まぁいい。クレセント! 先手を取れ! 電光石火だ!」
「にゃはっ♪ ・・・んにゃ!?」
「効いて、ない・・・!?」
「この程度か。噂が絶えないからどれほどのものかと期待していたが、思い過ごしだったようだ」
2755.
「そのままいっちまいな、父さん。金持ちの家に逃げた腑抜けには負けられないよ!」
「慌てることはないさ。じっくりと料理してやろう。 ぷふーーっ・・・」
「チッくそ、呑気にタバコなんか吸いやがって。ん? いや、あれは・・・煙幕!?」
「にゃ、にゃにゃっ!?」
2756.
「にゃっ、にゃっ、、、にゃーーーー!」
「クレセント! 己を見失うな! 相手は人間! 気を感じ取れるはずだ! 見るんじゃない、感じるんだ!」
「それができれば、良かったな」
「う゛にゃ゛・・・!!」
2757.
どさり。
「クレセントォォォォォ!! どうした! お前ともあろうものが煙幕程度で!」
「お前たちには誤算があった。企業戦士というのは、人間をやめている。気を感じ取ろうなど愚の骨頂」
「そ、んな・・・気の、いや生気のカケラもない中年オヤジが溢れ返っているというのか・・・! その数だけ、クレセントには勝てない相手がいるということだぞ・・・! なんて恐ろしい国なんだーーーーーー!!」




