27.すれ違い
「おい、桜! 開けてくれ! なあ!」
俺は衝動に駆られて、閉じたまま一向に開かない扉にすがりついていた。
一体彼女に何が起こっているというのだ。
「なにか言ってくれよ!!」
叫びにも似た俺の声は、桜に届くことなく、辺りに散り落ちるだけ。
――何があったのかもわからない。どうして避けているのかもわからない。
何も……教えてくれない。
心の中が、めちゃくちゃにかき乱されてゆく。
「な、あ……どうして……」
――カチャ。
諦めて扉から遠ざかろうとしたその時、再びそれは開いた。
俺の視線の少し下、1枚の見慣れたメモがこっそりと顔を出している。
「さ……さくら」
俺はゆっくりと、彼女が持つメモを受け取った。
そこには、今まで見たことがないような弱々しい字で、こう書かれていた。
{今日は、帰って。ごめんなさい}
――衝撃だった。
桜に拒絶されたような気分になってしまったのだ。
「……ああ、そうか。わかったよ。もういい」
自分でも驚くほどの低い声でそう告げた後、俺は自宅に向かって走り出した。
――何もできない自分が情けない。
――高校生相手に、大人げない。
――彼女にとって、俺は何なのだ。
――どうして何も言ってくれないんだ。
――もう、何も聞きたくない。
いろんな感情に支配されて、全てを投げ出したくなった。
あの悪夢のような3か月間を、思い出してしまう。
これ以上何も考えたくなくて、ひたすら走った。
「……はあっ……は、はあっ……」
久しぶりに運動というものをしたせいだろうか。
この程度で息が切れるなど……。
「情けね……」
はあ、と1度深いため息を吐き、俺は家にすべりこんだ。
荒くなった息を整えながら、部屋のベッドにダイブした。
毎日かかさず見ていたパソコンや携帯も、今日は見る気になれなかった。
――俺は馬鹿だ。
弱っている彼女を傷つけたのだ。
あんな態度を取るつもりは一切なかったはずなのに。
「……今度会ったら、ちゃんと話、しないとな……」
後悔の念に苛まれながら、俺はゆっくりと眠りについた。




