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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第3章 異変
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23/29

23.火種

俺が桜と会えたのは、あの日から2か月経った後だった。

夏も終わり、寒さが目立つようになってきた。


その日彼女が指定してきた場所は、俺がかつて紹介したあの高台だった。

いつも人が集まる場所で待ち合わせしていたが、今回はその逆だ。

かすかに疑問を抱きつつも、俺はその場のベンチに腰掛けた。


――今日、彼女を問い詰めて何かわかるだろうか。

――今まで募ってきた不安を晴らせるだろうか。


そんなことを考えていると、急に肩をポン、と優しく叩かれた。


「あ……桜、久しぶり、だな」


およそ2か月ぶりに見る彼女は、どこか疲れているように見えた。

桜は、いつもの見慣れた紙とペンを出して俺の隣に座った。


{予定合わせられなくてごめんなさい。少し前から実家に帰っていて}


「いや。……こっちこそ、急に呼び出したりしてごめん」


久しぶりの会話は、ずいぶんぎこちないものだった。

こんなことをしていては埒があかないので、さっそく本題に入ることにした。


「少し、話があるんだ。……皐月さんから聞いたんだけど、最近カレンダーを見るたびに元気がないって。何かあったのか?」


――直球すぎただろうか。

桜との間に沈黙が流れたあと、彼女はゆっくりとペンを動かした。

彼女の動きといい、表情といい、今日の桜はどこか元気がない。


{時間がないの}


桜から渡されたメモの内容は、それだけだった。


「時間? 何の……?」


{ある人と、過ごせる時間。カレンダーを見るたびに、その日が近づいていることを思い知らされるの}


――ある人。一体誰のことだろう。

”その日”とはいつのことだ。


「それ、俺に話せる?」


彼女の悲しそうな顔を見ると、強く言えなくて、あえて低く出る。

そこまで悲しむということは、”ある人”は、友人か身内かもしれない。


{私の、大事な人。その人と一生会えなくなる時間が、近づいてる}


桜は一向に、その人が誰なのか、話そうとしなかった。

それに、一生ということは、もしかすると、この世から……。

――このまま何も聞かないでいてあげることが、今の桜にとってはいいのかもしれない。


そう思いかけていた時だった。

彼女がなにげなく髪を耳にかけた瞬間、見えてしまったのだ。


「さ、桜……! なんだよそれ、首元の」


俺がそう問い詰めると、桜はしまったとばかりに手で首元を覆い隠す。

顔はどんどん青ざめていく。


「一体、何があったんだよ……!」


俺は立ち上がって、今までにないほどの焦りと不安で桜を問い詰めた。

――桜の首元にあったのは、できて間もないように思える、痛々しいあざだった。

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