詐略と戦術
「チャンスは一度。オレ達が気づいた事がバレりゃ他に逃げられるかもしれねえ。覚悟は出来たか」
「はい、荒唐無稽な話だと思いますが、そもそもこの異空間自体が奴の作った何でもありの世界。そこにあの男の性格の悪さを考慮すると、十分にあり得る話です」
「他に当てがないんだ、やるしかないよねぇ。そのためには、まずあの大怪獣バトルに近づかないといけないけど………頼める?今度奢るからさ」
「上司との飲み会とか、ご褒美というよりむしろ拷問に近いですが、リーダーがどうしてもと言うなら義理で付き合ってあげます。では、いきます」
三人が互いに顔を見合わせ、力強く頷いた。
一方で終わりのない鬼ごっこは未だ続いていたが、狡猾な策略家であるフェルリオールが動物的な直感に基づき攻撃を続けるリオの行動パターンを把握したのか、少しずつ戦況は変容していた。
「どうされました、私を殺す速度が遅くなっているようにお見受けしますが。このままでは私の命が尽きる前に貴方の王の命が危うくなるのでは」
安直な挑発とは一線を画す心の底から心配するような声色に、リオは眉間の皺を一層深くする。
しかし、六大魔公の名を冠する大悪魔に言われるまでもなく、リオは自分の行動が相手に読まれており、同時に自分自身が翻弄されていることに否応なく気付かされていた。
直線的なリオの動きに対し、緩急やフェイント、陽動を織り交ぜたフェルリオールの時間稼ぎは、十分に戦略上の優位を確立するほど功を奏し、初めのうちは数秒に一度切り伏せられていたところ、今では数十秒、数分と粘ることに成功している。
時間の流れが異なるとはいえ、敵の術中にハマっている苛立ちは更に戦術を硬直化させ、相手に一層の対策を練る余裕を生む。
「後少し。削り切る」
己を鼓舞し再度斬り込むが、地表から巻き起こる砂埃が視界を遮り瞬間相手を見失う。
「そこ」
目を閉じ、耳を澄ませ、数テンポ遅れて振るった剣は僅かに浅く、一撃で絶命させこと出来ず、また距離を取られる。
ギリッ
怒りと焦りに奥歯を噛み締め、遮二無二突進し、ようやくフェルリオールを真っ二つに切り裂くが、既に新しい肉体は視界の端に顕現し、不適な笑みを浮かべている。
「リオッ!!」
苛立ちから剣を強く握りしめるリオにデボラが走り寄る。
「奴さんの倒し方を思いついたぜ。影だ、影を狙え。さっきアイツはお前が地面に剣を振るった時、ビビってただろ。そりゃ、アイツの本体が影にあるからだ」
「了解」
リオは話を遮るように短く返事をすると、デボラと目を合わせる事もなくフェルリオールを追いかけようとする。
「ちょっと待て!!アイツの事だ、あからさまに影を狙えば他の位置に本体を移す方法があるかもしれねえ。とにかく、直前にオレが剣をぶっ刺す位置を叫ぶ。お前は何も考えずに言われた場所を全力で突き刺せ」
「んっ、理解した………………信じる」
リオは悪戯を叱られた子どものような表情をしながらも、長い間を置いてから小さく信じると呟いた。
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