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14 担任が勇者

 教室へ入りしばらくすると、髭を蓄えた少し背の低い初老の人物が現れる。

 見た目は魔法関連の教師と思われるが、彼が担任なでしょうか。


 彼はそのまま教壇まで進むと、黒板に自分の名前を書きはじめました。

 この世界の教室も黒板とチョークの様です。和みます。


「コホン、このクラスの担任となったカーライル・ツヴァイソンじゃ。今まで教職から離れていて教鞭を取るのは久しぶりじゃが……うむ、高位貴族の子息がここまで多いとはの。まぁこのクラスの担任が出来るのは儂しかおらんじゃろうて。これから宜しくの」


 やはり彼が担任ですか。年齢的には校長と成っていてもおかしく無いお歳でしょうに、彼の言う通りこのクラスは高位貴族が多すぎます。なれば彼ほどの熟練者が呼び寄せられるのも頷けると言うものです。


 兎に角彼の負担とならぬ様務めるのが、貴族としての嗜みと言ったところでしょう。


「何が担任だよ偉そうに。担任と言うならまず王子への挨拶が先だろう?ね、ねぇ王子」


 不遜な態度で担任の先生に絡む一人の生徒へ視線を向けると。

 白制服でない所を見ると、高位貴族ではなく王子に取り入ろうとする辺境貴族と言ったところでしょうか。

 あの不遜な王子に対してこの取り巻きありって感じです。

 この様子ですと王子達や他の白制服も、カーライル氏に強く当たる可能性がありますね。……不味いですね。

 ですが王子はおろか白制服の生徒全員が不遜な態度を取る生徒から視線を外し我関せずといった感じです。


「ほう、王子への挨拶が先か。君は東の田舎の子爵の息子じゃな?」


「い、田舎じゃねー!今は魔道列車の路線も敷かれる予定なんだぞクソジジイ!」


「これは驚いた、この儂をクソジジイと言うか。魔王ですらそんな暴言は吐かなんだが……」


「あはははっ!聞きました?王子。こいつ魔王と会った事があるらしいですよ?お前が魔王と会ったなら俺は昨日トイレで神様に会ったぞ!あはははははっこりゃ傑作だ、まさかボケた爺が担任とはな」


 彼の威勢が増すに連れ、周囲の白制服の姿が小さくなっていきます。――あぁ知っているのですね。


「……そうかそうか儂がボケた爺に見えるか」


 その時、急激にカーライル氏から闘気の様な物を感じました。魔法関連の職業を醸し出す服装だと言うのに、なんと言う闘気でしょう。


 そんな彼を知っているであろう隣に座るテルルへ問いかける。


「テルル様。彼を知っていますか?」


「え、勿論知ってる」


「やっぱり知ってましたか。闘気を纏える魔法使いって凄いってどう言う設定でしょうね」


「あんたねぇ……あぁそうか、高位貴族のパーティーに参加した事が無かったわね。知らないのも当然だけど、この国に居るなら覚えときな」


 そう言って教壇の初老教師をそっと指さし。


「彼は王に並ぶ爵位を持つ者。剣聖勇者とは彼の事よ」


 勿論私も知っています。


「流石のアレクも驚いた様ね」


「ええ驚きました。カーライル氏は魔法使いじゃなく剣士なんですね」


「そっち!?」


 その時、彼の体が動きました。


「戯けが!」


 カーライル氏が黒板へ振り返ると、チョークを掴みそのまま生徒へ投げたのです。


 なんと言うスピードでしょう。

 音速を超えてます!

 こんなスピードで彼に当たれば怪我では済みません!頭が吹っ飛びます!


 私は咄嗟に右手に持っていたペンを、不遜な態度を取っていた生徒に迫るチョーク目掛け、誰にも悟られないよう投げ付けます。


 不遜生徒の位置は教室後方、そして私の位置は教室窓側の中央。

 位置的に辛うじてチョークが彼に届く前に私のペンがチョークを撃破するでしょう。


――バン!!


 チョークは彼の目の前で爆発しました。

 なんとか防げた様でなによりです。


 私のペンはチョークを破壊した後、教室後方の少し開いたドアの隙間から廊下へ飛んで行きました。

 これで生徒が怪我をする事も、私が投げた証拠も残りませんし丸く収まります。


「ほ~ぅ」


 と思いましたがカーライル先生の視線が痛いです。後で釈明にお伺いした方が良さそうですね……お世話になった昔話も合わせてですが。



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