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鉄牢  作者: りょう
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なんでアズキないの?

商店街にたどり着いたと言っても大した距離を移動したわけではなく、

ほんの5分くらいのもんだが、

通常迷宮への移動とかにフィールドを2時間とか歩くので、

些細な距離なのだが、何もないフィールドを歩くのと、

人々の行き交う市街地を歩くのでは、まるで疲労度が違う。

人を避けながらの移動は結構大変だったりする。

ぼーっと歩いているとすぐNPCにぶつかるんだから、

そうすると謝られたりするんだよ、

NPCにとっては、予想していたとおり、冒険者は、ならず者らしく、

みんな、低姿勢で誤ってくる。間違っても、気をつけろ!なんて言わない。

まぁ、剣を持ってる相手に、丸腰で文句は言えないか。

そんなこんなで、たいそう気を使って、ほかの人を避けながら路地を5分歩くのは、

下手なシューティングゲームの弾幕よけ並みに疲れたわけだ。

美香はというと、俺の後ろをついてきていて、わりと楽に歩いていた。クソッ

まぁそんな訳で、疲れきった俺は、最後の止めとばかり、

NPCの大量に闊歩する商店街の通りを前に、呆然としていた。

「さぁ、お店探さなきゃね。どこから行く?ん?」

人の気も知らんと、この女は。まぁこんなところで切れても負けなので、

無言で最後の通りに挑戦するため歩き出した。

「この店で聞いてみない?」

美香は商店街の入口の店に入っていく、俺はついていくのも面倒なので

通りの脇によけて美香を待っていた。

しばらくしてから、美香が現れた。

「リク、どうしよう?アズキ無いみたい。」

それは困ったが、どうしょうもない。

「じゃぁ、戻ってミルフェールさんに伝えよう。」

「えらくあっさり言うのね。」

「ここで無駄な時間を使うより、状況を話して、判断を仰ぐ、これが正解だろ?」

「まぁそうだけど、でも・・・」

「もう少しで鎧屋だから、行ってから考えよう。」

うん、それがいい。」

....

....


「そう、困っちゃったわね。」

それが第一声だった。

しばし考え込む彼女に、美香が一言、

「あの、どういった用途で使うんですか?」

「え?あぁアズキはね、防火用の染料なのよ、今依頼をもらっている品物に防火耐性を付けるのに使うんだけど、あの店にないってことは、しばらく入ってこないかも、困ったわ。」

「えっと、ほかの店にも置いてあるものなんですか?」

「えぇあるかもしれないけど、あの店にないとなると、期待できないかも。

もし700シリングあったら、小銀貨3枚でも買い取るんだけどねぇ。」

「私、探してきます。」

「え、おい、そんなに安請け合いしても・・・」

「私たちは、ギルドの依頼を受けたのよ、探してみるだけ探しましょ。ね?」

「あ~しっかたねぇな、これは貸しだぞ。」

「いいわよ。いっぱいリクには貸しがあるから、

一つくらい返してもらわなくっちゃね。」

そういうことか、仕方ねぇな。

まぁ、できることはやってみようか。

「あの、ミルフェールさん、アズキは700シリング無いといけないんですよね。」

「えぇ、実は、うちの鎧を作っている職人のアルクルからの依頼なの。

詳しいことは、彼に聞いてもらえるかしら。」

「分かりました。場所を教えていただけますか?」


で、今俺たちは、NPCの市場、露天街から

西に小路を入ったところにある職人街へ向かっている。

ゴミゴミした通りを抜けると、一気に道幅が広がり、

目の前には2階建て、平屋建てのレンガ作りの家が並ぶ、

家には大概大きな煙突があり噴煙と大きな金属を打ち合う音が響いている。

さすがに、このあたりは来たことがなかったなぁ。

お目当てのアルクルさんの工房は、入口に大きな長靴をモチーフにした看板が

かかっているということなので、キョロキョロとその看板を探して歩いていくと

通りから6件目にそれらしい看板を発見した。

グレーのレンガ作りの平屋、ほかの工房に比べると倍くらいの大きさがある。

煙突からは、白い煙が立ち上り、カンカンという金属を打つ音が、

ひときわ大きく響いている。

俺は、扉をあけて声をかける。

「すみません、どなたかいらっしゃいますか?」

「ちょっと待っててくれ、今、手が離せねぇんだ。」

少し声のトーンが高い男性の声が帰ってきた。


「そうかぃ、アズキが品切れたぁ、弱っちまったな。」

しばらくして顔を出したのは、四角い顔に白いあごひげの小柄だが、

がっしりした体つき、うん、これぞドワーフっていうアルクルさんだった。

「えぇ、それで、私たちがアズキ探しを請け負ったんですが、

ミルフェールさんからは、700シリングと聞いているのですが、

最低どれくらいあれば、用が足りますか?」

「んー、どれくらいって言われてもなぁ、400、いや500シリングは欲しいな。」

「分かりました、最低500シリングを探してきます。」

「あぁ、よろしく頼む。できるだけ早くな。」

「承知しております。では。」

それだけの会話で工房から出る美香を、慌てて追いかける。

「なぁ美香、ドコ探す気だ?」

「まずは、小売店を片っ端から手分けして探しましょ。」

「商人ギルドとかは?」

「んー考えたんだけど、アズキなんてアイテムの存在、リクは知ってた?」

「いや、初めてだ、耐火効果って言ってたよな。」

「そう、これって、実はすごい情報なんじゃない?

生産志すプレイヤーに売れるかもしれないし、こんなレア情報、

他のプレイヤーには教えたくないの。

だから、商人ギルドもプレイヤーの商人にも、内緒、NPCに聞いてみましょ。」

「わかった、じゃぁ片っ端から手分けして聞いて回ろう。」

・・・・

・・・

・・



「そっちは見つかった?」

「いや、念のため港近くの倉庫まで探してきたけど無いな。」

「そうね、私の方もダメ。」

「この街には無いのかもしれないなぁ。」

「困ったわね、何か方法がないかしら。」

町中を探し回った。それこそ、港から入ってきた資材を一時保管する倉庫から、

小売商の軒を連ねる露天街、アルクルさんやミルフェールさんの知り合いの工房まで。

それでも、アズキは見つからなかった。

それどころか、アズキを欲しがっている工房関係者が多数見つかった。

みんな、今は、他の街からの行商人の到着を待ちわびている状態らしい。


この街での商品の搬入は、基本的に北の港を使用し、港にある税関を通ったものが、

港近くの倉庫街に保管される。

そこからNPCの問屋達が商品を購入し、小売商に流し、

そのあと一般のNPCの手に渡るという事らしい。

また、近隣の村から来る露天商などは、基本的に持ち込んだ物を城門で確認され、

その場で徴税されるらしく、その税金は、特定の品物に係るわけではなく、

市街に物を持ち込む行為に対してかかるらしい。

乱暴な話だが、基本どんなものを持ち込んでも、

治安維持に問題が出ない場合は構わない?


「なぁ、ヨルムに行ってみねぇか?」

「ヨルム?」

「あぁ、もうこの街にはアズキは無い、だったら別の都市に行けばいい。

俺たちは冒険者だから、一瞬で移動できる。」

「え、でも、他の都市で買ったものを持ってこれるの?」

「アイテムボックスがあるだろ、それにマルカン草だってヨルムで渡せた。

問題ないさ。」

「じゃぁ、ヨルムに行きましょ。たまには良い事言うよね、リクは。」

そして俺たちはヨルムへ移動した。

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