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鉄牢  作者: りょう
39/62

売るなら当店へ

可能な限り毎日決まった時間に少しでも配信したいと思っています。

拙い駄文ですが、読んでいただけると嬉しいです。

始まりの街の南 バザールと呼ばれるプレイヤーが開いている露天いちに来ている。

というのも、美香の売りたいものはヤッパリNPCが使うようなものではないからだ。

まぁモンスターの素材なんか買う奴はプレイヤーだけだって。

この市場の特徴は、みんなが頭の上にチャット板を出していることだ。

この板に商品と値段が書かれている。

また、買いたい人でも、慣れている人は「求む!○○」なんて書かれてチャット板を浮かべて歩いている。

わかりやすくて良いのだが、一種異様な光景だ。そういえば、NPCはチャット板機能がないのか、浮かべて歩いている人にあった事がないな。

そんな露店市場を冷やかしながら歩いていると、見知った顔に出くわした。

青いターバンを巻いた肌の色が少し黒めな男だ、頭の上には「なんでも依頼承ります。」

なんてチャット板を出している。

「美香、知り合いがいるんだが声かけていいか?」

「え、いいけど、なんで?」

「まぁ、ちょっとな、そこらにいてもいいぞ。」

「紹介してよせっかくだから。」

「わかった、でも、リアルには触れるなよ。」

「個人情報ってこと?常識でしょ。」

俺は、美香の答えに満足して、商人プレイヤーカルナルの元に近寄っていく。

画面が密談モードに変わると、イケメンなエルフが頭に青のターバンを巻いて、

アラビア風の衣装を来て立っていた。彼曰く、商人といえばアラビア風衣装だそうだ。

「おぉ、久しぶりだな、我が友リクよ。稼げているかな?」

「ついに、便利屋まで始めたのか、カルナルさん。」

「いやいや、単なる口入れ屋だ。依頼を受けて、登録しているエージェントに回す。

客との間の報酬の交渉、面倒なやり取りなしに、安定した依頼を得られるってんで、

みなさんにも大変喜んでもらっている。リクは剣士だったな、登録しに来たんだろ?」

「いや、人材派遣は間に合ったるよ。」

「なら、素材はいらんか?最近良いキラービーの羽が手に入ったんだが、

今なら格安で、友達価格でお前にだけ特別に譲ってやれるぞ。

儲けなしだ。どうだ?」

あの手この手で何かを売りつけようとするあたり、相変わらずだが、

自称商売のプロを名乗るだけあるのか、情報通だ。

「素材は間に合ってるよ。それより、マルカン草って手に入るか?」

わざと聞いてみた。

「おいおいおいwわが友よ君まであんなガセネタに振り回されているのかい。」

あぁ、やっぱりガセネタ扱いなんだな。

「そもそも、噂の出処は、赤眼鏡らしいじゃないか。そんな噂を まに受けて、

全くいつも思慮深い我が友とは思えないな。」

いつから友になったんだろうか、まぁいいや。

「なんだ、赤眼鏡が噂の出処だったのか!、そりゃ信用できないな。当然表板にも情報は乗らなかったんだろう?」

赤眼鏡が誰かは知らないが、知っているフリをしてさりげなく本題を振った。

「もちろんだ、と言いたいところだが、残念ながら表板も万能ではない。

悲しむべきことに、マルカン草の情報は表板に掲載されたんだ。

それがさらにあの女狐を増長させた。」

赤眼鏡って女性なんだな。表板には乗ったのか。

表板っていうのは、前にもちょっと触れたけど、運営が商人ギルド用に運営している

掲示板サービスだ。信頼度が高く、この掲示板に乗せられている情報は8割信用できる

というのが、俺も含めて鉄牢のプレイヤーの認識だ。

しかし、商人用の専用掲示板のため、閲覧、投稿は商人しか行えず、あまりに的外れな掲示物は、運営の名のもとに削除される。

「じゃぁ、今の状況を赤眼鏡はどう思っているんだろうな。」

「あの女狐に興味があるのか?わが友よ、俺は友として忠告しておく、あの女狐は、

危険だ、男を狂わし破滅させる。魔性だ、今まで何人も知り合いがあの女に騙されてこのゲームを去っていった。あの女狐に装備の果てまで貢いだ犠牲者も何人か知っている。

さわらぬが良いぞ。」

な、なんだ?その女?

