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4月24日

日に日に登紀子さんがとても恋しくなる。



1年前の僕では想像もつかなかった。

典子がいたけれど。

今では典子の顔も思い出せない。


思い出そうとすると登紀子さんの顔が浮かぶんだ。




とりあえず、バイトへ向かう。


裏口から入ると見覚えのある鞄が置いてあった。


「よう!賢治」


制服を着た田中が立っていた。


最悪だ…。



「俺さ、今日からここでバイトするんだわ。よろしく先輩!」

とケツをクネクネさせて言った。



僕はとりあえず田中を無視しタイムカードを押す。



なんでコイツは僕の前に現れるんだよ…。

まあ、登紀子さんとのネタになるのは助かったが‥。


だけど田中をネタにして登紀子さんを笑わせるのは癪に障る。


田中の話をするのは辞めておこう。




「でさ、賢治、としこさんの苗字わかったわけ?俺の近所なんだろ?」



としこじゃないし…。



「わかんない。」

一言だけ返して、僕は伝票の整理を始める。



「お前、会ってもう何日になるんだよ~。あ、そうだ。

俺もとしこさんの顔みれば解るかもしれないし、お前紹介しろよー。」



その手もあったか。

確かに近所らしいし、最近引っ越してきたとしても

苗字くらいは解るかもしれないよな。



「そうだな。」



「え?まじでー。やった!賢治のとしこちゃんに会えるのか~!で今日、会う??」



「うん。でも、30分しかないし、お前は遠くから見てろ。2人の時間邪魔されたくないし。で、後で苗字がわかったら教えてくれ。」




「えー。俺を紹介してくれないのか…。苗字が解ってもお前には絶対教えない!!」




田中の言葉は無視して、僕は掃除を始めた。




15時30分。



僕達はタイムカードを押す。

何故、僕達なのか…


それはオマケの田中が付いて来るからだ。



「お前、初日くらいもう少しここに居ろよ。まだ覚える事沢山あるだろ」



「いやいやーもうないし。ここの仕事なんて1週間もあれば余裕だし。」



コイツは1週間も掛けて覚えるのか。

お気楽な奴だ。




店を出て、いつもの自販機で飲み物を買う。


「ちょ、俺のも買って。コーラ。」



「自分で買えよ。」



そういって今日はオレンジジュースを2本買った。

いつも缶コーヒーだしたまには違うのもいいかと思って。



「ちょぉ、賢治~。俺、今金欠なんだってば。」

ほら、と自慢げに財布の22円を見せびらかす。




「じゃあ今日は特別に100円だけ奢ってやる。」




田中の財布から20円を取り上げた。

「ちょぉ、俺の全財産2円ってないわー。」




2円も22円もさほど変わらないだろ…

田中にコーラを放おり投げ、登紀子さんの待つ場所へと向かう。




「うおっ、お前、振っただろ!!炭酸全部抜けちまったじゃねーか」

後ろでブツブツ言っているやつを無視しながら自転車を押した。



早く行きたいのに、コイツに合わせて歩きだなんて‥。





ようやく橋が見えて来た。



「田中、お前はここから見てろ。ここから1歩も動くなよ。」



橋から30m程離れた場所だ。



「えーここだと何話してるかも聞こえないじゃん。」




「聞かなくてよろしい。でも顔くらいは見えるだろ。苗字がわかればそれでいいんだから。」

ピシャリとそう言ってやった。



田中はつまらなさそうに「ヘイヘイ。」と返事をし、

花壇のあるところに腰掛けた。

気の抜けたコーラを飲みながら。




僕は時計を見る。




59分だ。

登紀子さんは…


まだ来ない…。



田中の方へ振り返ると田中は携帯をいじっていた。





結局…



今日、登紀子さんは現れなかった…



何か特別な用事でもあったのだろうか‥




田中はポッカリと口を開けたまま居眠りをしていた。



「おい。田中起きろ。」


軽く頭を小突くと田中は目を覚ました。



「お、おお。何もう終わったの?」



「うん。」



ふぁ~と欠伸をすると田中は、「で、何処?」


と聞いてきた。







「もう帰った。」


登紀子さんが来なかったと言ったら、

「すっぽかされたのぉ??ダセー!」とか言われるのがオチだし、

コイツには言わなかった。

どうせ寝てたし…。



「なんだよー。もう帰ったのかよ。来て損した。」




お前に奢ったコーラの方が損したわ。




「損したのはこっちだよ‥居眠りしやがって。」



田中は「ああ、そうか俺寝てたんだ…」とブツブツ言っていた。





「あっ、そうだ。賢治、今日さ晴天だし北斗七星がよく見えるんだってよ。

かなりでっかく見えるらしいぜ」




「ふーん…」




「俺と見ようぜ。積もる話しもあるだろうし」




「誰がお前なんかと。見るかっての。気色悪い。」




田中は、可愛げもなくプーッと膨れた。



もうすぐ僕の家だというのに、後ろからは田中が付いてきている。



「お前、もう帰れよ。」



「いいじゃん。たまには男同士で。」



田中は僕が閉めた玄関のドアを無理やりこじ開けて入って来た。



「お邪魔しまーすっ!あ、お母さん!お久しぶりっす。やっぱ美人ですよね~!!」




調子のいい奴だ。

晩飯食って行こうという魂胆だな。

まるわかりだ。




僕はハァと溜息を着くと部屋へ入った。





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