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鉄牢  作者: りょう
36/62

病室で!

白い壁、揃い天井、窓の外に映る白い外壁、相変わらず白ずくめの部屋に、

虚ろな目をして天井を眺めるハジさんが横たわっている。

画面は密談モード、ベットに横になるハジさんの上半身を写している。

ハジさんは特になにも喋らず、部屋に入った俺たちを見るわけでもなく、

ただ、ぼーっと天井の一点をみつめている。

天井に何かあるのか?画面をスクロールさせてみるが何もない。

上方向もハジさんの顔が見えるか見えないかまで、

ギリギリ動かしてみたが、(それ以上は上が見れなかった。)

何もない。一面の白だ。

「こんにちは、ハジさん。お加減はいかがですか?」

声をかけることで注意を引く作戦に出てみた。

・・・

・・

失敗


「ダメみたいだね。」

「あぁまるで変わっていない。というより悪化してる?」

収穫はなさそうだな。

「ハジさん、はじめまして。美香って言います。大変でしたね。

砂海で何があったんですか?」

画面に美香が割り込んでくる。

ハジの視線がわずかに動いた。

「美香、ハジさん、反応してる。」

気がついた佑が、声をかけた。

「ハジさん、私のことがわかりますか?」

ハジの視線がまた天井に戻った。

どうやら、美香の声に反応した訳じゃないらしい。

「ハジさん、紅翼の砂海に何を

「うわっぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ、

あぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあぁっぁぁっぁぁ

あああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ

その単語に過剰に反応したハジはいきなりムクリと上体を起こすと、

絶叫しながら、体を丸める。

ドタバタと廊下から人の近づく足音がして、

俺の画面に青い服を来た男たちが割り込んで来る。

いまだに声の限りに絶叫しているハジさんの方に手を添え、なだめるように

「もう大丈夫だ、ハジさんは生き延びた、ここは療養所だから、

安心していいから、安心していいから、」

となだめている。

呆然と眺めていた俺たちの前に院長の爺ぃが現れて

「小僧達、落ち着くまで外にでろ、患者が落ち着かん。」

と声をかけた。

画面が強制的に廊下に変わるが、モードは密談モードのままだ。

「フン、ところで、お前たち何をした?」

先ほどまでと違い、鋭い視線を向けて吐き捨てるように爺ぃは言った。

「いや、特に何も変なことは・・・」

「そうか?あの患者は今まで一度もこんなに騒いだ事はなかった。

と、いうより、外界に反応したことはなかった。ただの一度もな。」

「実は、砂海という言葉に反応したので」

「なんだと!本当か!」

「えぇ、私が砂海で何があったんですかと聞いたら、視線が動いたので」

「それで?」

「すみません、紅翼の砂海って言い直したら。」

「あぁなったということじゃな。」

「はい、すみませんでした。」

「まぁ、やってしまったことは、仕方ない。怪我がなくて何よりだ。

患者の中には、襲いかかってくるものもいる。彼の心は、未だに事故の現場にいる。

不幸なことに、同じ場面を繰り返し繰り返しなぞっているのだろう。

いや、びっくりしたろう。」

「こちらこそ、配慮が足りず、すみませんでした。」

「いや、わしも何も言わんかったのも悪かったな。

あの男は、ここヨルムの街の貿易商だったのだ。

既存の貿易ルートを回って旅していたらしいのだが、

ある商人仲間に誘われたらしく、今回の紅翼の砂海を横断する旅に同行した。

今まで、紅翼の砂海を横断した者はなく、すべて迂回しての旅だったからな。

横断できるルートが発見できれば、今までにない速さでサイルーシスまで到着できるはずじゃった。」

「あの、サイルーシスというのは?」

「冒険者は知らんのか、隣国パッソルードの首都だ」

「隣国?」

「フン、冒険者には国境は存在しないとしても、国の境界くらいは知っておろうて」

さも当たり前と言わんばかりに、衝撃の新事実を吐きやがった。

このゲーム「アイアンゲージ」には現在まで国の概念は存在しない。

ネットゲームで国の概念が無いものって珍しくもないんですけどね。

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