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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第1章 出会い
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2.転落

いつも通りの桜並木の道を歩いて、今年も満開に咲いた桜に見惚れた。


「綺麗に咲いたんだな。また3人で見に来よう」


そのまましばらく眺めていたくなったが、腕の時計を見て約束の時間が迫っていることに気付く。


「急がないと」


桜に気を取られていた俺は、本当に馬鹿だった。

走り出した先の信号が、血のように鮮やかな赤に、変わっていたのに。


大きなブレーキ音。あちこちから聞こえる悲鳴。

その瞬間、俺の視界は暗転した。


――さん、藤崎さん。

誰かの呼ぶ声で俺は目を覚ました。

気付いた時には右目がほとんど見えず、右腕に麻痺が残ってしまった。

久しぶりの再会だったはずの真麻と、先程会った楓がいたのに、よく見えなかった。

不幸中の幸いと言うべきか、それ以外は無事で、退院はすぐにできた。


「蓮、ほんとに無事でよかったよ。大丈夫だって。仕事のことは、心配すんな。俺ができる限り手伝うし。な?」


楓はずっと慰めの言葉をかけてくれ、真麻はずっとそばにいてくれた。

たかが片目の視力障害。たかが片腕の麻痺。

少し集中すれば見えるかもしれないし、片腕で仕事だってできるし、すぐに戻れる。そう思っていた。


そんな俺の甘い考えは、数週間で打ち砕かれた。

仕事の効率は大幅に低下。

俺が受け持っていた案件の売上状態も悪くなり、最初は事故に合ったから仕方がないと見逃してくれていたことも、もうこれ以上は。と告げられた。

同僚や後輩に尻拭いをさせていることにも罪悪感があった。


復帰して2か月で、俺は退職願を出した。

仕事を辞めたあとは、家にひきこもった。

親への仕送りもできず、家賃もなんとか払っていたが、食費や生活費がかさみ、厳しくなった。

そこそこ有名だった俺は、ネットで”大手企業の有能社員の転落人生”と面白おかしく取り上げられ、叩かれた。

そんな状態で1か月過ごした俺は、もう生きる価値がないと思うようになった。

そうだ、こんな意味もない毎日に終止符を打とう、と。

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