18 食後の一悶着
――パシッ。
テルルの扇子が私の右手を強打する。
「(馬鹿じゃないの!あんたがグラッセ好きなの知ってるけど何を投げつけようとしてるのよ!)」
小声でしたが久しぶりに口調が強いだけで、暴言じゃ無い事に少し驚きました。
纏めて片づけゲフゲフ、纏めて解決出来ればと思ったのですが、流石に性急でしたね。
グラッセ踏み潰し王子との決闘は次の機会にしておきましょう。
「どうしたんだい?てか誰かと思えば昨日の無礼な生徒か。何故テルマイル嬢と食事を共にしてる」
「彼は当家が指名した私の騎士ですわ」
「ほう、この程度の者を公爵家が認めていると。おいお前、騎士のなんたるかをこの学園で深く学ぶ事だ。昨日の事は一度目を瞑る。二度は無いと思え」
もう一度手袋を取り出そうとしましたが、テルルが今にもキレそうです。
たかが幼馴染の私に怒ってくれるんですね。それだけで嬉しいです。
……そうですね、頭を下げるのは無料です。
この程度でよければいくらでも下げさせて貰いますよ。
「広いお心に感謝いたします、王子」
「彼女は私の婚約者でもある、以降わきまえてテルマイル嬢とも接する様に。まぁ直ぐに此方から代わりの騎士を派遣させてもらう。君の役目はそれまでと思いたまえ」
――ブチッ
隣で何かが切れる音がしましたが、なんの音でしょうか。
「ところでテルマイル嬢。今日の放課後に美味しいスウィーツが届けられる予定なんだが、一緒にいかがだろうか」
王子の表情が険しい物から一転、満面の笑みでテルルを誘っています。
しかし誘われたテルルは目の前のデリファン君とアリス嬢に視線を戻し。
「申し訳ありませんが王子。今日の放課後はそこのお二人とお約束がありますので無理ですわ」
「なっ!」
王子は驚き二人を見つめた後、何かに納得したのか表情を戻すと。
「……そうですか、こちらも急なお誘いでしたし仕方がありませんね。でしたら次回は前もってお伝えさせてもらいますよ」
「ええ、その時は別の用事が入っているかもしれませんがお誘い頂く分にはいくらでも」
「おぉ~何度もお誘いしてよいと!勿論何度でもお誘いいたしましょう、では後ほど教室で!あとデリファン、明日から私も食事を共にするぞ。――皆の者、騒がせたな」
王子はデリファン君を人睨みすると、片手を軽く上げ食堂を去って行く。が、彼と共に来ていた茶髪長髪の白制服は驚愕の表情でその場で固まっていた。
まぁこっちが普通のリアクションでしょう。
王子が去ったあと、もう一人の白服が残っていますが、どうしたのでしょう?
「デリファン。何故お前が公爵令嬢と?」
「あ、いやこれはだな」
言い淀むデリファン君をテルルが片手で制止。
「宰相子息のザクスさん、ですわね。何を勘違いしているか分かりませんが、そこの令嬢と私が放課後に決闘をいたしますの。それだけの事ですわ」
「な”っ!冗談、だろ!な、なんでそんな事に……」
「冗談で決闘はしませんわ?」
テルルの鋭い視線がザクス君に突き刺さってます。
「ッ!デリファン!兎に角こっちに来い!お、お前もだ!」
「お、おう。い、いや、まだ食事が」
「どうでもいい!行くぞ!」
「私もなの!」
――――ドタドタドタドタ!
アリスさんデリファン君、ザクス君が食事もそこそこに立ち去って行きました。
だれが食器を片付けるんですか?まったく騒がしい人達です。
「あ、テルル様、そのグラッセ頂いても?」
「いやよ」
見れば目の前の更にグラッセが手付かずで……
「やめなさい」
「……はい」
――――
――
食堂を後にした三人は王子の元へは向かわず、校舎の外へと向かっていた。
非常階段の下に到着するや。
「最初は正直驚いたがよくやったなデリファン、アリスも。気になる奴は先に潰しておく。腕っぷしの強いお前じゃ無いと思いつかない凄い作戦だよ」
「お、おう」
「え?」
「公爵令嬢の騎士はやはり怪しいからな。でも正直びっくりしたよ、もしかして君とテルマイル嬢が決闘するものかとヒヤヒヤしたけど、彼女も君と騎士の決闘だと言っていたしな。いやぁほんと腕っぷしのある奴はする事がエグイね」
「お、おぅ」
茶色長髪のザクスが髪をかき上げたその時、彼の後ろから黒髪の少女がヌッと現れ。
「違う。決闘はアリスとテルマイルだけど、王子の幼馴染のデリファンがテルマイル公爵令嬢側と決闘する事自体が問題」
「……確かにローナンの言う通りだが、あの眼鏡の騎士を潰す事が優先だと考えたんだろ?」
「お?お、おん」
デリファンはザクスに視線を合わせない事を選んだ。
ストックが50話くらいまであるのですが他作品も力を入れたいので、明日からは朝夜2話もしくは夜1話づつになりますm(__)m




