12 さぁ教室へ
いつの頃からか私に対してだけ見せていた暴言を振り撒くテルル。
しかし彼女は私の後ろに立っているハルさんの存在に気付いて居なかった。
正直テルル自身の責任だとは思うが、このまま暴走してハルさんにまで暴言を吐き出しだしたら彼女が不憫でならなくなります。
しかしどうやって取り繕ったものでしょう。
「テルマイルお嬢様、朝から先日ご観劇なされたワンシーンを再現するのはお止めになられた方が宜しいかと」
流石長年ハイネケン家に仕えるレフティさんです。
そう言う路線でこの場を治めるのですね?
「そ、そうね!私とした事が今日から授業が始まる事に少し高揚してしまった様だわ!おほほほほほっ――チラッ」
何度もハルさんに視線を送ってますが、果たしてこれで誤魔化しきれるでしょうか。
「え?え!?あぁああ~演劇の再現でしたか。そうですよね、テルマイル様があれほど直積的に攻撃性の高い暴言を吐かれ……おっしゃるはずありませんよね!ほほほほほほほっ」
「そうですわハルさん。ほほほほほほほっ」
「「おほほほほほほほほっ」」
なんとか回避できたのかな?ではそろそろ校舎へ向かいましょう。
そう思い立ち上がりハルさんへ振り返ると――(怖っ!!)彼女は顔面蒼白で笑っていました。
「だ、大丈夫ですか?」
「へ?あ、全然!全然怖く無かったよ!ほんと怖く無かったからね」
そう言う彼女の足がプルプル生まれたての小鹿の様に震えて居たのはツッコまないでおきましょう。大人の嗜みです。
――――
――
そして我々三人は校舎へと到着し、クラス表を確認しました。
「やはり王子様と侯爵、宰相の子息も一緒の様ね」
見ればテルルが言う様に、彼女は昨日の王子と同じクラスの様だ。
他にも名前だけは聞いた事がある高位貴族の名が連なる。
要するに重要人物は同じクラスに纏めたのだろう。
そして自分の名前を探し出した時、袖を引っ張られる。
「ちょっちょっ、私もテルマイル様とアレク君と同じクラスみたい」
ふむ。まぁ私は彼女の護衛騎士であるので当然と言えば当然だが、ハルさんも同じと言うのはどう言うことだろうか。
「ふむ。やはり特待生と言う事で学園からは一目置かれているみたですね」
「はぁ~出来れば遠く離れたクラスになりたかった」
「ん?なにか?」
「いえ、何も言ってません」
「そうですか……。ふむ、ではテルル様参りましょうか」
「そうね、王子様とお会いするのが憂鬱だけど仕方ないわね」
言いながら歩き出すテルル。
教室へ向かう道中、ハルさんが何度も首を傾げているのに気づき。
「肩こりですか?」と問うてみたが、どうやらそうでは無かった。
「え?いや、テルマイル様って王子様の事嫌いなの?」
「さぁどうでしょう」
「どうでしょうって……テルマイル様の騎士になるくらいなら多少彼女の事わかるでしょ?」
ハルさんも少しテルルの事が気になるのでしょう。友達が幼馴染と仲良くなってくれるのは私にとって喜ばしい事です。
「そうですね、ではこう考えてみて下さい。もしハルさんのご両親が突然『この人が君の旦那さんになる人だよ』と言われて納得しますか?」
「んー私は平民だからそんな事はあり得ないけど、もしもの話でそんな事言われても無視するわね。でも貴族様ってそれが仕事のうちじゃないの?」
「ええ、貴族の仕事は民の生活や平和を守る事です。ではハルさんは仕事を家に持ち帰ってしたいと思いますか?」
「あり得ない!なんで家帰ってまで仕事しないといけないのよ!」
「ではそう言う事です」
私はそう返しておきましたが、取り敢えず納得はしてくれた様です。
「あれ?じゃアレク君的には反対なの?彼女の騎士なのに」
っと、私の考えを問うて来ましたか。
それに付いては勿論反対です。
こう見えて中身は貴族なんて存在を知らない世界の人間ですので。
しかしこの世界の事を学び知って行く上で逃れられない現実でもあります。
ですが……そうですね。
「なに悩んでるの?……あ、もしかしてアレク君ってテルマイル様の事ス――」
少し長考が過ぎた様ですが、彼女の言葉を遮る様に白い制服の一団が目の前に現れます。
「おぉ、これはテルマイル嬢。今日も可憐な制服姿!まるで花畑を舞う蝶々の様に美しい!」
王子のセルフ口調に合わせ、テルルは扇子を口元で開く。
――「チッ、蝶々って虫じゃねーかよ。一緒にすんな馬鹿野郎」
ギリギリ相手に聞こえない程度の声量。流石テルル。
「今なんと?」
「え?何も言っておりませんわ。ですが私は虫が苦手ですの――ニコッ」
「そうでしたか!では私が王位に就いた暁には国中の虫を一匹残らず駆逐いたしましょう!」
……。「今すぐ私の手袋を投げ付けてやりたいけど今は辞めておいてやる。でも必ずその首打ち取ってやるからな糞王子」
「はえ?今も何かおっしゃられましたか?」
「いえ、そろそろ教室へ入りませんと皆さんお待ちの様ですから」
「おぉ、なんと周りの者達の事まで気に掛けられるとは!では参りましょう!」
「ええ」
そう言って王子がテルルを先導して教室へと入って行った。
「じゃ僕達も教室へ入ろうか」
ハルさんへ振り向くと、何故か彼女は青い顔で。
「ちょ、テルマイル様って滅茶苦茶王子の事嫌いじゃないですか!!」
どうやら彼女の暴言はハルさんの所まで聞こえていた様です。
……参りました。今度はどうやって誤魔化しましょう。
本日はここまでとなります。
過去して頂いていた方もおられるでしょうが、再び、いえ、再起の為に何卒ブックマークなど頂けましたら幸いでございますm(__)m
では、おやすみなさいませご主人様方。




