28.新着メール
あの日以来、俺は携帯のメールフォルダを開かなくなってしまった。
会いに行こうと思いながらも、結局行く気にはなれなかった。
そんな俺の無駄な毎日はあっという間に過ぎ、気が付けば12月になっていた。
今日もアルバイトから帰ってきて、やっと一息ついたところだ。
”新着メール1件”
ふと目を向けた俺の携帯には、そう表示されていた。
ここのところ忙しかった俺は、メールさえ開かなかったのだろう。受信履歴が数週間前になっている。
「いまさら返すようなメールじゃない気がするな……」
静寂に包まれた部屋の中で、俺はつぶやいた。
――おおかたセールスか携帯ショップだろう、と思いつつもメールフォルダを開く。
”神崎 桜”
「……え?」
俺はその差出人を見て、思わず携帯を落としそうになった。
――桜……だ。なんて久しぶりに見た名前だろうか。
あれ以来疎遠になり、俺に呆れ果てたであろう彼女は、もう二度と連絡してこないとさえ思っていたのに。
一体、どんな内容だろうと、少し期待を持って”新着メール”を開いた。
”こんばんは。元気ですか。あの日以来蓮くんに会っていなくて、なんだかぽっかり穴が空いたように感じるな。本当に自分勝手でごめんね。そんな私を許してくれるなら、もう一度会ってくれるなら、最後にどこか出掛けたいな。 桜”
一通り読み終えた俺は、いつのまにか心が躍っていた。
俺は何をしていたんだろう。早く桜に会って話がしたい――。
何度も読み返しながらそう思っていたとき、ある文が目に留まった。
――最後にどこか出掛けたいな。
最後に……?何が最後だというのだろうか。
意味深な文章に頭を抱える。
そのまま数分が経過した頃、俺は、その意味に気付いた。
――まさか。
考えるより先に体は動いていた。
すぐに携帯と貴重品をもって、玄関を飛び出した。
――このメールが来たのは数週間前。つまり、12月の初め。
今日は、12月24日。クリスマスだ。




