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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第3章 異変
24/29

24.募る不安

桜はずっと口を閉ざしたままだった。

俺の頭によぎるのは、悪いことばかり。

――まさか、この他にも……?


俺は半ば強引に桜の腕をまくった。

まだ小さいが、やはりいくつかあざができていた。


「……なんで」


彼女に一体何があったというのだ。

この状況で1番考えられる事実は、俺の中ではひとつしかない。


{なんでもない。少し、転んだだけ}


俺の腕を優しく振りほどいた桜は、そのままメモを取り、たったこれだけの内容を書いた。


「そんなはず、ないだろ。転んだだけで首元にこんなあざができるもんか。……言いにくいことなら、強要はしないけど、俺に相談してくれたら……」


己のバカさに後悔しながら、桜に必死に語り掛ける。

しかし、彼女は俺と目を合わせるどころか、下を向いたきり顔をあげようとしない。


「…………」


――およそ2か月ぶりに見る彼女は、どこか疲れているように見えた。

――今日の桜はどこか元気がない。


数分前の自分の思考をさかのぼる。

――全身に及んでいると推測される、痛々しいあざ。

……やはり、そうなのだろうか。


「……今日は疲れているみたいだし、帰ろう。送っていくよ」


何も言わない桜を見て、今日は帰した方がいいと思ったゆえの判断だった。



桜を送っている道中、俺は先程辿りついた考えで頭がいっぱいになっていた。

――桜は、実家に帰っていたと言っていた。

それが嘘でない限り、俺のくだらない推測は、皮肉にも的を射てしまう。


――実の父親による、暴力。


皐月さんの話では、桜の父親は、真摯な人ではなかったようだ。

仕事もろくにせず、家事はたまに帰ってくる桜に任せきり。

そんな社会の底辺の類に入るような男が、暴力をふるっていてもおかしくはないだろう。


――実家から帰ってきた後の疲れた顔。

――父親から受けた暴力による全身の打撲。


そんなことは考えたくはないが、それで全て辻褄が合ってしまう。


「……まさか、こんなことになるなんて」


これ以上事態が悪化しないためには、どうすべきだろうか。

何か対策を練らなければ。

ずっとそんなことを考えながら、隣を歩く桜と共にゆっくりと花屋へ帰って行った。

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