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鉄牢  作者: りょう
38/62

露天へGo!

「いやー最低だったね、今日のタカプーの時間」

「あぁ その話題を振るか。美香、今日は一人で街をさまようがよい。」

「そんなこと言わないのw今日はレーニィが居ないんだから仲良く行きましょうw」

「はいはい、お嬢様。よろしくお願いします、と」

気のない返事を返しつつ、サーバーアルタイル始まりの街を歩く。

目的地はまだ決まっていない。街を歩きながら、

避けられない話題を振ってみる。

「なぁ美香、昨日の爺ぃの話どう思う?」

「話って?冒険者はこの国のことをよく知らないってやつ?」

「あぁ、」

「そういえば あんたも佑君も氷ついてたね。」

そうだった、佑のやつも俺と同じくらい鉄牢歴がある。

「でも、いいんじゃない?

別にそんなこと知らなくたって、楽しくやってたんでしょ。」

えっ

「うん、ゲームだもん色んな設定とかあるだろうし、これはこれで、新しい

クエストにつながるかもしれないじゃない。」

「それは、そうだけど・・・」

「私は始めてばかりだからよくわかんないけど、

そんなに落ち込んだりすることでもないんじゃないかなぁ」

むしろ、落ち込む理由がわかりません・・・か。

「そんなことより、私、露天を開いてみたい。

どこか露天を開くのにお勧めの所に連れてってよ。」

まぁ確かに落ち込む理由はないよな。

「そうだな、なら、こっちだな。」

なんだか心が軽くなった気がする。

ゲームってやつは、色々あの手この手で驚きを演出するものだ。

多種多様なクエストだったり、回避不可能なイベントだったり、

一人で、または仲間と、時には知らないプレイヤー達と一つの目的に向け

行動を共にする。それは新たな楽しみを産み、

この世界から離れられない楔となる。

 



