4月9日
不恰好だけど、僕の愛情が沢山つまったベンチが出来上がった。
これで登紀子さんと座って話も出来る。
そしたら手なんかも繋いじゃったり、肩に手を回して話したり‥
僕はニヤける顔をパチンと叩いて、時間まで待つことにした。
いつもは自転車で走っていたからそんなに距離は感じなかったけれど
さすがに、ベンチを担いで歩いていると相当遠くに感じた。
やっとあの橋が見えた。
登紀子さんも見えた。僕は笑顔になる。
「ハァハァ…こんにちは。」
「こんにちは。」
「作って来ました。これ」
僕はそう言ってベンチを置いた。
「本当に作ってきてくれたんですね。とても素敵です。」
そういった登紀子さんは嬉しそうにベンチを撫でた。
僕はポケットからマジックを出す。
背もたれに「賢治、登紀子」と相合傘を書いた。
自分で「僕は昭和かっ」、とツッコミを入れつつ
登紀子さんの嬉しそうな笑顔に満足していた。
「賢治さん、ありがとう」
僕と登紀子さんは肩を並べて話をした。
さすがにいきなり手は握れなかったけど。
やはり立ち話と違って、座って話をすると時間が経つのが早い気がした。
腕時計を見ると16時31分になっていた。
今日くらいはいいか、予備校も休みだし。
と時間は気にしない事にした。
「…でね、僕は今の予備校でも1番なんだ、先生のレベルも低いというかなんというか…」
「……」
「でも、今の先生は人間性がいいんだよ」
「……」
さっきから急に登紀子さんの口数が減った気がする。
さすがにつまらなかったか。それとも少し嫌味になってしまったか…。
なんだか登紀子さんの肩が少し震えている気がする。
「…どうしたの?」
僕はたまらず登紀子さんの顔を覗きこむ。
登紀子さんは、何かブツブツとつぶやいているようにも見えた。
「…して。……ぜ。」
「登紀子さん!!どうしたんですか!!」
僕の言葉でハッとなる。
「…賢治さん、もう行って下さい…」
「え…でも今日僕、予備校休みだしたまにはゆっく…」
「行って下さい!!!」
登紀子さんの迫力に押されて僕は立ち上がった。
親戚の人が包丁でも持って押しかけて来るのか‥?
僕は首を傾げながらも、時間を過ぎて話し込んだ自分も悪かったと思い、
「すいませんでした…じゃあまた。」と言って歩き出した。
振り返ると登紀子さんは、
俯いて何かに怯えるかのようにガタガタと震えていた。




