3.純潔
「……楓の忠告がこんなことになるとはなあ」
あれから楓や真麻とは、一切連絡をとっていない。
もうほとんど見えなくなってしまった右目に施した眼帯に触れながら思い返す。
己の人生を狂わせたこの片目と右腕を恨めしく思う。
すべては自らが招いた事故だ。ケリは自分でつける。
心を決めた蓮は、いよいよ、というふうに柵に手をかける。
目を閉じ、重心を前へと移動させていく。
――ああ。死ぬのか。
どんどん地面が近づき、意識を手放す。
今までの人生が風のように頭の中をよぎった。
もうすぐ俺は、死――
……ん? おかしいな。
落ちている感覚がないのだ。
蓮は不思議に思い、重い目を開き、ゆっくりと振り返る。
「……え?」
そこには、先程まではどこにもいなかった少女が、もう動かなくなってしまった蓮の右腕を必死に掴んでいた。
「何をしているんです! 早くこっちに!!」
その少女の声は、可憐な花のように綺麗で、思わず柵をつかみ、戻ってしまう。
間一髪、再び屋上に舞い戻り、息を荒く吐いた。
少し落ち着くと、傍らにいる少女を少し躊躇ぎみにみつめた。
この子は一体どこから現れたのだろう。
自殺目前の成人男性を助けようなどと、よくこんな華奢な体で考えたものだ。
高校生だろうか、その身にはセーラー服をまとっている。
髪は綺麗に手入れされた栗色の長いストレート。
前髪は綺麗にわけられていて、本当に今時の子というべきだろう。
まさに清純、純潔という言葉が似合うような少女だ。
蓮は息を整えると、とまどいながら彼女を見据えた。




