16.招かれた疑惑
「……聞きたいこと?」
突然の真麻の発言に驚いて、思わず彼女を見据えた。
そういえば、会ってからきちんと目を見ていなかった気がする。
――真麻は、客観的に見ても、美人の域に入るだろう。
中学でも高校でも、男女共に人気があり、その頃から輝いていた。
しばらく会わない間に、また少し大人びたように見える。
「……蓮」
真麻に名を呼ばれて、はっとする。
「どうして最近、毎日のように花屋に通っているの? あの桜並木の道、いつも通ってるよね。私、仕事の帰りによく蓮を見かけるの」
――え……?
――見られていた?
――真麻もよくそこを通っている……?
一瞬、時が止まったように、自分の体も固まった。
「は……ははっ。なんだ、見られてたのか。そういえばお前の仕事場、このあたりだったな。花屋に行ってるのもばれてるってことは、お前、何度か俺のことつけたんだろう」
冗談っぽく、笑いながら真麻につめよった。
以前までなら、”ごめーん”などと言って笑い飛ばしてくれただろうか。
しかし真麻は、くすりともせず、困ったように言った。
「……ごめんなさい。でも1度だけ。それから仕事がある日はほとんど毎日見かけたから、きっとそうだろうって」
――迂闊だった。
見られて困るわけではないが、なんだか秘密を暴かれたような気分になった。
「そうか。……花を、見に行っているだけだよ。あそこの店員さんと話が合うんだ。ただ、それだけ」
――桜に会いに、ほとんど毎日通っているなど、言えるわけがなかった。
「……本当に、それだけなの?」
真麻のその言葉を聞いて、どきりとした。
なにか、嫌な予感がする。
真麻が知っているのは、俺があの通りをよく歩いていることと、花屋に通っていることだけ。
それだけのはずなのに、全てを見透かしたような瞳でこちらを見ている真麻が、少し怖くなった。
「な……なに言って……。よくあるだろう? 店員と意気投合することなんて。常連ってだけだ」
真麻の顔から、思わず目をそらしてしまう。
これでは、はい違いますと言っているようなものだ。
「……じゃあ」
真麻は静かにうつむいて、俺に言葉を放った。
「じゃあ、1人で笑いながら歩くことも、よくあることなの?」
――いま、まおはなんていった?
――ひとりでわらいながら?
それを聞いた瞬間、俺は頭を鈍器で殴られたような感覚に陥った。




