第12話 魔法ゲロセンでプリクラ撮ったら知らないおっさんが写ってた
地下中央街。
ネオン。湯気。うるさいゲーム音。豚骨ラーメンの匂い。
「……なんか普通に街だな」
たろーが周囲を見回す。
歩いているのは、ローブ姿の魔法使いだったり、さっきの鬼だったり、骸骨だったりする。
なのに、やっていることは「仕事帰りに地下街を歩くおっさん達」と大差なかった。
「腹減った」
りんがゲーミングチェアの上でぼそっと言う。
その瞬間。
全員、めちゃくちゃ腹が減っていることに気づいた。
「……ラーメン食べるか」
まおが奥を指さす。
【まほーメン】
赤提灯。湯気。
店に入る。カウンターだけの狭い店。
奥の厨房では——
小さいドラゴンたちが、所狭しと走り回っていた。
「ドラゴン!?」
体長五十センチくらい。
赤いエプロン。頭にはねじりタオル。
しかもめちゃくちゃ手際よく働いている。
「ギャウ!!」
ボォォォッ!!
ドラゴンが口から青い炎を吐く。寸胴鍋が一瞬で沸騰した。
「ちょっとかっけぇ……」
別のドラゴンは、小さい前足で器用に麺を湯切りしている。チャッチャッ!
まおは、完全にカウンターから身を乗り出して見入っていた。
「かわい……」
九条も目を輝かせている。
「写真いいですか!?」
ドラゴン店員がこちらを向いた。
「ギャウ」
そして、短い指でピースした。
「SNS慣れしてる!?」
券売機を見る。
【業火レッド麺】
【深海ブルースープ】
【闇ニンニク全部乗せ】
【雷属性パクチー増し】
「色と属性で決めてない?」
まおが真剣に悩む。
「スープ青にするか、エメラルドにするか……」
「そこなんだ」
九条がノリノリで千円札を入れる。
「俺、赤麺いく」
⸻
数分後。
着丼。
ドン!!
スープ、真っ青。
麺、真っ赤。
「まじかぁ!!」
見た目は完全に終わっている。
だが、湯気だけはめちゃくちゃ美味そうだった。食欲をそそる匂い。
脳が混乱する。
まおがレンゲで青いスープをすくう。
「ペンキみたい」
九条が赤い麺をすする。
ピタッ。
九条の動きが止まる。
「……うま」
「え?」
全員、恐る恐る口に運ぶ。
「なんで!?」
見た目はスプラトゥーンなのに、めちゃくちゃ美味かった。魚介豚骨の深い味がする。
厨房の奥。
一番デカい店長らしきドラゴンの影が、ドヤ顔で腕組みしていた。
⸻
「ごっそさん!」
カウンターに空の丼が積み上がる。
全員、腹いっぱい。もう動けない。
まおが椅子にだらーんと寄りかかる。
「もう無理……お腹いっぱい……」
向かいの店から、ピコピコと電子音が聞こえてきた。
**【魔法ゲロセン】**
「名前終わってるな」
たろーが即座にツッコむ。
中には、ネオン、爆音、そして謎の煙。
魔導クレーンゲーム。呪い太鼓の達人。魔法音ゲー。
全部ちょっと危なそうだった。
まおが突然立ち止まる。
「見て」
指さした先には、プリクラ機のような物。
【ひゃくれんしゃプリ】
「なんだこれ」
説明書きを読む。
【100人の念写を連続で合成する、最新の魔法プリです!】
「嫌な予感しかしない」
でも、入る。
九条がノリノリでカーテンを閉める。
『笑顔ヲ認識……』
『盛リマス』
ピカァァァァ!!
数秒後。
プリントシールが出てきた。
全員、異常に盛れていた。
目はキラキラ。肌は発光。謎のハートスタンプ。
「盛りすぎだろ!! 誰だよ!!」
しかも。
写真の右上の隅。
知らない半透明のおっさん(サラリーマン風)が、一緒にピースしていた。
沈黙。
「……誰?」
九条が腹を抱えて爆笑する。
「前の客の念写、残ってる!!」
「残るなよ!! データ消しとけよ!!」
りんが写真を拡大する。
「別カットにもいる」
「怖っ!!」
でも。
みんな、声を出して笑っていた。
⸻
気づけば。
ゲームして。
プリ撮って。
ダラダラ地下街を歩いて。
めちゃくちゃ遊んでいた。
ふと、壁にかかった古い柱時計が目に入る。
カチ。
カチ。
りんが、時間を見る。
「……10時」
全員、ピタッと止まる。
「え?」
「そんな遊んだ!?」
沈黙。
九条が、自販機で買ったジュースを飲みながら呟いた。
「……俺ら、何しに来たんだっけ?」
全員、完全に固まった。
まおが、ぽつりと言う。
「……宝探し」
「あ」




