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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第3章 異変
25/29

25.語られた事実

あの日から俺は、桜にこれ以上危害が及ばないよう、何度も対策を練っていた。

仕事帰りに花屋に寄る頻度も、以前より少し多くした。

あれからというもの、桜にはなんの変化もなく、あざが増えているといった様子はなかった。

――しかし、油断などできるはずがない。


彼女が話してくれない以上、自分で真相を探るしかないのだ。

桜の父親はどんな人物であったか、現在家にいるのか、詳しく知りたかった。


「神崎さんて……神崎 麻里まりさん?」


そして今、俺と皐月さんは、とある病院に来ていた。

皐月さんいわく、ここはかつて桜の母親、”神崎 麻里”が入院していた場所らしい。

なぜこんなところにいるのかというと、神崎 麻里に関わっていた人物なら、桜の父親について何か知っているのではないかと思ったからだ。

――さすがに、1度くらいは神崎 麻里の見舞いに来ているだろう、と。


「以前に入院されていた方ですね。たくさんの患者さんから好かれていた方ですから、よく覚えています。私もたくさん話をさせてもらいました」


麻里とよく話していたという、1人の看護師さんが悲しそうに言った。


「麻里さんは、その、いつ頃……」


俺は看護師さんの顔色をうかがいながら、慎重に尋ねた。

どうやら桜の母親は、ここでは言わずと知れた人気者だったらしい。


「……2年前の、11月頃。ちょうど今くらいの時期でした。末期の癌で、麻里さんの娘さんも、本当に辛かったでしょうね」


――娘。桜のことだ。

その言葉を聞いた瞬間、皐月さんが食い入るように看護師さんに詰め寄った。


「あ、あの! 私、その娘の友達なんですけど。……その子の父親は、麻里さんの死に目に会わなかったんですか!?」


「ええ」


――即答だった。

暴力をふるうような外道が、来るはずない。

俺は看護師さんの口から父親の名が出なかった時点で、そう確信した。

――やはりこの人は、神崎家の事情を知っている。


「あの方は……神崎 拓海たくみさんのことはよく知りません。けど、何度か麻里さんから聞いたことがあるんです。”あの人が桜のことを守ってくれている”って。”私がいなくなっても心配いらない”って……」


――あまりにも不憫な話に、涙が出そうになる。

そんな淡い期待を裏切られた麻里さんは、天国でどんな思いでいるのだろう。


「あの。その父親って、今はどうしているのか、ご存じないですよね?」


俺は、少しでも手がかりを得るために、彼女に聞いてみる。

すると看護師さんは、首を振って静かに答えた。


「亡くなりましたよ。去年の5月頃、事故で」

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