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同じ音の交差
駅前のショッピングモール。
人のざわめきの中で、
にこのスマホが小さく震えた。
《ブルッ。》
その瞬間、
身体がふわりと浮いたような感覚がした。
足元が、
一瞬だけ、
床から離れたような気がした。
まるで、
あのカプセルに乗っていたときの感覚――
にこは、ハッとして
スマホを見下ろした。
ただの通知だった。
周りでは、
子どもが笑いながら走っている。
何も変わらない、
いつもの午後だった。
友達「にこー!こっち!こっちー!可愛い服あったよー!」
にこ「えー?どれぇ?」
ラックに並んだ服の中から、
友達が一枚のワンピースを取り出した。
友達「これ!絶対にこ似合うって!」
にこ「えー、可愛いけど……
ちょっと大人っぽくない?」
友達「そこがいいの!
試着してみなよ!」
周りでは、
店員の「いらっしゃいませ」という声や、
ハンガーが
《カチッ》
と、触れ合う音が聞こえていた。
にこは、
一瞬だけ、その音に視線を向けた。
――さっきも、
聞いた音だ。




