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魔法学校の方士先生  作者: 均極道人
第九章 ライフタリン
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第一百五十話 終わり?

だが。


邪神は、不気味に笑った。


「……気づいていないのか?」


低く、囁くような声。


「金丹を成した時点で、天道からの“報い”は始まっている」


「お前のこの身体は、まもなく8級――陽神へと昇華する」


陸虚の動きが、わずかに止まる。


「その時、お前は――この世界から排斥される」


「愛する者たちを残して、な」


――ピタリ。


振り下ろされるはずの剣が、空中で静止した。


その一瞬の隙を――


邪神は逃さない。


「もらった」


黒き影が、陸虚の身体へと潜り込む。


「――っ!」


(まずい!)


陸虚の意識も、即座に内へと引き戻される。


再び始まる、主導権の奪い合い。


だが――


邪神の声は、なおも甘く、歪んで響く。


「その身体を寄越せ」


「私が代わりに飛昇してやる」


「そして――新たな肉体を、お前に用意してやろう」


「……悪い話ではないだろう?」


揺さぶるように、囁く。


やがて――


陸虚の気配が、徐々に弱まっていく。


それを見た邪神は、口元を歪めた。


「……はは、やはりな。愚か者が」


「今、この場で――喰らい尽くしてやる!」


大きく口を開き――


喰らいつく。


だが――


「……なに?」


手応えが、ない。


噛み砕いたはずの“それ”は――そこになかった。


次の瞬間。


「――ここだ」


静かな声が、背後から響く。


すでに陸虚は――


“肉体”から離脱していた。


純陽の陽神が、ゆっくりと分離する。


残された肉体は――


邪神と、融合を始めていた。


だが


それは“支配”ではない。


“罠”だった。


「な……っ、何をした!?」


邪神の声が揺らぐ。


次の瞬間――


純陽の力が、爆発する。


「――消えろ」


陽神は、本来“異質な存在”を許さない。


混ざり合った瞬間――


それは、排除へと転じる。


肉体の内に取り込まれた邪神は、


その純陽の法則によって――根源から焼き尽くされていく。


「や、やめろォォォ!!」


絶叫。


それは分身だけではない。


遠く、別位相に存在する“本体”までもが、


同時に崩壊を始めていた。


「き、貴様……正気か!?」


「自分の肉体を切り捨てれば、お前も――」


言い終える前に。


――沈黙。


遥か彼方、別の位面。


混沌に属する一柱の大能が――


音もなく、崩れ落ちた。


光を放ち、神性に満ちた“自分の肉体”を見つめながら――


陸虚は、ゆっくりと目を伏せた。


そして、自分自身が、少しずつ消えていくのを感じる。


「……」


わずかに、寂しげな影がその表情に落ちた。


――一方。


雷池が消えたことで、外にいた皆が一斉に駆け寄ろうとする。


だが、その瞬間。


「……待て」


アイスの声が、低く響いた。


「まだ近づくな」


ただならぬ気配に、全員の足が止まる。


張り詰めた空気の中――


一歩、前へ出たのはノアだった。


その顔は、涙でぐしゃぐしゃになっている。


「……旦那様の気配が……感じられません……」


震える声。


「何が……起きたんですか……?」


誰も、答えられない。


沈黙の中で――


アイスが静かに目を伏せる。


「……おそらく」


低く、重い声。


「陸虚は――邪神を完全に消すために」


「……共に消えた」


その言葉が落ちた瞬間――


「……っ、やだ……」


ノアの表情が崩れる。


「やだぁぁぁぁ!!!」


抑えていた感情が、すべて溢れ出した。


その場に崩れ落ち、声を上げて泣き出す。


――その傍らで。


誰にも見えないまま、陸虚は静かに彼女の前へと漂っていた。


消えかけた存在のまま、そっと手を伸ばす。


触れることはできないはずの、その手で――


ノアの頭を撫でるように。


「……悪いな」


小さく、呟く。


「海……連れてってやれなくて」


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