「う、うん、まぁ、今頃は地に落ちた信用の回復にやっきになっていることだろう。

良い気味だ。ところで、その後ろのご婦人はどなたかな?」

「あ、あぁこいつは。」

「私は、美香といいます。戦士なんですが、始めたばかりなんですよ。」

「なるほどなるほど、いや、美しいですなぁ、これは今日は最良の日ですな、

久しぶりに友と出会い、また、美香殿のような美しい女性と知り合う機会を得た。

私は、商人をやっておりますカルナルと申します。

いつもこの辺で露天を開いておりますゆえ、何か、お困りのことがございましたら、

気軽にお声をお掛けください。と、そのお召しになっている鎧や、篭手は課金アイテムではありませんか?」

「えぇ、初心者なもので、まずは、装備にお金をかけましたの。」

美香の口調までカルナルに引っ張られている、どこのお嬢様だ。

「なるほど、いや、ご聡明な方でいらっしゃる。このゲームアイアンゲージは、

残念ながら初心者の方にはあまり優しくはありませんので、

始めたはいいが、すぐやめてしまう方が多いんです。

まぁゲームの進め方はもちろん、戦闘においても、

初心者の方が初心者の装備でおこなうのは大変難しい上、

ランクアップにも時間がかかる。

その点お嬢様のように、初めから初期投資と割り切って、

課金アイテムの購入をご決断なされる方は結果的に、

このゲームを楽しみ、大金を掴むことができる。

素晴らしいご慧眼でいらっしゃる。」

「あら、そんなにお褒めになっても、何も出ませんわよ。」

いかん、カルナルのペースだ。

「あ~姫、そろそろ行きませんか?」

とりあえずここを離れよう。

「あら、リク、もうしばらくお話していきたいのだけど?」

は~勝手にしてくれって言いたいけどこのままだと、

こっちの情報全部吐き出しちまいそうだから、そうもいかん。

とりあえず携帯電話をかけた。

「そういえば、カルナルさん。商人という職業は

このゲームの本質だと聞いたことがありますが、

どんなご職業なんですか?

あ、ゴメンなさい、チョット電話が入ったのでお待ちいただけますか?」

美香が携帯に出た。

「チョットなんでケータイなんでしょう?リク」

「マイク、ミュートになってるか?」

「うん、当然よ。」

一応確認。

「お前が、カルナルのペースで話してるから釘さしたくて電話した。

あまり余計なことは、話すなよ。まゆゆの事とか、マルカン草持ってるとか。

頼んだぞ。」

「当たり前でしょ、ずいぶん芝居がかったお兄さんだからお話は楽しいけどね。」

それが危ないんだよ。

「お前が、分かってやってるんならいいんだけどな。」

「うん、心配してくれてありがとう、でもね、

あんたにお前って呼ばれる付き合いじゃないでしょ?美香様っていってね。切るわね」

俺のことはあんた呼ばわりで、自分は美香様ってか?

「お待たせしました。」

「いえいえ、ご婦人を待つことは男にとって至上の喜び、こと、美しいお嬢様であれば尚更です。」

歯が浮きまくっています。それともそういう業界の人か、放置プレイはご褒美か?

