4 クロウ視点
それから三日目の昼のことだった。
アジトの厨房で、僕が二人のための料理を盛り付けていると、後ろから聞き慣れたため息が飛んできた。
「おい、ボス。またあのガキどものために厨房立ってんのか」
アベルだ。
腕を組み、呆れた顔でこちらを見ている。
「あんたがそうやって甘やかすから、あいつら部屋から出てこねぇんだよ」
「いいじゃん。いっぱい食べて元気になってほしいんだもん」
僕は笑いながら皿を並べる。
「ほら、アベルも手伝ってよぉ」
「手伝うかよ」
即答だった。
……と思った次の瞬間。
「おい、そのお盆貸せ」
「え?」
完成した料理の乗ったお盆を、アベルがひょいと持ち上げる。
「あ、ちょっと、何するのぉ」
「いつまでもボスが行くから警戒解かねぇんだろ」
アベルは肩をすくめた。
「文句があるなら、直接ボスの部屋まで来いって、ケツ叩いてやるよ」
ぶつぶつ言いながら、そのまま厨房を出ていく。
「あはは……」
僕は思わず笑ってしまう。
本当に不器用で、お節介で。
でも、誰より面倒見がいい。
最高の相棒だ。
***
それから四日目。
あの子たちは、ただ部屋の隅で震えていたわけじゃなかった。
僕やアベルの立ち振る舞い。
仲間たちの会話。
廊下を歩く足音。
ほんの些細な情報を拾い集めて、自分たちなりに状況を整理していたみたいだ。
本当に頭がいい。
だから――。
バタン!
執務室の扉が勢いよく開いた瞬間、僕は驚くより先に、嬉しくなってしまった。
(あ、来てくれた)
ずっと待ってたんだ。
自分たちの足で、ここまで来てくれるのを。
「お前、何のつもりだ!!」
鋭い怒鳴り声。
デスクの前には、二人が並んで立っていた。
どちらかが前へ出るわけじゃない。
同じ距離で。
同じ熱量で。
まっすぐ僕を睨みつけている。
数日前まで泥の中で倒れていた子供たちが、もうこんな顔をできるようになった。
そのことが、たまらなく嬉しかった。




