第20話 司令捜索と新たな幹部
司令が最近姿を見せないので、橋田の一声で私たちは司令を探すことにした。ハシレチェンジャーへの通信すら来ないのは、確かに不自然ではある。でもあの気まぐれな司令のことだ。どこかで良い紙でも探しているのかもしれない。そうだったらいいんだが……。
紅希くん、黄花くん、橋田、私の4人は、道で大声を張り上げながら歩く。
「おーい! 司令ー! どこ行ったんだよー? うめー焼肉連れてってやるから戻って来いよー!」
「そんなんで戻って来たらいいんだがな……。どこへ行ったのやら……」
「私のスプーンの裏占いによると、司令は出雲大社にいるわ」
「なんで島根にいるんだ! 早く戻って来させろ!」
「ハシレイちゃんっていうんだが、どこかで見ていないか? フルフェイスのヘルメットを被って、首輪に『闘球』って書いてあるんだが」
「迷いラグビー部の探し方やめてください! ……なんですか迷いラグビー部って!」
橋田は何を言ってるんだ。司令はもしかしたらラグビー部だったかもしれないだろ! もしそうなら、司令は今頃迷いラグビー部だ。ならこの探し方が1番!
……と思っていたが結局司令は見つからず、私たちはすごすごと基地に帰って来た。
紅希くんは頭を抱え、司令が見つからないことに悩んでいるようだ。
「あーもう! これじゃシャチが明かねー!」
「埒だろう! 急に海の生態系の頂点に立つな!」
「なんとかして司令を見つけよーぜ! なんだっけあの、グランピング?」
「ダウジングのことを言ってるのか!? そんなんで見つからないだろう! ハシレイは金属か!」
「じゃあ私はチューニングするわ」
「ギターを弾くな! 何を演奏するつもりだ!」
「それはあれよ、『KYUURI』とか」
「なんだそのカッパのロックンロールは!」
「カッパンロールよ」
「知らない言葉を作るな! 新手のロールパンみたいになってるじゃないか!」
カッパンロールか……。カッパが演奏するロックンロール、なかなか良いじゃないか。カッパと言えば日本特有の妖怪。そんな妖怪が演奏するロックンロールなんて、オリンピックのテーマソングとかにピッタリじゃないか?
ならまたオリンピックを日本に誘致するところからか……。どこの都市が良いんだろうか? 今までやってなくて意外性があるところだから、淡路島とかが良いんじゃないか?
「うーむ……どうすればオリンピックを淡路島に誘致できるんだ……」
「めちゃくちゃどうでもいいこと考えてた! 淡路島じゃオリンピックはキャパオーバーでしょう!?」
私がつい口に出した淡路島オリンピック計画に、橋田がツッコミを入れる。
「何を言ってるんだ! 淡路島には牧場があるんだぞ!」
「だから何なんですか! オリンピックと1ミリも関係無いでしょう!?」
「バター作り競走日本代表チームはどうなるんだ!」
「知ったこっちゃないです! 日本代表を独自に組織したそいつらが悪いですよ!」
「せやせや。せめて新潟代表くらいに留めとかんとな」
「淡路島は兵庫だ! 新潟のは佐渡ヶ島だろう!? ……はあ!? ハシレイ、お前いつの間にいたんだ!」
気が付くと、司令が当たり前のように基地のデスクに座っている。いつの間に帰って来てたんだ! びっくりするじゃないか!
他のメンバーも同じ反応なようで、黄花くんが司令に詰め寄る。
「司令、唐突にもほどがあるわね。今までどこに行ってたのかしら?」
「ああすまんすまん。何も伝えとらんかったか。ワシは出雲大社に行っとったんや」
「黄花の占いが当たってるじゃないか! 何しに行ってたんだそんなところ!」
「出雲大社って神さんが集まらはるやろ? それに託けて『紙フェス』っちゅうのをやってたんや」
「かみ違い! ややこしいフェスだな!」
「司令ー、それはどんなフェスなんだー?」
紅希くんが尋ねると、司令はヘルメットのバイザーを上げて、手で顔を扇ぎながら話し始める。
「それはそれはもう凄いフェスやで! 世界中の紙製品が集まってるんや! 紙おむつや紙パンツ、紙袴まであったんやで!」
「なんで下半身に履くものばっかりなんだ! 紙袴とか落ち着かないだろう!?」
「ほんで自分らにもお土産を買うて来たんや。ほら、紙でできた神様ヘアーのウィッグや。おまけにガムも付いてるから口に入れても大丈夫なんやぞ」
「紙神髪噛み!? どんなややこしいものを買って来たんだお前は!」
「でや。そんなんはどうでもええねん。紅希、碧、ワシに話さなあかんことがあるんちゃうか?」
司令に話さないといけないこと……? 紅希くんと橋田には、そんなことがあるのか? 私は何も知らないぞ!
橋田のやつめ、知らない間に紅希くんと秘密を持つなんて……。まさか、紅希くんが私のライバルなのか!? 橋田はそっちなのか!?
そんなことを考えて焦っている中、橋田と紅希くんは真面目な顔になり、2人の間に緊張が走ったように見えた。なんだ? そんなに重要なことなのか?
いい渋る2人に対し、司令は再び声を上げて急かす。
「さあ言うてみい。どんな落語を聞かせてくれるんや?」
「誰がこのタイミングで小噺をするんだ! そんなんじゃない! 俺と紅希が新たな幹部に会った話だ!」
その言葉に、私と黄花くんはつい立ち上がってしまう。幹部!? この間橋田たちが倒したというケイブマンとは別の幹部か!? なんでそんなのと出会ったのに早く言わないんだ橋田は! そんな危ない男と出会うより、私と運命の出会いを……それはもう無理か。もう出会っちゃってるもんな私たち。別の立場でまた橋田と出会い直したりできないだろうか。
敵の幹部に対して変な嫉妬を覚えている中、黄花くんは橋田たちを問い詰めている。おっと、私もちゃんと本題に戻らないとな。
「信じられないにもほどがあるわね。なんでそんな大事なことを今まで黙っていたの? 私の故郷がアルジェリアだから?」
「お前の故郷はナイジェリアじゃなかったか!? いやナイジェリアでもおかしいけれども!」
「私も初耳だ。まさか指にワセリンを塗ると間違って接着剤が付いても指がくっつかないなんて」
「そんな話はしてません! 接着剤好きですね!?」
「碧、どんな幹部やったか話してくれるか?」
黄花くんに乗っかってまた変なことを口走ってしまったが、司令が上手く話を本筋に戻してくれた。助かった……。
まあそれはいい。そんなことより、新しい幹部はどんなやつだったんだ? 話し始める橋田に、みんなの視線が集中した。




