夢と現実の狭間で…
タクシーを止め、乗り込んだ。
まずはコンビニ。
あそこに行けば、あの事は全て本当だったと言える。
見覚えのあるコンビニに着いた。
店長や大田さん、それに三浦さんは居るだろうか。
僕は店内へと入る。
「いらっしゃいませ~」と元気な声が聞こえた。
髪の長い茶髪の女の人が居た‥
誰だろう‥新しい人かな‥?
「あ‥あの‥ここに大田さんと三浦さんって人働いていましたよね?」
女の人は首を傾げる‥
裏から同じような茶髪の男の人が出て来た。
「あ、あのっ…じゃあ店長は?」
「え、店長は僕っすよ。貴方誰ですか?」
「…いつから店長なんですか?最近変わったんですか??」
女の人とその店長らしき人物が顔を見合わせた‥
まるでこの人、大丈夫?と言わんばかりに‥
「あの‥お客さん、僕はずっとここの店やっていますし、
大田さん?とかみ…なんとかさんとか知りませんよ。」
僕は…
店を出た…
やはり僕の夢だというのか‥
確かに僕はここで働いていた‥
振り返る。
やはり懐かしい記憶が蘇る‥
何故だ…
やっぱり解らない…
◆
トボトボと歩き、見覚えのある自販機を通り過ぎる‥
結構歩いた気がする‥
病院生活が長かったせいか、足の筋肉が衰え
足元がふらつく‥
あの事が本当ならば、僕が作ったベンチがあるはず‥
僕は、ひたすら橋を目指して歩いた‥
やっと…あの橋が見えた‥。
ベンチは何処だ…
…
やはりベンチなど何処にもなかった‥
端から端まで探したけれどどこにもなかった…
ふっとあの【場所】で立ち止まる。
ここで…確かに登紀子さんと出会った。
そして、あの時…確かに
登紀子さんに…
突き落とされたはずなのに…
僕は確かに、ここから落ちた…
だけど、落ちていく中で
「賢治さん‥」と呼ばれた気もした…
それが夢だったというのか‥
◆
僕は意を決して、橋の下に降りることにした‥
足場なんてない場所を這いながら降りて行く…
長年誰も踏み入れていない場所に苔が生え足元が滑る。
草をかき分け、やっとその場所に辿り着いた。
チョロチョロと浅い川が流れゴツゴツとした岩が飛び出ている、
その先は滝となっていた。
上を見上げる‥
遥か遠くに橋があるような気がした‥
僕はあんな所から落ちたんだ…
辺りを見渡しても、【クッション】になるものなんて
何1つなかった…
じゃあ…なぜ‥僕は助かったんだ…
ふっと足元を見た…
そこには…
見覚えのある空き缶がきっちりと並んでいた‥
錆びついたコーヒーの缶だった…
誰かが橋から捨てたのか?
いや‥違う…
これはあの特、僕が登紀子さんに毎日買ってあげてた
コーヒーだ。
僕は膝をついて辺りを掘り出した‥
なぜか、そこに何かあると感じたから…
掘り出してしばらくすると…
見覚えのある、錆びたキーホルダーと…
かつては白色だっただろう‥
日傘が土の中から出てきた…
何故か…
僕は涙が止まらなくなっていた…
「登紀子さん…」
貴方はやっぱり…
居たんですよね…ここに…
そして…
僕を助けてくれた…?
僕は日傘と鈴のキーホルダー
を抱きしめた‥
僕は…
確かに、あの日…
1歩を踏み出した。
【無】になろうと…
自ら‥この命を絶とうとしたんだ‥
ポッポッと僕の涙が零れ落ちる‥
登紀子さん…会いたい…会って貴方に
謝りたい…
会いたい…
もう一度…
----------チリン---
…鈴の音が聞こえた気がした。
振り返ると、そこには…
1匹の蛍が居た…




