17 学食は皆で食べよう
なんと緊迫感のある食卓でしょう。
テルルは私が持って来た食事に一切手を付けていません。
ハルさんに至っては先程からずっと並べられた食事を前に。
「何が起こったの?何をすれば正解?王子様が平民を助けるとかないの?あ、そもそも私がこの騎士君に公爵令嬢を紹介されたところからおかしくなった?いやその前?イジメられ損?いえ、イジメられるのはデフォだから間違いじゃない?でも違う気がするのはなに!?」
等と、全く聞き取れませんが意味不明な事をブツブツ呟いています。
食器を叩き落とされたのが相当ショックだったのでしょう。
そりゃそうですよね、さぁ食べよう!って時に叩き落されたら気も触れますよ。私もおかしくなる自信あります。
そして相対する赤髪の生徒も何故かハルさんと同じ様相を呈しており。
「違った?いえ正解のはず。悪役公爵令嬢でしょ?私に同調して正解のはずなのになんで?なんで正義の味方?悪役令嬢はそうじゃないでしょ!?しかもなんで決闘を申し込まれた次の瞬間に一緒に食事?食べれるはずないわよね!?え、これは食べるのが正解なの?どっち?罠なの!?いったい誰の罠?」
ふむ。こちらも公爵の息女に睨まれて気が動転しているのでしょうか。聞き取れませんが相当独り言が多いですね。
しかし問題は目の前の彼でしょうか。
確か名前は確かデリファン君だったでしょうか。昨日王子が連れていた一人で同じクラスだった筈です。
視線だけを動かし辺りを見れば、ザクスと呼ばれてた紺色の髪の長い生徒と王子が居ません。
不幸中の幸いです。
更にややこしそうな人が増えると食事を摂るどころじゃなくなっていたかもしれません。
しかしデリファン君、私を睨み過ぎて目が真っ赤ですよ?
なんにせよ食べないのは良くないです。
「皆さん食べないんですか?成長期に食べないと育たないですよ?」
何気にテルルを見てから赤髪さんの胸元を見て発言をしてしまいましたが、他意はないです。
すみません、少し嘘を吐きました。制服の胸元が少し空いていましたので、仕方のない事です。
ですが問題ありません、特に見るべきものも無い様なので全くもって問題ないでしょう。
「おいお前!アリスの胸が育たないのが食事のせいだと言いたいのか!」
赤髪さんを突然庇うデリファン君。
ほぉ~私の一瞬の視線を感じ取りましたか。やりますね。
しかし赤髪の彼女はアリスさんと言うんですね。
んー。ですがお腹空いてるので返事はしませんよ?食べますので。
「ちょ、私の胸は関係ないでしょ!?こう見えてそれなりにあるんだから!」
ふむふむ、着やせするタイプですか――モグモグ。
「お、お前なにアリスの胸に熱視線を送ってやがる!これを見て良いのは俺だけだ!」
ほぉ~それはそれは成程です。
どうして王子の婚約者であるテルルに対し、そのそば付きの軍務卿の子息が決闘の代役に割って入ったのか不思議には思ってました。理由がわかりスッキリです。
デリファン君はアリスさんの事が好きなんですね?
それだったら当然割り込むのも納得です。男ならそうでなくては――うんうん、モグモグ。
「何を納得した感じで頷いてんだ!おい聞いてるのか」
青春、ですか。いいですね。ならばデリファン君のその熱い想いはちゃんと私に伝わっている事を伝えておきましょう。
そっとナイフとフォークをお皿に置き。
「私が頷いたのは愛する女性の為に身体を張るのは男らしいと思えただけですよ。貴方の見せたアリスさんへの愛、しかと見届けています」
「「え?」」
アリスさんと、何故かハルさんが驚きの声を上げます。
これは失敗しました。
二人とも気付いてなかったのですね。
「そんな……それなんてルート」
ハルさんが何か呟いてますが、問題はアリスさんでしょう。
彼が告白なりしていれば問題なかったのですが。彼の想いすら気付いていなかったのか、先程の驚きの表情からアリスさんの時が止まっています。
「あら。うちの騎士は他者の恋心には敏感なんですね」
何故か物凄い形相でテルルが私を睨んでるんですが、ハルさんが怯えるのでやめて下さい。っともう遅かったですね。ハルさんがまた青白い顔になってます。
ま、この後は若い二人で色々決めて進めばいいでしょう。育てるも枯れ行くのも二人次第なのです。
さ、食事の続きです――
――「酷いじゃないかぁ。何故僕を昼食に誘って頂けないのですか、テルマイル嬢」
突然現れた金髪の白い影に驚き、好物の人参のグラッセを落としてしまいました。
3秒ルールと言う物があると聞きますが、これはもう不可能の様です。
なぜなら白い制服を着た目の前の王子が、大切に最後までお皿で育てた人参グラッセを踏んでしまっているからです。
なんと言う事でしょう。私の愛しいグラッセ……。
わかりますか?ステーキはステーキ、グラッセはグラッセなのです。
私が何故そのグラッセを最後にとっていたか分かりますか?
えぇわかりますとも、目の前の王子がその潰れたグラッセにミジンコ程の感情を持ち合わせていない事くらい。
言いましょうか?
そうですよ、私はグラッセが、グラッセだけは死ぬ程好きなのです!
だから最後にとっておいたのです!
私は無言で立ち上がり、ポケットから昨日預かった彼の手袋を取り出しました。
お昼ですがおはようございます。
次は21時ころですm(__)m
アルファにもUP始めましたが、このままなろう先行になると思います。




