流せない不穏
流しそうめんの後だった。
《ピピッ……》
小さな電子音が、リビングに響いた。
ヤシロが、腕のデジタルウォッチ型通信機を見下ろした。
ヤシロ「頼子さんからだぞ」
るい「おばあちゃん?」
おばあちゃん「元気にしてるかい?おや。なんだか賑やかだねぇ」
にこ「皆で、流しそうめんしてたの」
おばあちゃん「そうかい。」
おばあちゃんは、どこか切なそうだった。
るい「おばあちゃん……?大丈夫?」
おばあちゃん「ごめんよ。大丈夫だよ」
にこ「おばあちゃんもこっちに来たら?」
《カチッ》
おばあちゃん「そろそろ会う頃だとは思うよ」
おばあちゃんは、ニコッと笑った。
るい「えっ?」
おばあちゃん「いや……元気にしているならいいんだよ。たくさん旅をしなさい」
にこ「んっ?どういうこと?」
おばあちゃん「今は分からなくていいんだよ。でも、少しずつ気付き始めているようだね」
《カチッ》
おばあちゃん「おやおや。ひずみが騒がしくなってしまったよ。ごめんね。るいちゃん、にこちゃん」
るい「え?おばあちゃんにも聞こえるの?」
おばあちゃん「おばあちゃんには聞こえているよ」
にこ「え?何で?地球だよ、そっち?」
おばあちゃん「それでも聞こえる人もいるんだよ」
ニコッと優しく笑うおばあちゃん。
ヤシロ「特別対策室では、もう、これ以上どうしようも出来ないですよ、頼子さん」
おばあちゃん「そうだねぇ……私の問題かね」
るい「おばあちゃんの問題?」
《カチッ》
おばあちゃん「ひずみが嘆いているよ。また話そうね。るいちゃん、にこちゃん」
《ブツッ》
通信が切れた。
にこ「どういうことなんだろう?」
るい「でもさ……にこ。ほら……あの事故の……」
るいは途中まで言いかけて、何となく黙り込んだ。
にこ「うん……分かってるよ、お姉……」
2人は、気付き始めていたが、
それをどうしたらいいかまでは
分からないままだった。
ヤシロ「どうしたい?」
るい「分かりません……」
にこ「分からない……」
るい「だけど……おばあちゃんと向き合う必要がある気はします」
ヤシロ「そうだな、もうじき、そのタイミングが訪れると思うぞ」
るい「はい」
にこ「そっか……」
《カチッ》




