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彷徨う

暗闇の中…




僕は、死んだのだろうか…



黒しかない世界で出口のないトンネルの中を歩く…



どっちの方向へ歩けばいいのか



僕には解らない。



聞こえて来るのは水が滴る音だけ‥



これが僕の望んだ事なのだろうか‥



死んだら【無】となり



新たな【光】を浴びるはずだった‥



僕は危険な賭けをしたんだ。



【無】となる事を信じて…










「18歳の男性1名、三ケ池から飛び降りた模様。

頭を強く打って意識不明の重体」


医師と看護婦が慌ただしく院内を走り回る。








ピッピッピッ…




心電図の音だけが虚しく病室に響き渡る…







僕は…



まだ暗闇の中を彷徨っていた‥



もうどの位歩いたのか…



時間はどの位経ったのだろうか…




歩いても歩いても



走っても走っても



歩いて歩いて歩いても…



走り続けても…



出口なんて1つもない…




これが僕の賭けだったのか…



そしてこの出口のないトンネルは



賭けに外れた僕への罰なのだろうか…











賢治の意識だけが戻らず1ヶ月が経った。


身体の傷はほぼ順調に回復した。



俺がちゃんと賢治を止めていればこんな事には

ならなかったはずなのに…



アイツ、受験に落ちて失敗して相当落ち込んでたもんな‥


何故あの時、助けてやることが出来なかったのだろう‥


俺はアイツのたった1人の親友だったのに‥



もう、戻って来いよ…賢治…






「…あら、田中君、いつもありがとうね‥」


賢治のお母さんが花瓶の花を替え持ってきた。



「あ、いえ…、じゃあこれで…」



「気をつけてね…」



賢治のお母さんが日に日に痩せこけやつれていく姿は

痛々しくて見ていられない…




【死んだらオシマイ。】なんて思ってる奴は相当馬鹿だ。


回りの人間をどのくらい傷つけるのか。




内面も肉体的にも悲鳴を上げているのは

賢治、お前じゃなくて

お前の【お母さん】だ…



早く気付けよ。



賢治…






僕は…




まだ…



暗闇の中にいた…



どの位歩いた…?


どの位時間が経った…?



このトンネルは一体いつまで続く‥?




僕が履いていたズボンはもうボロボロに…


靴は穴があき


服は僕の汗でボロ雑巾のようになっていた…




自分の手を見る…



老人のように皺がれて、生気などまったくない

土色をしていた…


自分の顔を触る‥


頬は痩せこけ、皺が深く深く刻み込まれていた‥




涙が出る…




僕は…なんて危険な賭けをしたんだ…




こんな事になるなら‥




僕は【死】を選ぶんじゃなかった…



足から崩れ落ち泣きじゃくる…










賢治の意識が戻らず3ヶ月が経った‥



俺も、最初のうちは賢治の元へ通い続けたけれど…



2ヶ月が過ぎた頃からもう病院へは行かなくなった…



目覚めようとしない賢治を見るのは辛いから。



ごめん…



賢治‥







深い深い暗闇の中で




僕は1人泣きじゃくる…




皺がれた手の平に僕の涙が零れ落ちる…






----------チリン‥---


 チリン--




聞き覚えのある音がする…





とてもとても懐かしい音…




音のする方を探す…




右なのか左なのか、それとも前か後ろなのか!!!



グルグルと…



回転しながら必死に探した!




----------チリン‥---


 チリン--




涙で溢れかえり僕は前が見えなくなった‥



眩い光が僕の目を照らす…




そこには1匹の蛍が飛んでいた‥

フワフワと‥




とてもとても懐かしい感じがする‥




「…登紀子さん‥」




僕は呟いた…










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