忘れ星
URU「私は、ここを離れることができません」
ほんの一瞬だけ、
URUはにこを見つめた。
URU「……お帰りを、お待ちしております」
にこ「うん……ごめんなさい。行ってきます」
にこは、向かう宇宙船では
珍しく口数が少なかった。
るいは、にこを心配していた。
リンリンは、いつもよりたくさん話した。
ヤシロは、いつも通りだった。
《ウィーン……》
宇宙船のハッチが開いた。
ヤシロ「ここが、忘れ星だ。涙が結晶になり、忘れ物が集まる星」
にこは辺りを見渡した。
星のあちこちに
忘れられた物が静かに置かれている。
割れたおもちゃ。
古い手紙。
ぬいぐるみ。
そして――
割れたグラスを見つけた。
どの物にも結晶が付いている。
リンリン「涙の結晶が咲いているようですねっ」
にこは、足元を見た。
グラスの破片のそばに、
透き通った結晶がひとつ、光っていた。
にこ「……これ、私の……?」
胸の奥の重たい気持ちが、
そっと形になったようだった。
にこは、そっと手を伸ばした。
透き通った結晶は、
ひんやりとしていた。
るい「……にこ」
その声は、とても優しかった。
ヤシロ「その結晶はな、無理に消すもんじゃない。悲しみや後悔を全部忘れる必要はないはずだ」
にこは、小さくうなずいた。
にこ「……うん。忘れない」
にこは、結晶をそっと地面に戻した。
るい「URUちゃん待ってるよ」
にこ「うん!!」
忘れ星の空は、
優しく輝いていた。
にこは、歩き出しかけて――
ふと足を止めた。
ヤシロが、少し離れた場所で
立ち止まっていた。
その足元に――
透き通った結晶が、
ひとつだけ静かに光っていた。
ヤシロは、何も言わない。
ただ、
その結晶を見つめていた。
ヤシロ「……ここにも、あったか」
ボソッと呟いた。
るい「その結晶も、大切な人のものなんですね」
ヤシロは、静かに目を閉じた。
そして――
何も言わずに、皆の元へ歩き出した。
忘れ星の空は、
優しく――
どこか切なく――
輝いていた。




