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22 豪商の娘

――私の名前はローナン。


 テレスティア王国男爵家の長女として産まれた、豪商の娘。

 私が前世の記憶を思い出したのは、7歳の王子の婚約の日だ。


 壇上に座る王子と公爵令嬢が本当に可愛かったのを覚えている。


 でもそれと同時に、将来この国は隣国によって凄惨な未来を迎える事も思い出し。トイレに駆け込み嘔吐したのも憶えている。


 そう、この国は滅ぼされてから始まる最悪の乙女ゲーム「デモ園」の世界なのだ――。



 話を聞く限りデリファンとザクス興味本位程度でしかデモ園をプレイしておらず、その本当の恐ろしさを知らないのだろう。


 アリスは結構プレイしていた様だけども、戦争を回避すればこの世界は平和に進むと信じている。

 勿論私もその意見には同意。


 でも現世で子供部屋姉さんと呼び声も高かった私は、現世で世界一あのデモ園をプレイした人類だと自負している。


 三人は知らないだろうけど、確かにヒロインと悪役令嬢の仲が険悪にならなず、世界が平和に進んでいく未来はある。


 でもそれは所詮プロローグであり、本編が始まってない事に気付いてないだけ。



――ヒロインと悪役令嬢の仲が良い場合→本編が始まるのは王子とヒロインの不倫が発覚した10年後。


 そこから世界は滅びだす。

 この国だけじゃない。世界が滅びだすの。


 そして滅んだ世界から本編が始まる。まさにクソOFクソ、滅んだ世界で出来るのはサバイバル生活だけ。

 そのゲームの何処に乙女ゲーム要素があるのか制作陣の心を疑った。


 盗賊や強盗にに言い寄られるパターンくらいはまだマシ。

 中にはゾンビに言い寄られるような歪んだ世界もある。


 狂っているとしか思えない、狂気の制作陣。


 救いがあっるとすれば登場する推しと共に、世界の果てに到着出来る事くらい。


 でもそこは楽園でもなんでもない、希望もなくただ生きていたというだけの生存END。


 ダブル不倫のパターンは酷かった。最後は不倫相手から噛まれた王子が、ゾンビとなってヒロインが食われてバッドエンド。


 そこはふんわりイケメン達に囲まれて幸せに暮らしましたとさ。のストーリーがあってもいいじゃない!

 なんでファンタジーな世界なのに恋愛関係だけは大人のリアリティ優先するの!馬鹿なの?いえ、疑ったら駄目ね。あの制作陣は馬鹿なのよ。


 私は首を振る。


 他の乙女ゲームへ転生したならやりようはあったのに……この世界には絶望しかないわ。


 それでも今動かないと、もっと苦しいスタートになる可能性があるかもしれない。それは嫌だ。

 死ぬならせめて推しの元で死にたい。


 私は多くを求めない。なぜなら中身は大人だから。


――私はローナンになり切る為、前髪を目元に降ろす。


「……ヒロインに近づかないと話も進まない。私は出来る女」


 呟き、食堂へ足を運ぶ。


 食堂へ到着するとなにやら騒がしい。



「もう一度おききしますわ、どう言うおつもりか聞いてますの。言葉は通じてます?」



 アリスがヒロインへ詰め寄っている。

 そうか、彼女は彼女なりにこの物語を進めようと必死なのだ。


 このシーンには覚えがある。


 ヒロインを最初にイジメだすのは赤毛ソバカスの伯爵令嬢。そう、悪役令嬢取り巻きその①のアリス、貴女だったわね。


 なら私の役目はヒロインを助け、彼女と仲良くなる事ね!

 こんな世界でも私も前に進むわ。そう仲間が居るなら世界も変えれるかもしれない。


 それにこの世界にはリアルゼクス様も居るもの。あぁ私の一推しゼクス。

 貴方の為に私はやるわ!


 誓いを胸に踏み出す。


 だが様子がおかしい。


 おかしいと言うか……逆だ!!


 思わず足が止まる。

 私が仲裁に入る隙もなく、悪役公爵令嬢が自分の手袋をアリスに投げ付けたのだ。


 駄目!


 アリスも気が動転しているのか、オロオロとその手袋を拾おうとしている。


「アリス駄目だ!!」


 彼女を止めようと、キャラにはない大声で叫んだが――無理だった。

 私は歯を食いしばりその場で立ち竦む。


アリスと公爵令嬢が決闘?いったいどうなればこうなるのよす!……頼りたくは無かったけど仕方ないわ。

 放課後まで時間は限られている。


 私はとある人物の顔を思い浮かべ、王子と三人と別れたその足でその人物を探しに出た。





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