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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第2章 神崎 桜
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16.招かれた疑惑

「……聞きたいこと?」


突然の真麻の発言に驚いて、思わず彼女を見据えた。

そういえば、会ってからきちんと目を見ていなかった気がする。


――真麻は、客観的に見ても、美人の域に入るだろう。

中学でも高校でも、男女共に人気があり、その頃から輝いていた。

しばらく会わない間に、また少し大人びたように見える。


「……蓮」


真麻に名を呼ばれて、はっとする。


「どうして最近、毎日のように花屋に通っているの? あの桜並木の道、いつも通ってるよね。私、仕事の帰りによく蓮を見かけるの」


――え……?

――見られていた?

――真麻もよくそこを通っている……?


一瞬、時が止まったように、自分の体も固まった。


「は……ははっ。なんだ、見られてたのか。そういえばお前の仕事場、このあたりだったな。花屋に行ってるのもばれてるってことは、お前、何度か俺のことつけたんだろう」


冗談っぽく、笑いながら真麻につめよった。

以前までなら、”ごめーん”などと言って笑い飛ばしてくれただろうか。

しかし真麻は、くすりともせず、困ったように言った。


「……ごめんなさい。でも1度だけ。それから仕事がある日はほとんど毎日見かけたから、きっとそうだろうって」


――迂闊だった。

見られて困るわけではないが、なんだか秘密を暴かれたような気分になった。


「そうか。……花を、見に行っているだけだよ。あそこの店員さんと話が合うんだ。ただ、それだけ」


――桜に会いに、ほとんど毎日通っているなど、言えるわけがなかった。


「……本当に、それだけなの?」


真麻のその言葉を聞いて、どきりとした。

なにか、嫌な予感がする。

真麻が知っているのは、俺があの通りをよく歩いていることと、花屋に通っていることだけ。

それだけのはずなのに、全てを見透かしたような瞳でこちらを見ている真麻が、少し怖くなった。


「な……なに言って……。よくあるだろう? 店員と意気投合することなんて。常連ってだけだ」


真麻の顔から、思わず目をそらしてしまう。

これでは、はい違いますと言っているようなものだ。


「……じゃあ」


真麻は静かにうつむいて、俺に言葉を放った。


「じゃあ、1人で笑いながら歩くことも、よくあることなの?」



――いま、まおはなんていった?

――ひとりでわらいながら?


それを聞いた瞬間、俺は頭を鈍器で殴られたような感覚に陥った。


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