彷徨う
暗闇の中…
僕は、死んだのだろうか…
黒しかない世界で出口のないトンネルの中を歩く…
どっちの方向へ歩けばいいのか
僕には解らない。
聞こえて来るのは水が滴る音だけ‥
これが僕の望んだ事なのだろうか‥
死んだら【無】となり
新たな【光】を浴びるはずだった‥
僕は危険な賭けをしたんだ。
【無】となる事を信じて…
◆
「18歳の男性1名、三ケ池から飛び降りた模様。
頭を強く打って意識不明の重体」
医師と看護婦が慌ただしく院内を走り回る。
ピッピッピッ…
心電図の音だけが虚しく病室に響き渡る…
◆
僕は…
まだ暗闇の中を彷徨っていた‥
もうどの位歩いたのか…
時間はどの位経ったのだろうか…
歩いても歩いても
走っても走っても
歩いて歩いて歩いても…
走り続けても…
出口なんて1つもない…
これが僕の賭けだったのか…
そしてこの出口のないトンネルは
賭けに外れた僕への罰なのだろうか…
◆
賢治の意識だけが戻らず1ヶ月が経った。
身体の傷はほぼ順調に回復した。
俺がちゃんと賢治を止めていればこんな事には
ならなかったはずなのに…
アイツ、受験に落ちて失敗して相当落ち込んでたもんな‥
何故あの時、助けてやることが出来なかったのだろう‥
俺はアイツのたった1人の親友だったのに‥
もう、戻って来いよ…賢治…
「…あら、田中君、いつもありがとうね‥」
賢治のお母さんが花瓶の花を替え持ってきた。
「あ、いえ…、じゃあこれで…」
「気をつけてね…」
賢治のお母さんが日に日に痩せこけやつれていく姿は
痛々しくて見ていられない…
【死んだらオシマイ。】なんて思ってる奴は相当馬鹿だ。
回りの人間をどのくらい傷つけるのか。
内面も肉体的にも悲鳴を上げているのは
賢治、お前じゃなくて
お前の【お母さん】だ…
早く気付けよ。
賢治…
◆
僕は…
まだ…
暗闇の中にいた…
どの位歩いた…?
どの位時間が経った…?
このトンネルは一体いつまで続く‥?
僕が履いていたズボンはもうボロボロに…
靴は穴があき
服は僕の汗でボロ雑巾のようになっていた…
自分の手を見る…
老人のように皺がれて、生気などまったくない
土色をしていた…
自分の顔を触る‥
頬は痩せこけ、皺が深く深く刻み込まれていた‥
涙が出る…
僕は…なんて危険な賭けをしたんだ…
こんな事になるなら‥
僕は【死】を選ぶんじゃなかった…
足から崩れ落ち泣きじゃくる…
◆
賢治の意識が戻らず3ヶ月が経った‥
俺も、最初のうちは賢治の元へ通い続けたけれど…
2ヶ月が過ぎた頃からもう病院へは行かなくなった…
目覚めようとしない賢治を見るのは辛いから。
ごめん…
賢治‥
◆
深い深い暗闇の中で
僕は1人泣きじゃくる…
皺がれた手の平に僕の涙が零れ落ちる…
----------チリン‥---
チリン--
聞き覚えのある音がする…
とてもとても懐かしい音…
音のする方を探す…
右なのか左なのか、それとも前か後ろなのか!!!
グルグルと…
回転しながら必死に探した!
----------チリン‥---
チリン--
涙で溢れかえり僕は前が見えなくなった‥
眩い光が僕の目を照らす…
そこには1匹の蛍が飛んでいた‥
フワフワと‥
とてもとても懐かしい感じがする‥
「…登紀子さん‥」
僕は呟いた…