「よし着いたぞ」

「え~ここぉ?」

そこは鉄牢で知らない人がいない場所。

始まりの街の西門へ向かう大通りだ。

日中は常に開け放たれている内外の城門は唯一ここだけが直線でつながっている。

ここ始まりの街の正門である。

そのため道行く馬車も多く人通りが激しいが、通りに面した建物は不思議と入口が無い。

それは、敵の進行の際万が一門が破られた場合、敵が流れ込んでくるのを防ぐため、

この通りに立つ建物は、入口及び1階にあたる部分の窓がすべて禁じられているのだ。

入口は一本裏の通りにあり、狭い道にも関わらず

この都市の重要な建物が軒を連ねている。

そんな大通りは行き交う馬車と馬車に付き従う従者でまずまずの混雑ぶりだ。

最も、露天一つなく、足早に通り過ぎる人々は、その場に立ち尽くす冒険者二人に

目もくれない。

「ここが、一番人通りの激しいところだ。で、美香は何を売るつもりなんだ?」

「えーと、今回は素材かな?」

「ほー素材ですか。例えば?」

「クロラーの糸よ。」

「OKわかった。それならば、ここではなくて防具屋に行ったほうがいいな。」

「え、防具屋さん、なら売らないわ。私は商売がしたいの。」

「ならば、商材を変えることだな。どんなお客さんに、幾らくらいで、提供するのか。

まずは、しっかり決めないと。」

「そんなこと言ったって。」

「決まってないんだろ?それに仕入れのルートもない。」

「いきなり露天開いてもダメっしょ。

まずは、どっかの露天に顔出して考えてみるのが良いと思うぞ。」

「そ、それは、そうよね。たまに、良い事言うじゃない。」

「でしょ?じゃぁどっから行く?NPCの露天?それともプレイヤーの露天?」

「ん-そうねぇ」

始まりの街の南 バザールと呼ばれるプレイヤーが開いている露天いちに来ている。

というのも、美香の売りたいものはヤッパリNPCが使うようなものではないからだ。

まぁモンスターの素材なんか買う奴はプレイヤーだけだって。

この市場の特徴は、みんなが頭の上にチャット板を出していることだ。

この板に商品と値段が書かれている。

また、買いたい人でも、慣れている人は「求む!○○」なんて書かれてチャット板を浮かべて歩いている。

わかりやすくて良いのだが、一種異様な光景だ。そういえば、NPCはチャット板機能がないのか、浮かべて歩いている人にあった事がないな。

そんな露店市場を冷やかしながら歩いていると、見知った顔に出くわした。

青いターバンを巻いた肌の色が少し黒めな男だ、頭の上には「なんでも依頼承ります。」

なんてチャット板を出している。

「美香、知り合いがいるんだが声かけていいか?」

「え、いいけど、なんで?」

「まぁ、ちょっとな、そこらにいてもいいぞ。」

「紹介してよせっかくだから。」

「わかった、でも、リアルには触れるなよ。」

「個人情報ってこと?常識でしょ。」

俺は、美香の答えに満足して、商人プレイヤーカルナルの元に近寄っていく。

画面が密談モードに変わると、イケメンなエルフが頭に青のターバンを巻いて、

アラビア風の衣装を来て立っていた。彼曰く、商人といえばアラビア風衣装だそうだ。

「おぉ、久しぶりだな、我が友リクよ。稼げているかな?」

「ついに、便利屋まで始めたのか、カルナルさん。」

「いやいや、単なる口入れ屋だ。依頼を受けて、登録しているエージェントに回す。

客との間の報酬の交渉、面倒なやり取りなしに、安定した依頼を得られるってんで、

みなさんにも大変喜んでもらっている。リクは剣士だったな、登録しに来たんだろ?」

「いや、人材派遣は間に合ったるよ。」

「なら、素材はいらんか?最近良いキラービーの羽が手に入ったんだが、

今なら格安で、友達価格でお前にだけ特別に譲ってやれるぞ。

儲けなしだ。どうだ?」

あの手この手で何かを売りつけようとするあたり、相変わらずだが、

自称商売のプロを名乗るだけあるのか、情報通だ。

「素材は間に合ってるよ。それより、マルカン草って手に入るか?」

わざと聞いてみた。

「おいおいおいwわが友よ君まであんなガセネタに振り回されているのかい。」

あぁ、やっぱりガセネタ扱いなんだな。

「そもそも、噂の出処は、赤眼鏡らしいじゃないか。そんな噂を まに受けて、

全くいつも思慮深い我が友とは思えないな。」

いつから友になったんだろうか、まぁいいや。

「なんだ、赤眼鏡が噂の出処だったのか!、そりゃ信用できないな。当然表板にも情報は乗らなかったんだろう?」

赤眼鏡が誰かは知らないが、知っているフリをしてさりげなく本題を振った。

「もちろんだ、と言いたいところだが、残念ながら表板も万能ではない。

悲しむべきことに、マルカン草の情報は表板に掲載されたんだ。

それがさらにあの女狐を増長させた。」

赤眼鏡って女性なんだな。表板には乗ったのか。

表板っていうのは、前にもちょっと触れたけど、運営が商人ギルド用に運営している

掲示板サービスだ。信頼度が高く、この掲示板に乗せられている情報は8割信用できる

というのが、俺も含めて鉄牢のプレイヤーの認識だ。

しかし、商人用の専用掲示板のため、閲覧、投稿は商人しか行えず、あまりに的外れな掲示物は、運営の名のもとに削除される。

「じゃぁ、今の状況を赤眼鏡はどう思っているんだろうな。」

「あの女狐に興味があるのか?わが友よ、俺は友として忠告しておく、あの女狐は、

危険だ、男を狂わし破滅させる。魔性だ、今まで何人も知り合いがあの女に騙されてこのゲームを去っていった。あの女狐に装備の果てまで貢いだ犠牲者も何人か知っている。

さわらぬが良いぞ。」

な、なんだ?その女?

