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鉄牢  作者: りょう
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鎧屋で!

ギルドの外に出ると、「鎧屋へ向かいますかY/N」とメッセージウインドウが現れた。

が、一瞬で消え、俺と美香のアバターは勝手に通りを歩き出した。

突然のことでちょっと戸惑ったが、多分美香がメッセージを見た瞬間にYを押したんだろう。

「なぁ美香、さっきのメッセージウインドウ、いきなりYを押したろ。」

「うん、押したら歩き始めちゃったね。」

「今度から、メッセージウインドウはどんな些細なことでも、

確認してから選んでくれ。準備が必要になる事もあるからな、

もしこれが討伐系のクエストだったら、ポーションも持たずに敵の前とか、

シャレにならんぞ。」

「そうね、こんなふうになってるなんて思わなかったわ。次からは気をつけるわ。」

イマイチ棒読みっぽいが、まぁ言うことは言ったので良しとしよう。

しかし、今までお使い系のクエストは挑戦したことがなかったが、

移動が、こんなふうにサポートされているとは知らなかった。

討伐系や、採取系のクエストにはこんなサポートなかったのになぁ。

そんなやりとりをする間にも、俺たちのアバターは、狭い小路を抜け、一路南に向かう。

始まりの街は北に流れる川に面した領主館とその西にできた港を中心に栄えてきた貿易

都市という意味合いを持つらしい。@ウィキに都市の考察としてコラムが載っていた。

それによると、北の港についた荷物は河川沿岸の倉庫街に保管され、その一角にある、

加工区域と呼ばれる職人街や露天街で消費される。

ここで言う露天街とはNPC用の市場の事だ。

ちなみに、この一角の中央広場に面して始まりの塔は立っている。

そして、西門をはさみ、向かい側に商人ギルドと冒険者ギルドがあり、その一角には

商店や、バザールがある。ここは商業区に当たるらしい。

商業区の東には教会を有するNPCの領民居住区が広がり、

始まりの街のもうひとつの城門がある。

城門の外には通路と農地が広がっている。

本来であれば商業ギルドは港近くにあるべきなのだが、うんぬんというコラムだった。

そして現在俺たちの向かっているのはバザールのさらに先商店街らしい。

石畳の路地を抜け、行き交う人もだんだん増えてきた頃、

ふいにアバターの移動が止まった。

「どうやら目的地についたらしいな。」

そこは商店街の一角、以前クリスとぶつかったあたりだった。

篭手と盾の看板を掲げるグレーの外壁、大きな木の扉、何より目を惹くのは

ほかの商店が2階建てなのに対しこの店は3階建てだ。

鎧ってかさばるもんなぁ。なんて考えながら、ぼーっと立っていたら、美香が声をかけた。

「この店らしいね、鎧屋って書いてあるよ。」

確かに店の看板に鎧屋とあった。

「じゃぁ入りますか?」

「そうね、行きましょ。」

店内に入った。

店の中は整理された倉庫のような物をイメージしていたが、

実際はサンプル用の絵が書かれた板がカタログのように置かれていて、

実物は対して並んでいないらしい、数人の冒険者が板を見ながら何か話している。

天井が高いことには驚いたが、理由はすぐにわかった。

店員が俺たちよりかなり大柄だった。

「ねぇ、あの人って。」

美香も気がついたらしい。

「あぁ、巨人族だ。」

鉄牢における種族は全部で4種類、人、エルフ、ドワーフ、巨人。

迷宮探索をメインに添えたゲームで巨人族がいるというのもなぁと思っていたが、

実際巨人族は不人気種族らしくプレイヤーとしてはめったに会わない。

というのも、筋力補正があるのだが、素早さと器用度にマイナス補正が入っている上

迷宮内ではさらに移動マイナス補正がかかるからだ。

どれだけ不遇なんだろう。

その巨人族のNPC用の店ならば、この天井の高さは納得だ。

また、結構重さのある鎧や盾を販売するには

彼らのような筋力がある種族は適任なのだろう。

「やっぱり大きいね、私迷ったんだよな種族選ぶとき。」

「まぁ、素手で敵を殴り倒したいなら迷うよな。」

「うん、うん、パワーファイターって感じがして良いよね。でもスピードがね。」

「まぁ重厚だからな、基本盾役だろうし。」

「そう、ズバババッてかっこよく敵を殴り倒すイメージが湧かなくてさ、人にしたの。」

そうだったのか、適当に選んだんじゃなくて安心したよ。

「いらっしゃいませ、鎧をお探しですか?」

ふいに声をかけられて、モニターが密談モードに切り替わる。

モニターに写ったのは、エプロンドレスをつけた大柄な女性だった。


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