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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第3章 異変
27/29

27.すれ違い

「おい、桜! 開けてくれ! なあ!」


俺は衝動に駆られて、閉じたまま一向に開かない扉にすがりついていた。

一体彼女に何が起こっているというのだ。


「なにか言ってくれよ!!」


叫びにも似た俺の声は、桜に届くことなく、辺りに散り落ちるだけ。

――何があったのかもわからない。どうして避けているのかもわからない。

何も……教えてくれない。

心の中が、めちゃくちゃにかき乱されてゆく。


「な、あ……どうして……」


――カチャ。


諦めて扉から遠ざかろうとしたその時、再びそれは開いた。

俺の視線の少し下、1枚の見慣れたメモがこっそりと顔を出している。


「さ……さくら」


俺はゆっくりと、彼女が持つメモを受け取った。

そこには、今まで見たことがないような弱々しい字で、こう書かれていた。


{今日は、帰って。ごめんなさい}


――衝撃だった。

桜に拒絶されたような気分になってしまったのだ。


「……ああ、そうか。わかったよ。もういい」


自分でも驚くほどの低い声でそう告げた後、俺は自宅に向かって走り出した。


――何もできない自分が情けない。

――高校生相手に、大人げない。

――彼女にとって、俺は何なのだ。

――どうして何も言ってくれないんだ。

――もう、何も聞きたくない。


いろんな感情に支配されて、全てを投げ出したくなった。

あの悪夢のような3か月間を、思い出してしまう。

これ以上何も考えたくなくて、ひたすら走った。


「……はあっ……は、はあっ……」


久しぶりに運動というものをしたせいだろうか。

この程度で息が切れるなど……。


「情けね……」


はあ、と1度深いため息を吐き、俺は家にすべりこんだ。

荒くなった息を整えながら、部屋のベッドにダイブした。

毎日かかさず見ていたパソコンや携帯も、今日は見る気になれなかった。


――俺は馬鹿だ。

弱っている彼女を傷つけたのだ。

あんな態度を取るつもりは一切なかったはずなのに。


「……今度会ったら、ちゃんと話、しないとな……」


後悔の念に苛まれながら、俺はゆっくりと眠りについた。


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