ゆきしずく星―止まらぬ涙―
サカキ「次の星は――
雪が止まらない星よ」
にこ「えー?雪って……止まらないこと、あるのぉ?」
サカキ「本来なら、とっくに終わっているはずの降雪が、何百年も続いているの。その星へは、私も一緒に行くわ。私は別の宇宙船で来てるから、向こうで会いましょう。」
ヤシロ「分かりました」
ヤシロ達は、
小型宇宙船に乗り込んだ。
小型宇宙船は、
雪原の中へ静かに着陸した。
《ウィーン……》
ハッチが開き、
冷たい風が吹き込んできた。
その時――
吹雪の向こうから、
もう一隻の宇宙船が降りてきた。
そこから現れたのは、
サカキだった。
サカキ「ここが、雪の止まらない星よ」
この星の雪は、昔流された涙が
降り積もったものだと言われている。
雪は静かに降り続いていた。
まるで、この星そのものが、
何かを忘れられずにいるようだった…
《ザッ……ザッ……》
雪の中で、
大きな影が動いていた。
にこ「……誰かいる」
その影は、
スコップを持っていた。
宇宙人「やれやれ……
今日も終わらない雪だ」
にこは、降り続く雪を見上げていた。
にこ「……なんか」
小さく呟いた。
にこ「お母さんのこと、思い出す」
るいは、何も言わなかった。
ただ、そっと頷いた。
その時だった。
《ピピッ……》
小さな電子音が、静かな雪の中に響いた。
ヤシロが、腕のデジタルウォッチ型通信機を見下ろした。
ヤシロ「……頼子さん?」
画面に映ったのは――
おばあちゃん「……雪かい。寒そうだねぇ。るいちゃんとにこちゃんは大丈夫かい?」
おばあちゃんは、続けた。
おばあちゃん「なんだか心配になってね…物置の地下室の転送交信石を久しぶりに使ったよ」
と、優しく微笑んだ。
おばあちゃんは、しばらく画面の向こうの雪を見つめていた。
そして、静かに言った。
おばあちゃん「その雪はねぇ……
忘れられなかった人たちの涙なんだよ」
にこ「……おばあちゃん!!」
るい「おばあちゃん…お母さんも……
泣いてたのかな」
おばあちゃん「実はね…おばあちゃん、そこに行ったことがあるよ」
にこ「えっ……?」
にこは、目を大きくした。
にこ「おばあちゃん、この星に?」
おばあちゃんは、小さく頷いた。
おばあちゃん「ずっと昔のことだけどねぇ……おじいちゃんも時空警察官だったと、話したよね」
おばあちゃんは、少し遠くを見るような目をした。
おばあちゃん「おじいちゃんはね……
この星で、一人の人を救えなかったんだよ」
雪が、静かに降り続いていた。
おばあちゃん「任務だった。
でも――
どうしても、間に合わなかった」
るいとにこは、息を呑んだ。
おばあちゃん「そしてね……
あの人が亡くなった時」
少しだけ、声が震えた。
おばあちゃん「私をそこへ連れていってくれたのが――」
雪が、静かに舞った。
ゆっくりと、名前を口にした。
おばあちゃん「サカキだったんだよ」
サカキは、何も言わなかった。
ただ、静かに雪を見上げていた。
白い雪が、頬に触れて溶けた。
サカキ「……あの時も」
小さく、呟いた。
サカキ「雪は、止まらなかった」
その声は、
誰に聞かせるでもなく――
自分自身に言い聞かせているようだった。
《ザッ……ザッ……》
雪を踏みしめる音が、
静かな雪原に響いた。
るいが、振り向いた。
そこには――
あのスコップを持った宇宙人が、
こちらをじっと見ていた。
宇宙人「……止まらない雪の話か」
誰も、すぐには答えなかった。
宇宙人は、ゆっくりと空を見上げた。
宇宙人「あの日からだ」
宇宙人「この星の雪が、止まらなくなったのは」




