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3

静まり返った部屋の中で、シンとレンは長い間、閉ざされた扉を見つめ続けていた。

けれど、どれだけ待っても鍵のかかる音は聞こえない。

再び扉が開く気配もなかった。

ただ、床に置かれたスープだけが、静かに湯気を立てている。

「……シン。本当に行っちゃったな」

「……罠だ。必ず何か裏がある」

短く言葉を交わし、二人は音を立てないよう窓辺へ向かった。

並んで外を覗き込み、街並みを観察する。

そこに広がっていたのは、見慣れたスラムとはまるで違う景色だった。

飛び降りられる高さか。

見張りはいるのか。

逃走経路は確保できるのか。

二人の視線が、同じ速さで周囲を探っていく。

「外には誰もいない」

レンが低く呟く。

「泳がせてるのかもしれないな」

「ああ。自由を与えて安心させて、油断したところで捕まえるつもりかもしれない」

シンも静かに応じる。

「大人は、いつだってそうだった」

二人は窓際の床へ腰を下ろした。

互いに背中を預け合う。

ふかふかのベッドには、最後まで近づこうとしなかった。

あまりにも心地よすぎるものは、警戒すべきものだったからだ。

「……『無理に信じなくていい』、か」

レンがぽつりと呟く。

「言葉なら、いくらでも取り繕える」

「俺たちを売る気か、危険な仕事に使う気か……どっちにしても、あの優しさは餌だ」

シンの声は冷たかった。

そう思っていなければ、あの穏やかな笑顔に心を揺らがされそうになる。

それが何より恐ろしい。

レンは部屋の中央に置かれたスープへ目を向ける。

「服を着替えさせて、温かい食事まで用意する……手が込みすぎてる」

「絶対に口にするな」

「ああ。飼い慣らされたら終わりだ」

二人にとって、世界は最初から敵だった。

信じられるのは、自分たちだけ。

だから、与えられる優しさには必ず理由がある。

そう考えるのが、生き延びるための常識だった。

「まずは、この部屋を調べる」

レンが言う。

「拘束具や監視の仕掛けがないか確認するんだ」

「そのあと、逃げ道を探す」

シンも頷く。

「もし、あの男が邪魔をするなら――」

そこで言葉を切る。

レンが静かに視線を向けた。

「……やるしかないな」

「いつも通りだ」

短い会話だった。

けれど、それだけで十分だった。

長い年月を共に生きてきた二人に、余計な説明はいらない。

互いの体温だけを確かめながら、双子は静かに次の一手を考え始める。

ここがどれほど綺麗な場所であろうと関係ない。

世界が敵であることに、変わりはないのだから。

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