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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第2章 神崎 桜
20/29

20.虚実

楓が店を出てから30分ほど経った頃。

放心状態だった俺は、ようやくその店から出ることにした。

何がなんだかわからない。

楓も真麻も、どうしてしまったのだろう。

それともやはり俺がおかしいのだろうか。


いろんなことを考えているうちに、どうしても確かめたくなってしまった。

――神崎 桜。彼女は一体何者なのだろう。

――もしかすると、俺が知らない桜の事情があるのかもしれない。


衝動に駆られたまま、俺は気付けば花屋に向かっていた。


――わけのわからないやつと関わらないでくれ。


また、楓の忠告を無視してしまうことになる。

以前の事故の経験から、あいつの言うことはなるべく聞こうと思っていたが、これだけは確かめずにはいられない。

”ごめん”、と心の中で謝りながら、”あさひな”と書かれた店の前で足を止める。

いつものように扉を開き、中に入った。


「いらっしゃいませ」


その言葉を聞いた時、聞きなれた皐月さんの明るい声でないことは、すぐにわかった。


町中でよく見るような、切りそろえられた短い髪。

俺より少し高い身長。

見た目40代後半のその人は、きっと皐月さんの父親だろう。


「こんにちは。藤崎と言います。さく……皐月さん、いますか」


桜に直接聞こうと思ったが、なんだか顔を合わせづらく、皐月さんを呼んだ。


「ああ、藤崎さん。皐月と神崎さんからよく聞いています。今、呼んできますので」


顔つきから怖そうだと思っていたが、案外優しいその人に少し驚く。

どこか皐月さんに似ている雰囲気は、やはり親子なのだと感じさせられる。


「藤崎さん! こんにちは!」


”朝比奈さん”が中に入ってから、数分待っていると、後ろからいつもの明るい声が飛んできた。

桜に会いに何度か通いつめているうちに、皐月さんとはすっかり仲良くなってしまっている。


「こんにちは、皐月さん。今、時間あるかな。聞きたい事があって」


改まって言った俺を不思議に思ったのか、皐月さんは首をかしげている。


「話……? どうしたんですか?」


――桜は、何者なんだ。

なんて、そんなド直球に聞けるわけがない。

まずは皐月が知っている桜のことを聞くのが正解だろう。

そう思った俺は、皐月さんの目を見て、ゆっくりと質問を投げかけた。


「……桜、のことなんだけど。ここに来たのはいつ頃?」


――真麻と楓の疑いを晴らすためには、”桜”という存在を証明させる必要がある。

皐月さんや朝比奈さんとの関わりを聞き出せれば、それが可能かもしれない、そう考えたのだ。


すると皐月さんは、顔を曇らせてこう言った。


「……そういえば、藤崎さんに話してなかったですね。桜の事情」

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