守れなかった想い
ヤシロは、コートの内ポケットから
銀色に光る小さな輪を取り出した。
ヤシロ「これを耳に付けろ」
にこ「アクセサリー?」
ヤシロ「違う。宇宙言語翻訳用のイヤーカフだ」
るい「そんなものが……」
ヤシロ「想念銀河では、
言葉が通じるとは限らないよ」
ヤシロは、静かに続けた。
ヤシロ「だから、念のためだ」
ヤシロは、二人の耳元にそっと装着した。
その瞬間――
《ドォン!!》
激しい雷鳴が、大地を揺らした。
にこ「きゃっ!」
空気が、急に重くなった。
まるで、誰かが強く歯を食いしばっているような、
息苦しい圧迫感だった。
るい「……怒ってる」
るいは感じていた。
ヤシロは、空を見上げた。
黒い雲が、渦を巻くようにうねっている。
ヤシロ「この星では――
感情が、そのまま現象になる」
再び、雷が走った。
《バリバリバリッ!!》
さっきよりも、明らかに激しい。
ヤシロは低く言った。
ヤシロ「誰かが、
強く怒っている」
にこ「え??」
ヤシロ「……これは、ただの怒りじゃない。
守ろうとして――
残ったものだ」
ヤシロは続けた。
ヤシロ「僕はこの星が、苦手だよ。
昔、ここで――
守れなかったことがある」
るい「守れなかった……?」
ヤシロは、少しだけ目を閉じた。
遠くで、雷が鳴った。
ヤシロ「任務があった。放っておけば、
多くの人が危険にさらされる事件だった」
ヤシロの声は、静かだった。
ヤシロ「だから――
僕は、任務を優先した」
空が、激しく光った。
ヤシロ「その間に――
大切な人が、巻き込まれた。
そして、未だに行方が分からない。
もう居ないのかすら、分からないんだ。」
にこ「そっかぁ。ヤシロさんも辛いことがあったんだね」
るい「ヤシロさんは、独りじゃないから」
その言葉に応えるように――
《ゴロ……》
空で、低く、静かな雷が鳴った。
さっきまでの怒りとは違う、
どこか迷っているような音だった。
その時だった。
空の奥で、
これまでとは違う光が走った。
赤い――
怒りの色だった。
ヤシロが、険しい顔になる。
ヤシロ「……これは」
3人は、言葉を失ったまま、
赤く染まる空を見上げていた。
雷鳴だけが、
遠くで低く響いていた。




