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グリム・ライト  作者: 紅零亜種
第2章 聖騎士と魔導士
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予期せぬ邂逅 前編

 ゼロとゼーラは駅に到着していた。駅は多くの人々で賑わっていたが、二人は認識誤認メガネのおかげで目立たずに機関車に乗り込むことができた。


「ここからライネスまでは約半日だね」


 ゼロは窓から見えるホームの様子を見ながら言った。駅員たちが忙しそうに働いている姿が見える。


「ゼロ、これからどうするの?」


 ゼーラは窓際の席に座りながら尋ねた。


「とりあえず、あの老人の言葉を信じてライネスで仲間を探してみようと思う。」

「そうですね。でも本当にいるのかな……」


 ゼーラは不安そうな表情を浮かべた。


「情報源が信用できるかどうかは別として、少なくとも可能性はある。それに僕たちには他に選択肢もないからね」


 機関車は徐々に速度を上げ始め、窓の外の景色が流れていく。ゼロはポケットから古びた懐中時計を取り出し、時間を確認した。


「さて、そろそろ僕も気になっていたことを聞こうと思うんだけど……」

「どうしたんですか?」


 ゼロは躊躇いながらもゼーラ後頭部に目線をやりながら話す。


「その頭の上に乗っている鳥はいつから居たんだい?」

「え?」


 ゼーラは自分の頭の上に手を伸ばし、何かが乗っていることに気づいた。ゆっくりと手を引くと、小さな緑色の鳥が手のひらに収まった。


「あら、いつの間に……」

「随分と馴染んでいるようだね」


 ゼロは微笑みながら言った。鳥はゼーラの手の上で落ち着いた様子で羽を整えている。


「この子は『ピーちゃん』って言うんです。お城にいた時によく遊びに来てくれていた子なんですけど、いつの間にか私についてきていたのですね……」


 ゼーラは優しく鳥の頭を撫でた。ピーちゃんと呼ばれた鳥は気持ちよさそうに目を細める。


「魔獣かな?」

「いえ、普通の鳥だと思います。でもなぜか私に懐いてくれて……」


 ゼロは、ピーちゃんのことを撫でようと指を伸ばすと、ピーちゃんは、急変しゼロの指を思いきり噛みついた


「痛っ!」


 ゼロは思わず手を引っ込めた。ピーちゃんはゼロを威嚇するように鳴き声を上げる。


「あらら、ごめんなさいゼロ。おかしいな、普段は大人しい子なんですけど……」

「大丈夫だよ。でも、どうして僕だけ?」


 ゼーラは不思議がりながらピーちゃんを優しく撫でた。鳥は落ち着きを取り戻し、ゼーラの肩に移動した。そして今度はゼロの方を警戒するように見つめている。


「ふふっ、君は僕が嫌いなんだね」


 ゼロは苦笑いしながら言った。ピーちゃんは小さく鳴いて応えるように見えた。


「まあいいさ。仲良くなるのはこれからだ」


 ゼロはそう言いながら窓の外に目を向けた。窓の外では機関車が平原を進んでいた。空は晴れ渡り、風が心地よい。

 その時、一人の男性が二人に話しかけてきた。


「お二人さん、すこしいいかな?」


 二人が振り返ると、そこには灰色のローブを身にまとった男性が立っていた。

 男性はフードを深々と被っているため、顔はよく見えなかった。しかしその腰には剣が下がっており、その佇まいからは何か特殊な訓練を受けた者特有の緊張感が漂っていた。


「あなたは……?」


 ゼロが警戒しながら尋ねた。


「名乗るほどの者ではないさ。ただの旅人だ」


 男性はそう言いながらも、二人をじっと見つめていた。


「何か用ですか?」


 ゼーラが不安そうに尋ねる。


「いや、特に用はない。ただ……」


 男性は意味深な笑みを浮かべながら言った。


「黒髪に白いマフラーをした男と、銀髪の少女が機関車に乗っているを見かけてね。俺の知り合いが探してた人たちに特徴が似ていたもので」


 男性は、フードを外し素顔を見せる。白く短い髪に青い瞳、そして頬には大きな傷跡があった。


「まさか……」


 ゼロの表情が険しくなる。次の瞬間、男性からの殺気を感じ取ったゼロは、咄嗟にゼーラに覆いかぶさる。


 ──刹那、稲妻のような轟音が響き渡り、二人のいた席を壁ごと消し飛ばした。

 ゼロは咄嗟にゼーラを庇いながら床に転がり落ちた。轟音と共に周囲の乗客たちが悲鳴を上げる。機関車全体が大きく揺れ、天井から埃が降り注いだ。


「ゼロ!大丈夫ですか!?」

 

 ゼーラが慌てて体を起こし、ゼロの安否を確認する。


「ああ、なんとか……」

 

 ゼロは体を起こしながら答えた。しかし、その目は既に敵を見据えていた。


「君は……」


 ゼロの視線の先には、先ほどの男性が立っていた。男性の右手には剣が握られ青白い雷が宿っており、それが壁を貫通して攻撃したのだということが分かる。

 瞬間、休む間もなく男性はゼロの懐に入り込み蹴り上げる。ゼロは守りの構えを取るが勢いを殺しきれず天井を突き抜け車両の上へと吹き飛ばされる。それを追うように男性も軽やかに飛び乗った。二人の戦いは車両の上へと移る。

