15.真逆の世界
「か……楓。真麻……?」
おずおずと、俺は2人の顔を見た。
久しぶりに見る2人。なにも変わることなく元気そうだ。
「蓮、久しぶりだな。その、立ち話もなんだし、どっか入ろうぜ」
ようやく笑いが収まった様子の楓は、相変わらずの勝手なペースで、真麻と共に俺を強引にカフェに押し込んだ。
「……おいっ! 急になんだよ……」
俺が少し困り気味に言うと、楓はまあまあとばかりに、店員に注文をして席についた。
「まあ座れって。お前にずいぶん会ってなかったし、話すこともあるんだよ」
おおかた両親に俺の今の住所を聞いたのだろう。
それにしても、楓の隣に座った真麻は、一緒に来たのか。わざわざ。俺に会いに。
俺は、はあ、とため息を吐きつつ席についた。
「蓮。お前最近どうなんだ。ほら、生活とか大丈夫か。この間おばさんが心配してたぞ」
なぜお前に心配されなければいけない、という悪態をつきかけたが、母が心配していると聞いて、言わずに済んだ。
「まあまあだよ」
俺はちょっとだるそうに言ってやった。
その時、ちょうど注文したコーヒーが運ばれてきて、それを左手で受け取る。
それを見ていた楓は、少し悲しさをこめた目で俺を見た。
「……もう動かないのか。お前の手。それに、その右目の眼帯……」
「ああ、お察しの通りだよ」
俺はこれ以上このことについて聞かれたくなかったので、楓の言葉を少しさえぎって言った。
「腕は麻痺が残って動かない。右目だってもうほとんど見えていない。生活はまあまあだって言ったけど、アルバイトだけで生計を立ててる立派なフリーターだよ」
だんだん悲しくなってきた。
この2人の前では、もっと寛容な自分だったはずなのに。今では真逆だ。
そのうち自分が、2人に当たり散らす予感がするので、この話は終わりにした方がいい。
「お前はどうなんだよ、楓。真麻も仕事はうまくいってるのか」
なんとか話をそらそうとして、つい強い口調になってしまう。
これ以上悟られてはいけない。
こいつらのことだから、自殺を図りましたなんて言えば、当然俺の両親に報告するに違いない。
心配してくれているのは嬉しいが、俺としてはそれだけは避けたかった。
「あ、ああ……。なんとかな。俺も真麻もうまいことやってるよ」
楓は焦っている俺に気が付いたのか、少し声が小さくなる。
「そうか」
ぽつり、と返事をした後、3人の中に気まずい空気が流れた。
幼い頃からずっと一緒で、ここまで3人とも黙り込んだのは初めてだ。
俺はいたたまれなくなり、この輝かしい2人を見ているのが辛くなってきた。
じゃあ、と言いかけた時。
「あの」
数分間の沈黙を破ったのは、俺でもなく、楓でもない。
真麻だった。
「私、蓮に聞きたいことがあるの」




