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グラサン幼女の異世界とらべるっ! ~最強の【魔眼】を宿す転生幼女は、もふかわ神獣を連れてスローライフな旅路を楽しみます~  作者: 空戯ケイ


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第34話  忍者の少女

 モッフィの言葉に、全員が固まった。


 そして、ベルドさんたちが絞り出すような声でわたしたちに目を向ける。


「あ、暗殺者……?」

「アイリの知り合いではないのか……?」

「えーと、どういうこと、なの?」


 ベルドさんたちが頭に疑問符を浮かべていた。


 あっ、そうか。

 ベルドさんたちにはわたしが宿で寝込みを襲われたことを話していないんだった。


 わたしは要点だけを簡単に説明した。


「実はこの前、深夜に謎の人物から襲撃を受けたんです」

「なに!?」

「なんだと!?」

「なんですって!?」

「あ、でもその時はモッフィが対処してくれたから無事だったんですけど……」


 わたしはチラリとモッフィを見る。


「モッフィ、あの子がわたしを襲った人間っていうの、間違いないの?」

「間違いない。我はこの目で顔をしかと見たし、襲撃時と服装が同じじゃ」


 暗殺者だって聞いてたからもっと怖そうな男なのかと思ってたけど、こんな華奢で可愛らしい女の子だったのか……。

 見た目からして、十代半ばって感じだ。


 襲撃時はわたしも寝ぼけてたからあんまりはっきりと記憶がないんだよね。


「…………、」


 暗殺者の少女は、無言でわたしを見つめていた。

 どこか表情は固く、暗いオーラをまとっている。


 わたしは意を決して、少女に話しかけてみることにした。


「あの! あなたは、一体――」

「逃げ、て……」

「っ!?」


 掠れて、消え入るような少女の声。


 少女は続ける。


「『黒烏(くろからす)』の連中が、ここに来る……! だから、その前に早く逃げ……ぐあぁっ!!」

「ちょ、どうしたの!?」

「アイリ!」


 少女が首を押えて膝をついた。

 苦しそうな声をあげている。


 わたしは咄嗟に駆け出した。

 背後から慌ててわたしの名前を呼んでモッフィが駆けつける。


「だ、大丈夫!? どこか苦しいの?」

「アイリ! 不用意に近づくでない! そやつはお主の命を狙っておった暗殺者なのじゃぞ!」

「で、でも、なんだか苦しそうだし……」


 倒れこむ少女の元に駆け寄ったわたしに、モッフィが語気を荒らげて言った。


 すると、少女が苦悶に表情を歪めながら、乱れた呼吸で言う。


「私は……あなたの命を、狙った。でも、失敗した。だから、今度はアイツが……首領のボルザルドが、ここに向かって、る……ぐあぁぁっ!!」


 ボルザルド……!?


 聞いたことがない名だ。

 それが、わたしを付け狙ってる暗殺組織、『黒烏』の首領なのか!?


「ボルザルドが来たら、みんな、殺されて……しまう。だから、今のうちに、早く逃げ、て……!」

「そ、そんな……! だったら、あなたも――」


 少女は力なく首を振った。


「私は、逃げられない。この、『奴隷印』がある限り……ボルザルドから、逃げることなんて、できない……!」


 少女が手で押さえる首筋。

 その指の隙間から、禍々しい光が漏れていた。


「これが、奴隷印……!」


『奴隷印』という単語も初めて聞いたけど、どういうものかは名前が全て物語っている。

 おおよそ、この子の意思を無視して強制的に命令を聞かせているんだろう。

 それで、命令違反をしたら苦痛を与えて矯正するって感じか……。 

 なんて卑劣な……!


 わたしはすぐにモッフィに向けて叫んだ。


「モッフィ! この子、『奴隷印』っていうのに縛られてるみたいなの! モッフィの聖魔法で、この奴隷印を解除できない!?」

「っ、なんじゃと!?」

 

 モッフィは信じられないようなものを見る目でわたしと少女を見下ろす。


「……見たところ、その程度の奴隷印くらいであれば解除は容易い」

「ほんと!? ならお願い!」

「じゃが、お主は良いのか? 自分の命を狙った者の命を助けることになる。解放した途端、凶刃を突き付けてくるやもしれぬぞ」

「そんなことにはならないよ! もしわたしを殺すつもりなら、苦しい思いをしてまで"逃げろ"なんて忠告する必要ないでしょ!」


 モッフィは少し考えた後、鋭くわたしを見る。


「本当に、後悔はないのじゃな」

「当たり前だよ! それよりも、この子の苦しみを早く解いてあげて!」


 わたしの返答が最後の後押しになったのか、モッフィは大きなため息を吐きつつ、魔法を発動した。


 少女の体が淡く光ると、首筋に浮かんでいた怪しい光がたちまちかき消えてしまった。

 それと同時、少女はハッと目を見開く。


「痛く、ない……? あの焼けるような激痛が、全然感じなくなって……」

「わあ! 良かったね! ありがとうモッフィ!」

「フン」


 だいぶ表情が和らいだ少女は、ハッとわたしに向き直る。


「このご恩、どう言葉に表したら良いか……」


 少女は、様になった姿勢でわたしに頭を下げた。

 わたしは慌てて、「頭を上げて」と言おうとした、その時。


「――――おいおい、ダメじゃねぇか。ファミリーを裏切るような真似しちゃあよぉ……」


 森の奥から、まとわりつくような不気味な声が響いた。

 ガサ、ガサ、と茂みを裂いて一人の男が現れる。


「そんなに俺に殺されてぇのかぁ……ナデシコ?」


 全身にびっしりとタトゥーが刻まれた恐ろしげな男は、わたしの傍らにいる少女に向けてニタリと笑った。



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