依頼
「で、ゼーラが自分のことを話したという訳だね」
「はい」
「で、こういう状況になったと……」
サファイヤは頭を抱えた。
「えぇ、私の静止も空しく、このような状況に……、申し訳ありませんサファイア様」
ウォルグは申し訳なさそうに頭を下げた。
「はぁ……、全くお前たちは……」
サファイヤはため息をついた。
食堂ではゼーラの過去を聞いたギルドメンバー達が同乗し彼女の周りを囲んでいた。
「ぐす……、大変だったんだなお前……。私が守ってやるからな」
フェイは涙ぐみながらゼーラの頭を撫でた。
「なるほど、なかなか面白い話だ……、いい刺激を貰った……」
スザクはそう言いながら紙にペンを走らせていた。
「あらあら、可哀想に。これからは私が甘やかしてあげるわ」
マリアは優しくゼーラを抱きしめた。
「うぅ……貴方のその覚悟、しかとこのルーカスが受け取りましたぞ……!」
ルーカスは泣きながらゼーラの手を握った。
「私も頑張るのです!」
ポチは元気よく言った。
「……私も」
リオンも静かに頷いた。
「にゃはは!まぁ人生どうとでもなりますよ!」
トラマルは豪快に笑いながらゼーラの肩を叩いた。その笑顔はどこか暖かかった。
「あはは……」
ゼーラは少し困ったように笑った。
「ほら皆、あまりゼーラさんを困らしたらダメだよ~」
ミラーが注意をするだけで笑いながらその様子を酒を飲みながら眺めていた。
「みんな、相変わらず元気だね」
ゼロが食堂に入ってきた。
「ゼロさん!」
ゼーラは嬉しそうに声を上げた。
「ああ、ゼーラさん。歓迎会楽しんでる?」
ゼロは笑顔で尋ねた。
「はい!みなさんとても親切で楽しいです!」
ゼーラは笑顔で答えた。
「そうか。それはよかった」
ゼロは優しく微笑んだ。
「あ、マスター帰ってきてたんですね」
マリアがゼロの存在に気づき声を掛ける。
「ああ、5年ぶりだね」
ゼロは微笑んだ。
「マリア、この人は誰なのです?」
ポチがマリアに尋ねた。
「そういえば、ポチちゃんはマスターに会うのは初めてでしたね。この方がゼロさん。このギルドのマスターよ」
マリアが答えた。
「マスター……?」
ポチはゼロをじっと見つめた。
「そう……。あまりの方向音痴ぶりに5年間も帰ってくるのに時間のかかったマスターよ」
「いやぁ、それは言いすぎじゃないかなぁ……」
ゼロは苦笑いを浮かべた。
「にゃはは!ホントの事でしょ!」
トラマルが豪快に笑った。
「あはは……」
ゼロは頭を掻いた。
「まぁ、いいじゃないか。戻ってきてくれたんだから」
ルーカスがフォローした。
「フフ……そうだね。それに、君がいない間もこのギルドは変わらず存在していたのだから」
スザクは微笑んだ。
「そうだね。ありがとうみんな」
ゼロは感謝の言葉を述べた。
「それでマスター、サファイア様とはどのようなお話をされたのですか?」
ウォルグが尋ねた。
「ああ、それについてみんなにも話しておきたいことがあるんだ」
ゼロは真剣な表情になり、ゼーラの手を引き、皆の前に立った。
「みんな聞いてほしい。ゼーラさんの依頼についてだ」
ゼロは静かに語り始めた。
「もうすでに知っているとは思うが、ゼーラさんはこの国のお姫様、サヤ姫の命で僕たちを探しに来た。サヤ姫と王様は現在【聖騎士団】に幽閉されている。彼女はその聖騎士団を打倒するために僕たちの力が必要だと考えている。ゼーラさんの依頼はそのサヤ姫を救出することだ。だけど……、」
ゼロは一旦言葉を切った。
「だけど……?」
ゼーラは不安そうに尋ねた。
「……これは、僕が個人的に承諾した依頼だ。本来であれば5年もギルドを空けていた僕に【ギルドマスター】である権利も君たちに協力を頼むこと自体、烏滸がましいことだろう。それに相手は聖騎士団、この国の最大戦力だ。言い換えれば、このアヴァール国の全てと敵対することを意味する。だから……、」
ゼロは一瞬躊躇したような表情を見せたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「この依頼を受けるかどうかは、各自に委ねたい」
ゼロは静かに告げた。その言葉に食堂は静まり返った。
その時、一人がクスリと笑いを漏らす。それを皮切りに皆が笑い出す。
「なにそれ?笑える」
フェイが笑いながら言った。
「あらあら、そんなこと気にする必要はありませんよ」
マリアも微笑んだ。
「よく分からないけど、ポチもその依頼を受けるのです!」
ポチは元気よく言った。
「……私も」
リオンも静かに頷いた。
「にゃはははははは!つまり戦ですね!いつです?一番槍はこのトラマルにお任せください!」
トラマルが豪快に笑った。
「俺たちはずっとアンタを待っていたんだ。今から仲間外れなんて紳士的じゃないぜマスター」
ルーカスが言った。その声はいつもの優しい口調だったが、その目は真剣だった。
「フフ……私に拒否権などないさ。私はこのギルドの居候だからね」
スザクは不敵な笑みを浮かべた。
「この命はもうすでにサファイア様とマスターに捧げたもの。老兵とて役立って見せましょう」
ウォルグは微笑んだ。
「あはは、昔からマスターは厄介ごとに僕たちを巻き込まれてきたのに、今更過ぎだよー、まあ、僕は嫌いじゃないけどね」
ミラーは笑いながら言った。
「みんな……」
ゼロは少し涙ぐんだ。その光景をゼーラは少し羨ましそうに見つめていた。
「ほら、言っただろ兄上。彼らなら受け入れてくれると、そもそもこのギルドは兄上のために創ったんだからね」
サファイアが不意に、ゼロの背中を叩いた。
「───っ、ありがとう」
ゼロは涙を拭いながら言った。
「それじゃあ、改めて──、」
ゼロは真剣な表情になった。
「『グリム・ライト』ギルドマスター、ゼロ・グリムロードがここに宣言する」
その声は食堂全体に響き渡った。
「我々はゼーラの依頼を正式に受ける」
その言葉に全員が息を飲んだ。
「我々の目標はサヤ姫の救出だ。そして……」
ゼロは一瞬躊躇したような表情を見せたが、すぐに真剣な表情に戻った。
「この国を支配する【聖騎士団】と【聖堂協会】の打倒だ!」
その言葉に食堂は一瞬静まり返ったが、すぐに歓声が沸き起こった。その声はライネスの夜空に大きく響き渡った。
────これが後に、【アヴァール王都争奪戦】としてのちの世に語られる戦いの始まりであった。その戦いはアヴァール国だけでなく、世界中を巻き込んだ大きな戦いになることはこの時、誰も想像することはなかった。
そろそろ、次の章を書き始めます。応援していただけると嬉しいです。




