第8話 入寮理由、Wi-Fiの強度
「今日から寮に入れ」
「急すぎる!!」
たろーの抗議を無視し、榊先生が無言で机にiPadを置いた。
「では、お前の適性を見る」
「ハイテク!?」
たろーが画面を覗き込む。
右上のWi-Fiマーク(扇形のやつ)が、三本立っている。
榊先生「電波が三つ。よって第三寮だ」
たろー「適当すぎるだろ!!」
「そんなんで決めていいの!? 組み分け帽子とかないの!?」
榊先生「帽子はWi-Fiを拾わない」
たろー「理由が現代的!」
たろー「ていうか、いきなり寮って親になんて説明すれば……」
榊先生「処理済みだ。“息子は突然アメリカに留学した”と記憶を上書きしておいた」
たろー「設定が無茶苦茶!! 絶対警察行くって!」
⸻
第三寮。
ガチャ。
「ここがお前の部屋だ」
ベッドが二つ。
嫌な予感。
モゾ。
布団が動く。
九条「よう!!!!」
たろー「なんでおるん!?」
九条、目をキラキラさせている。
「一般人とのお泊まり会、ずっとやってみたかったんだ!」
「動機きしょいな!」
九条、UNOを取り出す。
「恋バナするんだろ?」
「せぇへん!」
その時。隣の部屋。
**ボゴォォォン!!!**
壁が吹き飛ぶ。
煙の中から、ゲーミングチェアに座ったりんが現れる。
りん「……ごめん。まおの雷カレーが限界突破して、Wi-Fiルーター死んだ」
たろー「被害デカッ!!」
九条「よし、りんもUNOやるか!」
たろー「お前は状況を見ろ!!」
⸻
夜。
消灯。
静か。
たろー、ようやく横になる。
窓の外。
白い女。
顔のない頭が、スゥ……と窓ガラスをすり抜けてくる。
たろー「うわぁぁぁ!!」
その瞬間。
バサッ!!
たろーの布団代わりにされていた**一反もめん**が飛び起き、
窓ガラスにピシャァァン!!と張り付いた。
完全に視界を遮断。
たろー「お前、カーテン機能あったの!?」
さらに。
暗闇の中で、九条が懐中電灯を自分のアゴ下から照らす。
九条「おっ、お泊まり会恒例の『怪談』か! 雰囲気出てるな!」
たろー「いや本物! 外に本物いるから!」
九条「俺からいくぞ。……これは、俺の知り合いの**『アメリカ留学生』**の話なんだが」
たろー「さっきの俺の隠蔽設定じゃねーか!!」
窓の外で、一反もめんに阻まれた白い女が、
(……うるっさ)
という感じで、スゥ……と消えていった。
たろー「怪異引いてるじゃねぇか!!」




