魔法論
「ほらほら、この状態だとこういうのの対処はどうするの?少し難しいんじゃない?」
「これに関しては、こっち魔法の効果を真似ればその状況にも対処出来るかなと……」
「なるほどなるほど、納得出来るね。確かに、この部分は利用出来る……うんうん、ハチ君とこうして色々話合うと私にも有益に思える事も出て来るから助かるよ」
アイデアって何処に転がってるか案外分からない物だもんなぁ……ご飯を食べている時だったり、寝ようとしてベッドに横たわった瞬間、交通事故にあった瞬間だったり……自分が一番知ってるみたいな事柄だとしても、同じ物を修めている人との何気ない会話で急に違った形を思いついたり、モルガ師匠にとってそういう刺激になれてるのなら、良かった
「ふむふむ、となるとハチ君。君も魔法を作る側になるとしたら、何かしらの指針があった方が作りやすいよ。何か決めてたりするかな?」
「指針ですか……あぁそれなら僕は攻撃魔法は作らないかなぁ?」
正直ここまで攻撃魔法無しでやって来たんだし、これからも攻撃する為の魔法ではなく、攻撃のキッカケにする為の魔法だったり、相手の攻撃を失敗させてその隙を突くみたいな魔法群を作って行きたいかな
「なるほどなるほど……魔法という括りで考えると、それを削っちゃうのは勿体無いと思うのだけど?」
「確かに、魔法が強いというのはもう分かりきっている事ですし、色んな距離からの優秀な攻撃手段なのも理解しています。でも、僕は魔法使いではありません。『魔法が使える』であって、魔法で戦うは少々違います。拳が届く距離ならば、魔法を使うより拳を使った方が早いです」
近距離なら銃よりもナイフの方が強いってよく言うもんね
「えっとえっと、それで攻撃魔法を作らない?うーんなんだか噛み合ってない様な……」
「大事なのは制限された中での努力です」
「ほうほう?その部分を聞かせて?」
「仮にですけど、何でもやれる。何でも用意されている。自分は神に等しい状態だとして、そんな中で魔法を作って良いとなったら、モルガ師匠はどうしますか?」
「うんうん、それはもうすっごい魔法とか創っちゃうかも」
分かる分かる。何の制約も制限も無ければそうなるよね
「良いですね。でも、そういう状況で作る魔法って何となく似たり寄ったりというか、結構大雑把な物になってしまうんじゃないかなと思うんです。仮の話ですけど、貴方の目の前に鍵のかかった扉があります。先程の神に等しい状況ならどうその扉を開けますか?」
「まぁまぁ、扉ごと壊しちゃうのが楽かな。さっきの条件だと」
「それってモルガ師匠がさっき言ったすっごい魔法というのとかなり似ていませんか?」
「あっ」
多分、攻撃魔法という物の極限。行きつく果ては爆発か、光線や弾の放出という所に行きついて終わりだと思う。それに破壊の要素が加わるだけ
「何の縛りも無いならそれで良いと思います。でも、その前提条件を狭める事で工夫をする余地を僕は自分に作りたい。扉を破壊するのではなく、鍵を開けて進む為の魔法。鍵の部分に隙間を作って開く魔法。
壊すにしても蝶番や鍵のみを壊す魔法。扉自体を柔らかくする魔法……制限する事で突破する方法を自分で色々考えられる状態が僕にとってベストだと思うから、攻撃魔法を作らないと自分自身に制限をした方がより面白い魔法を作れるかなって」
勿論、さっき言ってた神に等しい状況でも同じ事は出来る。でも、「壊せば良いじゃん」で終わる思考状態と「どうこの扉を突破しようか」という思考状態じゃ、後者の方が面白い発想になりやすいと思う
「ふむふむ、そう言われると、確かに……」
「色んな発明って不便な事を便利にする為にとか、無理な事を出来る事に変える為に生まれて来てると思ってます。限られた状況からそれを打開する為の物を作る。それが楽しいと僕は思いますよ」
「素晴らしい」
「うおっ!?誰!?」
急になんか現れた。多分人……みたいだけど、マジでどっから出て来た?
「おやおや、これはまた……ハチ君。君の考えが響いたみたいだよ?」
「縛る事でその場に沿った解決策を練る……実に素晴らしい発想だ人間」
あ、これ相手人じゃないな
「確かに、破壊魔法が行きつく先は全てを滅する爆破か光……光線だ。だが、そんな強力な物を使わないと決める事で自身に選択肢を広げる……これは魔法を司る者としては見逃せない発想だ!」
もう、何となく相手の正体は分かってるけど、聞かない方向性で良いかな……
「別に分かりきっているのなら聞かずとも良い」
もうナチュラルに思考読んで来るじゃん……
「それで、魔法の神様?と呼べばよろしいのでしょうか?」
「それで構わんよ」
まさかの魔法に対する持論を展開していたら神様が聞きに来るとは……これも神域認定されてるからなんだろうか?そう考えると会いに行ける神?いや、逆か……会いに来る神?そうなって来るとまた色々と島を整備しなきゃいけないかなぁ……
「ホッホッホ。さてさて、もっとお主の口から魔法に対する気持ちを教えてくれ」
「聞かせろ聞かせろ~」
なんか恥ずかしいなぁ……




