24 デモ園の王子
――丁度その頃。男子寮、王子の私室前。
影の薄い女生徒が堂々と廊下を進む。
その光景に驚く男子生徒も居れば奇異の目で見る者も居るが、胸に付けられたブローチを見て興味が無くなったかの様に視線を外していく。
女生徒は学園で見る事の無い兵士が立つ部屋の前で足を止める。
「止まれ、ナニようか」
兵士は手に持った槍を斜めに彼女の前へ突き出す。
「正式な申請にて参りましたが、貴方にはこれが見えませんか?」
二対の剣に蛇が絡み付くそのブローチを見た兵士は、槍を納めドアをノックする。
――コンコン「王子、お約束の生徒が参りました」
「通せ」
「はっ」
兵士は静かにドアを開ける。
開け放たれた部屋は、とても寮内だとは思えない豪華な造りであり。ソファーとテーブルしか見当たらない所を見ると、応接専用の部屋なのだろう。
そしてソファーでは王子が足を組み、何やらドロッとしたドリンクを飲んでいる。
「あぁ君も飲むかい?ミックスジュース」
どうやらミックスジュースだった様だ。
正直甘未に飢えていた女生徒は頷く。
王子がテーブルに置かれたベルを鳴らすと、入り口とは別の扉から侍女が現れた。
「これと同じ物を彼女へ」
侍女はお辞儀をしてその場を去る。
非常に教育が行き届いたメイドだと、その所作でわかる。
「泣きついて来るのが案外早かったね」
――ッ
王子から放たれたその言葉に怒りが込み上げるが、彼女も言い返す。
「でもそれは貴方が入学式で余計な事をしたから」
「あぁ、まぁアレは仕方ないよね。だって僕の物に変な虫が知らない間に付いてたものだからさ」
「よく言う」
「あははは!怒った顔もいいねぇ。それよりも聞いてくれたかい?」
「ええ、聞いた」
「どう思った?」
「テルマイル嬢の騎士を排除するには問題ないと思う」
「そうだろ!これでテルマイル嬢は僕の物になり、テルマイルと何故か仲良くなっている特待生も僕の物。こんな簡単でいいの?って感じだけど、既にシナリオは入学式で崩壊させてるんだし僕が神だと言ってもいいよね!」
「そう……でも私は計画通りするから後は上手くやって」
「なんだい。よかったら君も僕のハーレムに加わってくれてもいいんだよ?」
「無理。私ザクス推し」
「中身は僕達と同じ現代人だよ?それでも?」
「貴方こそ何を言ってるの?中身はどうあれザクス様はザクス様。顔の問題」
「……あぁ、そうだね。ウンわかった。卒業後はザクスは君の元へ送るから」
「ええそれで良いわ、私がここへ来たのもその確認。それと――」
「あぁ戦争の事だろ?大丈夫さ。既に技術開発を進めてるからね、あと3年もあれば戦車が数千両完成予定だよ」
「数千って……世界征服でもするつもり?」
「そりゃするでしょ、神だもん僕。でも大変だったんだよ?国中の天才やアイテムを集めるの」
「……そう。私は世界を壊さない様に取り敢えず特待生に近づく」
「まぁそうだね。あ、君もちゃんと今日の決闘は見とくんだよ?現代人だから死体を見るのが嫌だとか他の3人みたいな事は考えない方がいい。でないと、君もいつか死んじゃうよ?」
「……」
「まさか君も人が死ぬのを見るのが嫌な口かい?」
「……」
「まぁいいや。取り敢えずミックスジュースでも飲んで行ってよ」
「もういらない。お願いはしたから――」
彼女はそれだけ言って退室したのだった。
――ローナンが部屋から立ち去り、王子は窓から彼女の後姿を目で追う。
「あれも馬鹿な女だ。いつまでこの世界が君達の思う乙女ゲームだと勘違いしてるんだか……。王子は僕で世界の女性が僕を求める世界なんだよ?――君も僕の物だって事がさ、わかってないんだよねぇ」