「う、うん、まぁ、今頃は地に落ちた信用の回復にやっきになっていることだろう。

良い気味だ。ところで、その後ろのご婦人はどなたかな?」

「あ、あぁこいつは。」

「私は、美香といいます。戦士なんですが、始めたばかりなんですよ。」

「なるほどなるほど、いや、美しいですなぁ、これは今日は最良の日ですな、

久しぶりに友と出会い、また、美香殿のような美しい女性と知り合う機会を得た。

私は、商人をやっておりますカルナルと申します。

いつもこの辺で露天を開いておりますゆえ、何か、お困りのことがございましたら、

気軽にお声をお掛けください。と、そのお召しになっている鎧や、篭手は課金アイテムではありませんか?」

「えぇ、初心者なもので、まずは、装備にお金をかけましたの。」

美香の口調までカルナルに引っ張られている、どこのお嬢様だ。

「なるほど、いや、ご聡明な方でいらっしゃる。このゲームアイアンゲージは、

残念ながら初心者の方にはあまり優しくはありませんので、

始めたはいいが、すぐやめてしまう方が多いんです。

まぁゲームの進め方はもちろん、戦闘においても、

初心者の方が初心者の装備でおこなうのは大変難しい上、

ランクアップにも時間がかかる。

その点お嬢様のように、初めから初期投資と割り切って、

課金アイテムの購入をご決断なされる方は結果的に、

このゲームを楽しみ、大金を掴むことができる。

素晴らしいご慧眼でいらっしゃる。」

「あら、そんなにお褒めになっても、何も出ませんわよ。」

いかん、カルナルのペースだ。

「あ~姫、そろそろ行きませんか?」

とりあえずここを離れよう。

「あら、リク、もうしばらくお話していきたいのだけど?」

は~勝手にしてくれって言いたいけどこのままだと、

こっちの情報全部吐き出しちまいそうだから、そうもいかん。

とりあえず携帯電話をかけた。

「そういえば、カルナルさん。商人という職業は

このゲームの本質だと聞いたことがありますが、

どんなご職業なんですか?

あ、ゴメンなさい、チョット電話が入ったのでお待ちいただけますか?」

美香が携帯に出た。

「チョットなんでケータイなんでしょう?リク」

「マイク、ミュートになってるか?」

「うん、当然よ。」

一応確認。

「お前が、カルナルのペースで話してるから釘さしたくて電話した。

あまり余計なことは、話すなよ。まゆゆの事とか、マルカン草持ってるとか。

頼んだぞ。」

「当たり前でしょ、ずいぶん芝居がかったお兄さんだからお話は楽しいけどね。」

それが危ないんだよ。

「お前が、分かってやってるんならいいんだけどな。」

「うん、心配してくれてありがとう、でもね、

あんたにお前って呼ばれる付き合いじゃないでしょ?美香様っていってね。切るわね」

俺のことはあんた呼ばわりで、自分は美香様ってか?

「お待たせしました。」

「いえいえ、ご婦人を待つことは男にとって至上の喜び、こと、美しいお嬢様であれば尚更です。」

歯が浮きまくっています。それともそういう業界の人か、放置プレイはご褒美か?

「お上手ですね。」

「商売柄、口は回るのです。

そのため、真実であっても嘘っぽく聞こえてしまうらしく、

悲しい思いも、しているんですよ。」

「あら、そんなことありませんわ、とても誠実そうでしてよ。」

こっちも巨大な猫が乗り移っているぞ。

「あの、お姫様、そろそろよろしいでしょうか?」

「え、そうですね、それより、カルナル様、」

「カルナルと呼び捨てで構いませんよ。」

「では、カルナルさん。カルナルさんはどのような商品を

取り扱っていらっしゃるんですか?」

「私の取り扱っている商品ですか?そうですね、ありとあらゆるものですかね。

当然対価となる値段にもよりますが、正当な報酬を頂けるという事であれば、

このカルナル、ドラゴンでさえお持ちいたしましょう。」

決め言葉か。でも、鉄牢にドラゴンは居ないぞ。

「それは素敵ですね、でも、裏を返せば

特になにも取り扱っていないということかしら?」

その切り返しですか!美香。

「まぁ、そうとも言えますね。お嬢様は、何かお探しなんですか?」

「えぇ、実は農業をやろうかななんて思っていますの。」

「農業というと、畑とか?」

「はい、畑いいですね。できるようなところご存知ありません?」

「そういうことでしたら、友人をご紹介できると思います。しばしお待ちを。」

「よろしくお願いします。」

「えーと、大変申し訳ありません、今はチョット難しいですが、

リアルタイムで明日のこの時間にもう一度来て頂ければ、紹介できると思いますょ。」

「そうですか、それでは明日また。ごきげんよう。」

言うことだけ言ってさっさと歩き出した美香を見送りながら

俺は挨拶もそこそこに、美香を追いかけることになった。


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