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追放先の辺境で前世の農業知識を思い出した悪役令嬢、奇跡の果実で大逆転。いつの間にか世界経済の中心になっていました。  作者: 緋村ルナ


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番外編1:ヴェリーナ誕生秘話

 レルナ村に来て間もない頃、私は来る日も来る日も、借りた小さな畑で土にまみれていた。

「土の粒がまだ固いですね。もう少し、腐葉土を混ぜ込みましょうか」

「あらあら、ミミズさん。こんにちは。あなたがいるなら、良い土になる証拠ですわね」

「水はやりすぎてもいけません。根が腐ってしまいますから。あなたの喉は、今、乾いていますか?」

 誰に聞かせるでもなく、私は土や植物に話しかけながら作業を続けた。村の子供たちは、遠巻きに「変な女が土と話してる」と噂していたが、気にもならなかった。

 前世の農業研究員だった頃の癖だ。実験対象には、愛情を込めて接する。そうすると、不思議と良い結果が出ることが多かった。

 しかし、ヴェリーナの種は手強かった。最高の土壌を用意し、水も温度も管理しているはずなのに、うんともすんとも言わない。失敗が続くと、さすがの私も心が折れそうになる。

 ある夜、疲れ果てて小屋に戻ると、鏡に映った自分の姿に愕然とした。頬はこけ、髪はぼさぼさ。手は傷だらけで、侯爵令嬢だった頃の面影はどこにもない。

「私……何をやっているのかしら」

 一筋の涙が、頬を伝った。

 王宮での華やかな暮らし、美しいドレス、傅いてくれる人々。それらすべてを失い、辺境の地で泥にまみれている。レオナルドや、私を嘲笑った貴族たちは、今頃暖かい部屋で美味しい食事をしているのだろう。

 悔しさがこみ上げてきた。でも、それ以上に、ここで諦めたくないという気持ちが強かった。

 このまま終わってたまるものか。

 私は涙を拭うと、再び畑へ向かった。満月が、煌々と畑を照らしている。

 私は、種を植えた場所に膝をつき、そっと土に手を当てた。

「お願い……。あなたは、私の最後の希望なの。ただの復讐じゃない。私は、自分の力で生きて、自分の価値を証明したいの」

 それは、祈りだった。誰にも聞かれることのない、私の魂の叫びだった。

「あなたは、私の第二の人生そのものなのよ」

 そう呟いた時、手のひらの下の土が、かすかに温かくなったような気がした。そして、あの種が放っていた青い光が、土の中で一瞬、強く輝いたように見えた。

 その数日後、ヴェリーナは小さな芽を出した。

 あの夜の出来事が、本当に奇跡だったのか、それとも私の思い込みだったのかはわからない。

 けれど、一つだけ確かなことがある。

 ヴェリーナは、私の諦めなかった心に応えてくれた、かけがえのない宝物なのだ。

 今でも私は、時々一人でヴェリーナ畑に行き、土に話しかける。そのたびに、あの日の夜のことを思い出すのだ。

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