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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第2章 神崎 桜
15/29

15.真逆の世界

「か……楓。真麻……?」


おずおずと、俺は2人の顔を見た。

久しぶりに見る2人。なにも変わることなく元気そうだ。


「蓮、久しぶりだな。その、立ち話もなんだし、どっか入ろうぜ」


ようやく笑いが収まった様子の楓は、相変わらずの勝手なペースで、真麻と共に俺を強引にカフェに押し込んだ。


「……おいっ! 急になんだよ……」


俺が少し困り気味に言うと、楓はまあまあとばかりに、店員に注文をして席についた。


「まあ座れって。お前にずいぶん会ってなかったし、話すこともあるんだよ」


おおかた両親に俺の今の住所を聞いたのだろう。

それにしても、楓の隣に座った真麻は、一緒に来たのか。わざわざ。俺に会いに。

俺は、はあ、とため息を吐きつつ席についた。


「蓮。お前最近どうなんだ。ほら、生活とか大丈夫か。この間おばさんが心配してたぞ」


なぜお前に心配されなければいけない、という悪態をつきかけたが、母が心配していると聞いて、言わずに済んだ。


「まあまあだよ」


俺はちょっとだるそうに言ってやった。

その時、ちょうど注文したコーヒーが運ばれてきて、それを左手で受け取る。

それを見ていた楓は、少し悲しさをこめた目で俺を見た。


「……もう動かないのか。お前の手。それに、その右目の眼帯……」


「ああ、お察しの通りだよ」


俺はこれ以上このことについて聞かれたくなかったので、楓の言葉を少しさえぎって言った。


「腕は麻痺が残って動かない。右目だってもうほとんど見えていない。生活はまあまあだって言ったけど、アルバイトだけで生計を立ててる立派なフリーターだよ」


だんだん悲しくなってきた。

この2人の前では、もっと寛容な自分だったはずなのに。今では真逆だ。

そのうち自分が、2人に当たり散らす予感がするので、この話は終わりにした方がいい。


「お前はどうなんだよ、楓。真麻も仕事はうまくいってるのか」


なんとか話をそらそうとして、つい強い口調になってしまう。

これ以上悟られてはいけない。

こいつらのことだから、自殺を図りましたなんて言えば、当然俺の両親に報告するに違いない。

心配してくれているのは嬉しいが、俺としてはそれだけは避けたかった。


「あ、ああ……。なんとかな。俺も真麻もうまいことやってるよ」


楓は焦っている俺に気が付いたのか、少し声が小さくなる。


「そうか」


ぽつり、と返事をした後、3人の中に気まずい空気が流れた。

幼い頃からずっと一緒で、ここまで3人とも黙り込んだのは初めてだ。

俺はいたたまれなくなり、この輝かしい2人を見ているのが辛くなってきた。

じゃあ、と言いかけた時。


「あの」


数分間の沈黙を破ったのは、俺でもなく、楓でもない。

真麻だった。


「私、蓮に聞きたいことがあるの」

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