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その日桜が舞い散りました。  作者: 咲香
第2章 神崎 桜
13/29

13.花と会話

大通りから数分歩いたところには、あまり人が来ない高台がある。

にぎわう東京の街並みから外れて、全体の景色を見渡せる場所だ。

静かで、その地の周辺は、美しい花たちで埋め尽くされている。

まるで皐月さんの店を思い出させるほどだ。


いろいろなところを案内しながら歩き回った俺と桜は、そこで休憩することにした。

近くにあったベンチに共に腰を下ろす。

その瞬間、ずっと掴んでくれていた右腕から、桜の手が離れる。

少し名残惜しいと思ってしまったことは、心の中にしまっておいた。


「……この高台からの景色、いろんなところを見渡せて、結構気に入ってるんだ。心を落ち着けるには最適だな」


そう言って、自らもここによく来ていたことを思い出す。

静寂につつまれながら全身をかけぬける風が、なによりも気持ちよかった。


{ここ、本当に落ち着く。まるで東京じゃないみたいです}


そのメモを見た俺は、桜をここに連れてきてよかった、と思った。


「花がたくさん咲いていて、ほんと、皐月さんの花屋みたいなところだよ」


{蓮くんは、花が好きなんですか}


――花。突然投げかけられた質問に、蓮は少し迷う。

嫌いというのなら、花言葉など覚えたりはしないし、好きだといえば好きなのかもしれない。


「……ああ。好き、かな」


花というものは、人の手入れや自然の力がなければ、いつしか枯れてしまう。

いくら道端で綺麗に咲き誇っていても、誰にも目をつけてもらえないものは、儚く散る。

――人間も同じだ。誰かに支えられて、ようやく生きている。

今、”桜”という存在こそが、”俺”という花の、生きながらえるすべなのかもしれない。


{私も好き。季節が変わるごとに枯れてしまうけど、また1年後には生まれ変わったように咲き誇るもの}


全て、とまではいかないが、どこか似通った考えをしていた桜に、つい笑ってしまう。


{え……、何か、おかしいかな?}


笑った俺に焦ったのか、いつもの口調も忘れて慌ててメモを書いたらしい。

そんな桜にますます笑いがこみあげてきた。

手で口を押えながら笑っていたが、ついに声が出てしまった。


「はははっ。桜が珍しく焦ってたから。思わず」


理由を聞いて安心したのか、桜も一緒に微笑んだ。


そのあとも、お互いに笑いあって、しばらく2人で話した。


気が付けば、辺りはもう日が沈みかかって、真っ赤な夕焼けが出始めていた。

時刻は午後6時を過ぎた頃だろう。

時間を忘れてこんなに笑いあうなど、久しぶりだった。

まだ一緒にいたいという気持ちはあったが、この華奢な女子高生をこれ以上連れまわすわけにはいかない。

俺はベンチからゆっくりと立って、桜に言った。


「そろそろ帰ろうか。皐月さんの店まで送るよ」

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