「お上手ですね。」

「商売柄、口は回るのです。

そのため、真実であっても嘘っぽく聞こえてしまうらしく、

悲しい思いも、しているんですよ。」

「あら、そんなことありませんわ、とても誠実そうでしてよ。」

こっちも巨大な猫が乗り移っているぞ。

「あの、お姫様、そろそろよろしいでしょうか?」

「え、そうですね、それより、カルナル様、」

「カルナルと呼び捨てで構いませんよ。」

「では、カルナルさん。カルナルさんはどのような商品を

取り扱っていらっしゃるんですか?」

「私の取り扱っている商品ですか?そうですね、ありとあらゆるものですかね。

当然対価となる値段にもよりますが、正当な報酬を頂けるという事であれば、

このカルナル、ドラゴンでさえお持ちいたしましょう。」

決め言葉か。でも、鉄牢にドラゴンは居ないぞ。

「それは素敵ですね、でも、裏を返せば

特になにも取り扱っていないということかしら?」

その切り返しですか!美香。

「まぁ、そうとも言えますね。お嬢様は、何かお探しなんですか?」

「えぇ、実は農業をやろうかななんて思っていますの。」

「農業というと、畑とか?」

「はい、畑いいですね。できるようなところご存知ありません?」

「そういうことでしたら、友人をご紹介できると思います。しばしお待ちを。」

「よろしくお願いします。」

「えーと、大変申し訳ありません、今はチョット難しいですが、

リアルタイムで明日のこの時間にもう一度来て頂ければ、紹介できると思いますょ。」

「そうですか、それでは明日また。ごきげんよう。」

言うことだけ言ってさっさと歩き出した美香を見送りながら

俺は挨拶もそこそこに、美香を追いかけることになった。

その後も美香と何件か露天を冷やかして歩いた。

露天を開いているプレイヤーの職業はバラバラで、商人以外もかなり多い。

素材の買取もやっているプレイヤーもいたが、基本は販売のみだ。

俺はそんな美香に、素材の買取なら、露天より確実なところがあると教えてやった。

それは、1つはNPCの店、もう一つは、商人ギルドだ。

一般的なゲームの場合、ギルドの運営は運営が行なっている、

鉄牢においては、商人ギルド、冒険者ギルド 教会、の3つのギルドが存在する。

商人ギルド、教会はそれぞれ、商人、僧侶、聖騎士等、特定の職業を入会規則に上げており、それ以外の職業では加入できない。

また、クラスチェンジにより、職業が特定の職業から外れた場合は

退会させられることになる。


冒険者ギルドは、教会、商人ギルドに入っていない

全てのプレイヤーが加入することができる。


そして非公式だが、盗賊ギルドが存在している。

これはプレイヤーが自主的に運営するギルドというより

互助会的な組織で、盗賊なら参加できる。

しかし、クラスチェンジして二次職になると脱退扱いになるため

盗賊はあまりクラスチェンジをしたがらない傾向にある。


そして、全てのギルドの運営はギルド幹部登録したプレイヤーにより行われている。

プレイヤーの中で、毎月高額のギルド幹部料金を支払い、ギルド運営する物好きな者たちが居るのだ。採算取れてるんだろうなぁ...

話がそれたが、今回美香の売りたい商材はクロラーの糸、

はっきり言って値段がわからない。見たことないし。

そんな素材を売る場合、NPCに売るのが一番だ。

一般のプレイヤーは論外として、商人ギルドに売った場合、プレイヤーに流れることになり、最悪、@ウィキ祭りに発展しかねない。

マルカン草祭りの時はまだ、現物がなく、情報の出先も不明のため、

傍観していられたが、今度は他のプレイヤーから

現物の入手経路について付きまとわれる可能性がある。

渋る美香を説得し、NPCの店おなじみ「油まみれの釘」へ向かう。


相変わらず、笑顔でドワーフの女性店員が声をかけてきた。

「いらっしゃいませ。当店へようこそ。」

画面が密談モードに切り変わる。

「えーと、買取をお願いしたいのですが。」

「承ります。どのようなものですか?

当店では、素材、使用しなくなった武器、

ドロップアイテムなどの買取をおこなっております。

大きくて持ち運びに困難なものであっても、

当店にお持ちいただければ、買取をさせていただいております。

また、お値段がお客様の希望に沿わない場合、

お売りいただかなくても結構です。

どうぞお気軽に、ご相談ください。」

どこかで聞いたことのある文言だが、笑顔でハキハキと答える店員さんに、

さすがプロだなぁなどと思った事は秘密だ。

さすがに出張買取は行わないらしい。残念だ。

開いたトレードアイコンが開いたので、慌てて

「実はツレが査定して欲しい素材を持っているんだ。」

と告げると、

「かしこまりました。お客様こちらに商品を貸していただけますか?」

「はいありがとうございます。こ、これは!貴重な糸ですね。少々お待ちください。」

いきなり画面から消えた。しばらくして、

「お前たちか?こんな厄介なものを持ち込んだんは?」

いかにもドワーフといったオヤジが画面に現れた。


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