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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第3章 異変
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28.新着メール

あの日以来、俺は携帯のメールフォルダを開かなくなってしまった。

会いに行こうと思いながらも、結局行く気にはなれなかった。

そんな俺の無駄な毎日はあっという間に過ぎ、気が付けば12月になっていた。

今日もアルバイトから帰ってきて、やっと一息ついたところだ。


”新着メール1件”


ふと目を向けた俺の携帯には、そう表示されていた。

ここのところ忙しかった俺は、メールさえ開かなかったのだろう。受信履歴が数週間前になっている。


「いまさら返すようなメールじゃない気がするな……」


静寂に包まれた部屋の中で、俺はつぶやいた。

――おおかたセールスか携帯ショップだろう、と思いつつもメールフォルダを開く。


”神崎 桜”


「……え?」


俺はその差出人を見て、思わず携帯を落としそうになった。

――桜……だ。なんて久しぶりに見た名前だろうか。


あれ以来疎遠になり、俺に呆れ果てたであろう彼女は、もう二度と連絡してこないとさえ思っていたのに。

一体、どんな内容だろうと、少し期待を持って”新着メール”を開いた。


”こんばんは。元気ですか。あの日以来蓮くんに会っていなくて、なんだかぽっかり穴が空いたように感じるな。本当に自分勝手でごめんね。そんな私を許してくれるなら、もう一度会ってくれるなら、最後にどこか出掛けたいな。  桜”


一通り読み終えた俺は、いつのまにか心が躍っていた。

俺は何をしていたんだろう。早く桜に会って話がしたい――。


何度も読み返しながらそう思っていたとき、ある文が目に留まった。


――最後にどこか出掛けたいな。

最後に……?何が最後だというのだろうか。

意味深な文章に頭を抱える。


そのまま数分が経過した頃、俺は、その意味に気付いた。

――まさか。


考えるより先に体は動いていた。

すぐに携帯と貴重品をもって、玄関を飛び出した。

――このメールが来たのは数週間前。つまり、12月の初め。


今日は、12月24日。クリスマスだ。

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