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11 迎えは一人で

 保健室のベッドで目覚めました。


 夜です。


「……そう言えば顎にいいパンチを貰いましたね」


 顎を摩りながら昇った月を眺める。


 学園生活初めての夜だと言うのに、これでは彼女の護衛失格です。

 あ、でも護衛は日中の休み時間だけでしたっけ。


 昼の出来事を思い出し、ズボンのポッケから装飾が施された白い手袋を取り出だす。


「本当は面倒な事はその日の内に解決したかったんですが。この国の王子ですか……そうそう会える相手でもないでしょうし、これは出会った時にでもお返ししましょう」


 そこで夕食を取っていない事を思い出し、食堂へ向かう事にする。



――本日の営業は終了しました。



「え?私、何時間気絶してたんですか!?」


 校舎の時計が既に0時を回っていたのは、寮の入り口も締まっており保健室へ向かう道中だった。


――――

――


「テルマイル様、お早うございます」


「おはようレフティ」


 高貴な貴族に限り、メイドを寮内に入れる事が出来る。

 その制度を利用し、テルマイルはレフティを自室に住まわせる事にした。


 毎年使用人を引き連れて入学する生徒が居る訳ではないが、この年に限っては事情が異なり。王子、公爵令嬢、侯爵軍務卿子息、宰相子息を含め、10名にも上る白制服が入学している。

 異常としか言いようが無いが、子宝に恵まれた年とも言える。


「お嬢様。騎士アレク様が女子寮前に到着した様です」


「そう」


 昨日は流石にやり過ぎたと反省をしている。

 まさか毎日鍛えているアレクが、私の拳一つで気絶してしまうとは思わなかった。


 あの後特待生が教師を呼ぼうとしたが、私はそれを止めさせた。


 理由を聞かれても何も言えないからだ。

 なので本当に不本意だけど仕方なく、特待生の手を借り彼をベッドへ運んだのだ。


――――そそくさと帰ろうとする特待生を私は引き止めた。このまま返しては変な噂を立てられるかもしれないと思ったから。佇まいを正し。


「お待ちなさい」


「ひゃい!」


 異常に緊張している。

 貴族の前に立つのがそれ程緊張するのかしら?いえ……平民とはそう言うものかも知れませんね。


「怯えなくとも大丈夫です。私の騎士が友……知り合いになった貴女を私の元へ連れて来た理由は察しが付きます」


「ひゃ、ひゃい」


 私は一つ頷き、業腹だけど彼女を野放しにする訳にもいかず。


「貴女をこの時より私の取り巻きの一人とします。今後は出来る限り私と行動を共にする様に」


「ひゃえ?」


「聞こえなかったのですか?貴女が平民であるが為に要らぬちょっかいを掛けられぬ様、私が貴女の後ろ盾になって差し上げると言っています」


「へ、へぇ……ょ、宜しいんで?」


「貴女さえよければ」


「お、お願いします!感謝します!是非私を極道……じゃなくて公爵令嬢の取り巻きとしてお引き立て下さいませ!」


 ごくどう?聞いた事ありませんが、緊張しすぎですわ――。


「では明日の朝から登校する前は私を迎えに来ていただける?」


「あ、姉御の為なら喜んで!」


 あねご?またおかしな言葉を使ってますわね。


「では宜しくね。ハル」


 そうして私は彼女を取り巻きの一人に迎えたのです。



――――

――コンコン


 丁度彼女が迎えに来たようね。


「レフティ、今ノックをしている者は私の取り巻きの一人としました」


 レフティは軽く頷くとドアを開け、扉の前の御仁を招き入れる。


「おはようテルル!昨日は流石に情けない所を見せたね。君の騎士としてはまだまだだなと痛感したよ」


「……」


「あれ、テルルどうしたんだ?」


「ア、アレク君?」


「アレクだけど、どうしたんだい?」


「……どうしたじゃ無いわボケー!ここは女子寮だぞ!?なに堂々と入って来てんだテメ!しかも部屋に入って来るとかおかしいだろ!ちょっとそこへ座れ!」


「え、え?でもレフティさんがどうぞって」


「そんな事は分かってるちゅーの!どうでもいいから座れ!立ってるとお前の姿が外から見えるだろうが!」


 仕方ないと言うふうに彼がその場で正座をすると、彼の後ろにもう一人立っていた。


「……お、おはよう御座います姉御……いえ、テルマイル様」


 特待生のハルが申し訳なさそうに右手を上げた。 

 その姿に私は頭を抱える。





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