9 テルマイルの焦燥
――王子と2人の取り巻きを「少し制服を緩めますので」と言って追い返す。
保険医も入学式に参列しているのでしょう、独りで部屋にあったポットで紅茶を入れ窓際に腰を下ろす。
アレク君の足を踏んだら王子から彼が決闘を申し込まれるなんて正直驚いたわ。
少し茶目っ気を出して彼の足を踏み抜いたのは、決闘を回避させた事でチャラになったかしら?
……私のアレク君が他の女生徒にキャーキャー言われているのは見てて腹が立つじゃない。
彼は私だけの……でもそうね、わかっていたわ。彼ってカッコイイからこうなる事は多少分かっていたわ。
そして壇上に上がり凛々しく挨拶をするアレク君を思い出す。
どうやったら彼と結婚出来るのでしょう……でもそうね、先ずは彼に女性を近づけない事が大切ね。
どうしたって彼はモテテしまうもの。
なら私は私の持てる限りその力(権力)を以って事に当たりましょう。えぇ、それが一番よテルマイル!
すると保健室へ近づく足音が聞こえる。
入学式ももう終わったのね。
彼なら一番に私を気に掛ける。それが演技の体調不良だとしても……だからこの足音は。
もうじき私を迎えに入室してくる彼を思うと、顔が熱くなる。
入学式なんてイベントだもの、これからは心機一転して普通に接してみても……。
「おまたせテルル!ほら例の聖魔法使いと友達になったんだ!」
本当の私に戻らなければ――でも顔が熱っぽいので振り向けないわ。
アレク君の声が尊い過ぎて……過ぎて……だめ!やっぱりテレるっ!!
「テ、テルル、様、だろ?本当にお前はいつもいつも……い、いいけどよ。で?どんな奴だったんだ?どうせ聖魔法とか攻撃性の無い魔法のもやしっ子だっただろ。お前とお似合いじゃねぇか。どんな奴か今度会わせろよ」
はぁ~ダメだった。彼の前ではどうしてもテレ隠しで変なキャラクターが降りて来るの……でもこうでもしないと彼の顔を見れないのっ!
はぁ~、溜息ばかりはダメね。
でもアレク君に男の友達なんて初めてじゃないかしら。いつも騎士団の方達と木剣を振り回してるけど、あれは友達ではないものね。でもそのせいで生傷の絶えない彼に癒しの魔法が使える友達が出来るのは喜ばしい事だわ。
「そう言うと思ったよ!だから連れて来た」
「は?」
なんて行動力なのアレク君!その友達に今の私の彼に対する会話とか態度見られていないわよね!?
――あ、少し離れた所に居たのね?じゃ、大丈夫ね。
ならいいわ、彼の初めての男友達だもの。私がちゃんと査定してあげる。
「ほら、こちらがハルさん。テルル。挨拶挨拶」
急かされずとも挨拶くらいしますわ。
「私はテルマイル・ハイネケ――」「特待生のハルと申しま――」
顔を伏せていたいたので彼女の声を聴くまで考えもしなかった。
――聖魔法の使い手が女性だなんて!聞いてない!!




