天の高さ
「………近づいても大丈夫でしょうか?」
「なるべくなら遠慮願いたいんだけどね〜。また黒いの出てきて辺りを吸い込み始めたら、今度こそ全員仲良く天国で酒盛りすることになりそうだしさ」
「生きてても死んでもやることが同じなら、行くしかねえだろ」
半円球に削り取られた大地の中心に向かいデボラが駆け出すと、二人も渋々後を追う。
「リオッ!!どこだ!!まさかあの程度の事で死んだんじゃねえだろうな!!怪我して動けねえってんなら、何でもいいから音出せ!!聞いてんのか!!??………………おわっ!!」
地表に耳をつけ安否を確かめるデボラの太い腕を、地面から突き出た小さな手が握りしめる。
「んっ、深刻な騒音被害。人探しは静かにするように」
「やっぱり生きてやがったか!!うおっ、引きずりこむんじゃねえ、汚ねえだろうが!!」
「一人だけ汚れるのは不公平。平等重視」
モグラのようにひょこりと地表から顔を出したリオの口角が僅かに上がる。
「………フェルリオールはどこですか。空間に変化がありません。やはり逃げられて………」
「心配無用」
勢いよく飛びあがり大地に降り立ったリオは、ポシェットからイドホリボルグを取り出す。
「おいっ、まさか………」
デボラが声を震わせながら言外に問うと、リオは真顔のままコクコクと頷きイドホリボルグを頭上に掲げる。
「お前ら、逃げるぞ!!」
「えっ………?」
反射的に駆け出す三人、その後方で勢いよく爆発する大地、噴き上がる粉塵………削り取られた空間が更に掘り返され、リオは激しく舞う土埃の中からボロボロの何かを引き上げる。
デボラ達の元へ無造作に投げ捨てられたソレは、半ば朽ち果てた六大魔公の姿だった。
「もう再生しない。ここで殺せば終わり」
巨大な高層ビルほどの深さのクレーターから足元の水溜りを避ける程度の気軽さで一飛びで戻ってきたリオは、手足の千切れたフェルリオールを剣で転がし仰向けにする。
リオの言葉通り、傷だらけの肉体は最早再生力を失っており、止めを刺すまでもないように思われた。
「ふふ………気の遠くなるような時間をかけて蓄積した魔力を全て解放しましたが、遂に貴方の顔色ひとつ変えることは出来ませんでしたか。神の頂は遠かったですが、悔いはありません」
しわがれた声で一言一言振り絞るように話すフェルリオールの首筋に、冷たい剣先が触れる。
「反省会は後。いますぐ元の世界に戻す、ハリーアップ」
「殺さないのですか?私が消滅すれば、この空間も消えてなくなります。負けた身ですので下手な小細工も致しません。元の場所に即座に戻れます。小細工をする力も残っていないというのが実態ですが」
「殺す必要ない。別に生きてても死んでても、ミナトに関係ない場所でなら何をしてても全然OK。それに聞きたいこともあったりなかったり。とにかく早くする。グズグズしてるようなら、流石に面倒だから殺す」
事務的であり感情の困っていない脅迫とも提案とも取れる言葉に、フェルリオールは自嘲気味に笑った。
「………そうですか、貴方にとって六大魔公の存在など、所詮はその程度のものなのですね。悔しいですが仕方ありません。私ももう少しだけ生きていたいので、素直に言うことを聞くとしましょう」
六大魔公として幾つもの国を滅亡へと導いてきた大悪魔は天を仰ぎ見ながら、口の中で自分自身に囁くように呪文を唱えた。
面白かった、これからも読みたい、AI先生による絵が可愛いと思った方は是非、☆評価、ブックマーク、感想等をお願いいたします!!
基本毎日投稿する予定ですので、完結までお付き合い頂ければ幸いです。