 残されたゼーラは状況を理解できず、ただ呆然と立ち尽くしていた。ゼーラは一瞬躊躇したが、すぐに決意を固め、車両の扉へと走り出した。


「待っててゼロ!すぐに行くから!」


 彼女は車両の後部から外に出ようとした時、ゼーラの前に一人の老人が立ちふさがる。


「今のお主が言っても足手まといになるだけじゃよ。」

「え?どうして貴方がここに……?」


 その老人はトラキアで出会った老人であった。



 車両の上では、ゼロと男性が向かい合い、緊張感に満ちた空気が流れていた。


「久しぶりだね、キース。随分と大きくなったじゃないか」


 ゼロは冷静に言った。その声には懐かしさと同時に警戒心が混ざっていた。


「ああ、久しぶりだなゼロさん。5年ぶりか?あんたが消えてから随分と変わったよ、この国も……俺たちも」


 キースは剣を構えながら答えた。その目には複雑な感情が宿っていた。


「まさかこんな形で再会することになるとは思わなかったよ」

「俺もだ。()()()()()()()()()()であんたに会うなんてな。だがな……」


 キースは一瞬の間を置いて続けた。


「あんたが生きていたという噂は聞いていた。だからこそ、こうして会えて嬉しいよ」


 キースは再び剣を構え直す。剣身に宿る雷がより一層激しくなった。


「聖騎士団【蒼の団】団長、キース・ラスト。いざ、尋常に勝負!」


 キースは一気に距離を詰め、剣を振り下ろした。雷を纏った剣は空気を切り裂き、ゼロに迫る。

 ゼロは咄嗟に後方へ飛び退き、攻撃をかわした。しかし、キースの攻撃はそれだけでは終わらなかった。剣から放たれた雷撃が空中を走り、ゼロの逃げ道を塞ぐ。


「『雷の鉄槌』!」

「『死の接触(デス・タッチ)』」


 キースが剣から放った雷撃をゼロは、黒い霧を手に纏って相殺する。雷と黒い霧が衝突し、周囲に閃光が走る。一瞬の静寂の後、機関車全体が激しく揺れた。


「強くなったね、キース。今なら聖騎士長とも戦ってもいい線行くんじゃないか」


 ゼロは冷静に言ったが、その瞳には懐かしさと悲しみが混ざっていた。キースは剣を構え直し、息を整える。


「あんたにそう言ってもらえるのは光栄だ。じゃあ次の技も受けてくれよ!」


 雷鳴のような声と共に、キースは再びゼロに突進した。今度は単純な突きではなく、複雑な軌道を描く連続攻撃だ。剣から放たれる雷撃が次々とゼロに襲いかかる。


「『雷の舞踏』!」


 ゼロは巧みに身をかわしながらも、少しずつ追い詰められていく。車両の端まで追い詰められたゼロは、やむなく防御に専念せざるを得なかった。


「ゼロさん、あんたのその魔法……触れられれば即アウトだが、相殺されるより多い手数で攻め立てたらどうなるかな」


 キースは剣を構え直し、一瞬の隙を見せる。ゼロは、その隙を見逃さなかった。


「確かに君は強くなった。だけど、お遊びはこれまでだ」


 瞬間、ゼロから殺気が溢れ、キースへと向けられる。


「『死の威圧(デス・プレッシャー)』」


 キースは、一瞬で意識を刈り取られる。しかし、倒れる寸前に意識を取り戻し、ゼロから距離を取る。


「おや、今のを耐えられるのかい」


 ゼロは驚いた表情を見せたがその余裕な姿勢を崩してはいなかった。キースは額から汗を流しながらも、剣を構え続ける。


「あんたの『死の威圧(デス・プレッシャー)』……噂には聞いていたが、こんなにも凄まじいとはな」


 キースは息を整えながら言った。彼の目には死の恐怖よりも尊敬の色が浮かんでいた。


「やっぱ、あんた相手に出し惜しみはよくないな」


キースは剣を構え、逆の手で剣先に爪を突き立て詠唱をはじめる。


「聖剣よ、我こそが汝の真名を知る者なり。我が魂と共鳴し、汝の力を開放せよ。『神器解放・雷神トール』!」


 キースの体が青白い光に包まれ、彼の周囲に雷が渦巻き始めた。その光景は圧巻で、機関車全体が振動するほどだった。


「キース、君は……」


 ゼロは驚愕の表情を浮かべた。5年前、ゼロが知っている聖剣使いで【神器解放】を行えたのは現聖騎士長ただ一人だったからだ。キースの体から放たれる雷は、以前の彼の魔法とは比較にならないほど強力になっていた。


「ゼロさん、これが今の俺の全てだ。死んでくれるなよ!」


 キースは剣を高く掲げ、一気に振り下ろした。


「『神雷の断罪』」


空気を切り裂く轟音と共に、雷の柱がゼロに襲いかかる。ゼロは咄嗟に黒い霧を纏った右手を雷に向けた。


「『死の接触(デス・タッチ)』」


 雷と黒い霧が激突し、車両の上は光と音に包まれ、機関車は激しく揺らした。


一話じゃ戦闘終わらなかった。

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