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目覚め

蛍が僕の元へと飛んで来て…





僕の手の平へ止まった…




どうしてなのかは解らないが

涙がポタポタと流れ落ちた…





蛍の光が眩しい…




僕はゆっくり、ゆっくりと…目を閉じた‥。





ピッピッピッ---


一定のリズムを刻む音が聞こえた‥




僕の手がピクリと動く‥

耳が聞きなれない音を捉える‥




僕は静かに目を開いた…




深い深い眠りからやっと目覚めたかのように‥





「先生、賢治が‥!」


聞き覚えのある声‥



母さん…



母さん…



母さん…母さん…母さん…お母さん…





「…ごめんなさい‥」

僕の瞳からは一筋の涙がこぼれ落ちる。




僕は母さんに握られた手を握り返した‥




母さんは僕にすがり付き大粒の涙を流していた‥




そして1週間が経った…






コンコン---



部屋がノックされる。



「賢治、お前良かった!!本当に良かった!!」



田中だった‥



「おおぅ‥迷惑掛けたな‥」




「気にするなって。それより身体はもう大丈夫なのか?」




「もう大丈夫だって言ってた、もうすぐ退院出来る。」




「そうかそうか、良かった!」

そう言いながら、田中は僕の見舞い品のバナナを食べだした。



クスリと笑が溢れる。







「…なあ、田中…1つ聞いてもいいか‥?」




「んー?なに~?」




「…登紀子さんって居ただろ?」




「……?ん…?」




「登紀子さんだよ。」




「…え?誰それ。」




田中はさほど興味がないらしく、次の果物を漁っていた。




「…お前、ふざけてるのか?」




「ハハハ~ふざけてるのはお前だろ?賢治。」

と首を傾げた。




「おいおい‥田中‥あんな目に合ったのに覚えてないのか?

登紀子さんだよ。僕がバイトに行って、毎日30分間しか会えなくて

日傘と鈴のキーホルダーあげてさ、それから、田中、お前と一緒に

星見に行ったじゃないか」





「…はぁ?賢治やばいって‥お前やっぱ頭打っただろ‥

何言ってるの?お前、バイトも行ってないし、俺と星も見てねーよ。」




僕は何がなんだかさっぱり解らなかった…





「お前さ、きっと夢でも見てたんだろ。」



田中が笑いながらそう言った‥




夢…?


そんなはずはない‥



じゃあ僕は何故こんな目に遭ったんだ…



「だって…僕が登紀子さんを止めようとして、突き落とされて‥」



「待った、待った。記憶を塗り替えようとする気持ちは解るけど‥

お前は自殺しようとしたんだぞ‥」




「…え…?本当か?それ…」



田中はコクリと頷く。




「…いつ??いつの話しだ?それ‥」




田中がうーん‥と考える。




「たしか…大学の結果発表の後しばらく経って…

3月29日かな。」





3月29日‥?



僕は目を閉じ、考える…



あの時の事がフラッシュバックする‥




たしかに‥



あの日僕は【死にたい】って思った。


でも、あの時、登紀子さんを見つけたんだ…


登紀子さんに出会ってときめいて…





それなのに何故…?



わけが解らない…





「俺さぁ…帰り道でお前を見つけてさ‥

確か夕方の4時頃だったよ。お前、すげー思いつめた顔しててさ。

なんか危ねーな‥って思って声掛けようとしたら

お前、もう身を乗り出しててさ…

ヤメロ、ヤメロって何度も叫んだんだぜ…。

1回俺の方へ振り返ったから辞めるかと思ったら…

そのまま…飛び降りたんだ…」



「………。」



僕は言葉が出ない‥




「でも…運が良かったよ。本当に。本当なら即死なはずなのに

何かクッションでもあったみたいに、お前はかすり傷だったんだ。

頭は打っちまったみたいだけどな。」





クッション…?


僕はあの三ケ池から飛び降りたのか…

あんな所から…





確かに…


そんな気もするけど…



何故か納得出来ない…




田中は「良かったな。」と言って僕の背中を叩いた。




「それとさぁ‥お前、1人で悩むなよな。俺が居るんだし、

何でも言えよ、彼女も紹介してやるからさ!」




そう言って、田中は帰って行った…




僕は考える‥



一体どこまでが夢で、どこまでが現実なのか‥



田中の言っていたことが本当ならば、



【登紀子さん】は全て夢だったって事なのか?




こんなにリアルに覚えているのに…




【確かめよう】




…と僕は思った。



点滴を引っこ抜き、パジャマのまま病室を抜けだした。









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